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軽トラのキャビンは長旅に耐えられるものなのか?
キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です
軽トラのキャビンは長旅に向いてる?
車中泊ブームで軽バンの人気が高まったが、現在は軽トラの荷台にハコを積んだり幌をかけたりして車中泊をするスタイルも人気が高まってきている。
しかし、軽トラはどちらかと言えば農作業や商品の配達など比較的近距離で活用するための道具のようなイメージが強く、長距離走行や高速走行に関してはネガティブなイメージを抱く人も少なくないのではないだろうか?
だが、軽トラで高速道路も使った長距離の旅を実践している人もいて、私もそのうちの一人だ。
また、軽トラはこれまで3台経験している。
そこで、今回の記事では車中泊仕様車としての居住性や走行性能などについてではなく、軽トラのキャビンが長旅や長距離運転に向くものなのかにテーマを絞ってお話したいと思う。
車中泊用のベース車として軽トラに興味があるけど、その前に長距離や長時間の運転に耐えられるのか不安を感じている人の参考になれば幸いだ。
軽トラ歴3台
本題に入る前に私の軽トラについてざっと説明しておこう。
現在私が使用している軽トラは、荷台にBoo3というシェルを積んだ2020年2月が初年度検査(軽自動車の場合は登録ではない)の4AT 2WDのハイゼットジャンボだ。
3歳になったところだが、私にとっては超がつく程新しいクルマで、荷台のBoo3は仕事や荷物の運搬にも使いやすくて便利だが、快適に車中泊のできるマルチパーパスなシェルだ。
このクルマは昨年の9月にBoo3を製造している兵庫県三田の自遊空間さんまで引き取りに行き、千葉県の房総半島南部まで寄り道しながら乗って帰ってきて以来、その後もこの半年の間に大阪の堺(片道600km)まで往復2回、山梨県や静岡県の伊豆半島まで往復数回(どちらも片道200km少々だろうか)など、車中泊もしながら中~長距離の走行を結構こなし、半年間で9000km以上走行している。
これが現在使用中の軽トラだが、軽トラ歴はこれが3台目で、1台目は99年式の4AT 4WDの三菱ミニキャブ、2台目が一番古くて、92年式の5MT 4WDのスバルサンバーだった。
興味のない人には大した違いはないと一括りにされてしまいそうなこの3台だが、実際にはこれがかなり大きく違う。
その違いについては後々説明していくが、年式やグレードなどによって本当に雲泥の差があるので、「軽トラと一括りに考えないように」が最初にできるアドバイスだ。
キャビンの居住性は重要
窮屈な姿勢を長時間強いられるのは辛い。
お尻や腰が痛くなるような粗末なシートも長時間の運転には不向きだ。
振動があまりにも大きいのも疲れるし、音がうるさすぎても疲れてしまう。
隙間風が入り放題で寒いのも困る(余程古いクルマでなければそんなことはないと思うが)が、熱が篭るようなキャビンも夏は辛い。
当然ながらキャビン内の環境の良し悪しは運転手の疲労に大きな影響を与え、長距離や長時間の運転に向くか向かないかに大きく作用する大変重要な要素だ。
しかし、軽トラのキャビンに対して、「狭そう」「運転姿勢が辛そう」「うるさそう」といったイメージを抱く人は少なくないと思う。
果たしてそれは合っているのか?
先に言っておくと、グレードによってもかなり違いはあると思うのだが、少し古い軽トラと現在の軽トラとではキャビン内の環境がかなり大きく違う。
快適性が大きく向上しただけでなく、安全基準も厳しくなり、安全性能に関しての説明はメーカーのウェブサイトなどを見ていただいた方が良いのでここでは省くが、安全性に関しても大きく向上している。
外観からだけでは想像できない本当に大きな差があるので、それをこれからご紹介しようと思うのだが、古いクルマがデザイン的にカワイイからと魅力を感じている人が痘痕も靨に見えてしまうのは危険。
中古車、低年式の軽トラを検討している人は特に参考にしていただきたいと思う。
古い軽トラのキャビンはどうだったのか
1992年と言うと個人的にはそんなに昔のこととも思えないのだが、改めてサンバーがどんなだったかを思い出すと、現在のクルマとは大きくかけ離れていて、92年が凄く昔のことなのだと思い知らされてしまうようでもある。
私は日本人男性の平均よりは少し大きめ程度の体格ではあるが、特別に体が大きいわけではなく、手足も長くはない。
しかし、92年式のサンバーは、運転中にステアリングシャフトやシフトレバーに膝が当たることがあるのは当たり前で、内部と外部を隔てるのはまさに薄~い鉄板一枚のみといった感じであり、一応四方が鉄板で囲われた四輪のオートバイといったような無防備感の運転席だった。
高速道路上では走行性能云々より、「万一事故にでも遭えば命懸け」などと考えながら運転していた。
そんなだったので、昔からバンやトラック(サニトラから4トン車まで)に乗り慣れていた私でも、このサンバー君の運転席には「フツーとはちょっと違った特殊な乗り物」のような空気を感じていた。
熱や騒音や関しては、サンバーはリアエンジンだったので、幸い直接エンジンの熱がキャビン内に篭ることがないのは良かった。
しかし、間近にエンジンがあるよりはずっとマシだと思うが、ほぼ防音処理などされていないような状態だったので、ロードノイズや風切り音、座席から2mも後にあるエンジンの音も思った以上によく聴こえるクルマだった。
このクルマは専ら近場用として使っていたのだが、私の棲む房総半島内では片道50kmとかは近場の範疇でもあるし、100kmくらい離れたところ(往復で200km)なら運転して行ったことも何度かあるので、キャビンの環境はこんな感じだったが、一般的な感覚の中長距離運転に耐えられないというほどのことではなかったとも思う。
しかし、はっきり言ってあまり長距離の旅に出ようと思わせるようなキャビンではなかったし、他にもクルマはあったので、このクルマで車中泊をするような遠出はしていない。
とは言え、赤帽のドライバーさんとかはこの時代のサンバーでも東京から九州までとか、かなりの長距離を走っていたのも事実だ。
年式は逆になるが、サンバーより前に使用していた99年式6代目のミニキャブトラックは、見た目はやれている貰い物だったが、グレードは高いタイプだったのでまあまあ快適なキャビンだった。
広々とは言えないが、ハンドルの上に覆いかぶさるような姿勢を強いられるわけではなく、あまり狭いところに押し込められている感じもしなかった。
しかし、私は元々そんなにシートバックを倒して運転するわけではないので然程気にはならなかったが、背筋はほぼ直立の運転姿勢となり、二人で乗ると手回品を置くスペースが全くないのは不便だった。
また、シートは長時間座っているとお尻が痛くなる肉厚の薄いものだったので、低反発の座布団は欠かせなかった。
このクルマではキャビン内での仮眠程度で本格的に車中泊はしていないが、房総半島の南部からスキーのイベントの仕事で荷物満載で志賀や妙高など、結構遠く(片道300~400km程度)まで何度か行っている。
と言うか、その程度のことは無理なくこなせていた。
熱と音に関しては後述する。
以上が20年以上前の軽トラのキャビンの実態だ。
現在のハイゼットジャンボのキャビン
先述の通り、現在私が使用中の軽トラは荷台にシェル(Boo3)を積んだ20年式4AT 2WDのダイハツハイゼットジャンボだ。
92年式サンバーと99年式ミニキャブでも結構な違いがあった(グレードにもよると思うが)が、現在使用中のハイゼットジャンボはこれらとはまるで違う。
まず最初に、軽トラのシートと言えばペラっと薄くて座面も小さいようなイメージだった(実際92年式サンバーのシートは質素と言うより粗末だった)が、ハイゼットジャンボのシートはしっかりと厚みがあり、座面も十分に大きい。
座り心地も良く、座布団の必要性も感じていない。
そしてハイゼットジャンボとスズキスーパーキャリイには座面の後に延長されたスペースがある。
そのおかげでシートのスライド幅が大きく、シートバックはリクライニングさせることもできるのだが、もちろんそのスペースには手回品などの荷物を置くこともできる。
ちょっと休憩するときにシートバックを倒せるのは大変ありがたいが、手回品を置くスペースがあることが非常に便利だ。
そして、このように前後のスペースに余裕があるので、膝を窮屈に曲げて背筋直立を強いられるようなことなどないのだが、足元も広くハイルーフで頭上も広いため、狭いところに押し込められているような感覚など全くない。
普通車と比べても遜色がないと言うより、実際に座ってみるとむしろ結構広々とした感じのする運転席なのだ。
次に遮音や遮熱に関してはどうか。
現行製造されている軽トラは、ダイハツハイゼットとスズキキャリイの2車種とこの2車種のOEMのみとなってしまっているが、どちらも座席が前輪の上にあるレイアウトだ。
そして、エンジンも座席の下にあると書かれているのを見かけることもあるが、正確に言えばエンジンは前軸より少し後にマウントされているため、熱く大きな音を発するエンジンの真上に座席があるわけではない。
一方、軽バンのダイハツハイゼットカーゴ/アトレーとスズキエブリイ(これらのOEMも含め)は、どちらも前輪はフロントシートより前にあるが、エンジンはフロントシートの真下に位置する。
姉妹関係にありながらも現行の軽トラと軽バンでは、座席と前輪の位置関係もだが、座席とエンジンとの位置関係も異なっている。
どちらのレイアウトにももちろん利点と弱点があるのだが、今回は前輪が前にあるレイアウトの利点については割愛し、座席の下に前輪があり、エンジンがそれより少し後にあることのアドバンテージを中心に説明させていただく。
まずは、座席の真下にエンジンがあるレイアウトの弱点だが、相当しっかり遮熱や遮音が施されていないとキャビン内にエンジンの熱も音も直に伝わりやすくなってしまうことが挙げられる。
実際、お尻の下にエンジンのタイプの6代目ミニキャブトラックやマツダボンゴOEM時代のバネットは、長時間運転しているとエンジンの熱が容赦なく室内に伝わってきて、夏は結構厳しかった思い出がある。
エンジン音も室内に伝わりやすく、高回転になるとやはりどちらもかなりうるさかった。
現行のハイゼットカーゴ/アトレーやエブリイはその辺りの対策も進んでいて、昔と同じではないと思うのだが、座席の下にエンジンがあるレイアウトは、こうした傾向があることは確かだ。
しかし、先程述べたように現行の軽トラは何れも「お尻の真下にエンジン」ではないので、熱もエンジン音もキャビン内に伝わりにくくなっている。
実際に乗ってみるとこの効果をかなり大きく感じる。
実際にハイゼットジャンボ乗る前は、6代目ミニキャブトラックより少しはマシ程度と想像していたのだが、想像より全然エンジンの熱がキャビン内に伝わってこなくて、「お尻の真下にエンジン」とはまるで違っていた。
音も以前使っていたミニキャブトラックより断然静かで、ハイゼットよりエンジンからの距離の離れているリアエンジンの92年式サンバー(高年式のハイグレードな車輌と比較した場合はどうかわからないが)よりエンジン音も伝わってきにくい。
ハイゼットジャンボも、現代の乗用車にしか乗り慣れていないような人からはうるさいと評価を下されてしまうかもしれないが、高速道路を80~100km/hで走行中に助手席の人と会話が困難になるようなことはないので、私は十分静かだと思っている。
熱と音に関してはこんな感じだが、前輪が座席の下にあることでもう一つの大きなアドバンテージがある。
足元の空間が広いことだ。
前輪が前にある場合、前輪が干渉してペダル類が全体的に左(車体の中心寄り)にオフセットされてしまうことになる。
6代目ミニキャブトラックもそうだったが、現在も使用中のホンダバモスはアクセルペダルがタイヤハウスの膨らみギリギリのところにあり、右足の足元が少し窮屈な感じがすることは否めない。
そして、ブレーキペダルは自然に右足を前に伸ばした位置と言うより、少し意識して足を左に寄せて踏むような位置になってしまう。
しかし、前輪が座席の下にあるタイプは足元の空間に余裕があるためペダルをオフセットせずに済む。
ハイゼットトラックは足元の窮屈感など全くなく、アクセルペダルもブレーキペダルも足を自然な形で伸ばした位置にある。
体がリラックスした状態でアクセルペダルを踏み続けられるため、特に長時間運転する際に疲労の軽減に大きく影響しているのではないかと思う。
しかし、全ての軽トラが座席の下に前輪があるわけではない。
最終型6代目のミニキャブと、キャリイとホンダアクティにも「前輪前・お尻の下エンジン」の時代があった。
そして、まだ結構中古車としてそれらも出回っている。
そしてまた、これが見た目的に案外カッコ良かったりもするので、中古車を購入する際には、ここで挙げたようなことも考慮に入れて選ぶことをお薦めする。
特にMTの場合は足元がさらに混み合うことになるので、中古車を選ぶ場合はそんなことにも注意したほうが良いと思う。
結果どうなのか
話を総括すると、500系(14年9月以降)のハイゼットジャンボのキャビン環境は全くもって長距離や長時間の走行にも問題ないどころか、少なくとも私は大変快適と感じている。
ジャンボではない普通のハイゼットトラックもおそらく悪くはないと思うのだが、キャビンが延長されていることから得られる恩恵を考えると、長旅にはやはりジャンボの方がお薦めだ。
スズキスーパーキャリイは実際に乗ったことがないので断言はできないが、ハイゼットジャンボと同じ理由で長旅にも向いたキャビンだと思う。
しかし、当然ながらキャビンの快適性だけでなく、走行性能も長旅に向くか否のか重要な要素となる。
次回は実体験に基づいた軽トラの走行性能についてのお話をしたいと思う。
ライター:笠原 サタン
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