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【災害とキャンピングカー】72時間を生き抜くための防災シェルターとしての活用
キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です
キャンピングカーを購入された8割近くの方が、災害発生時にシェルターとしての役割を期待しているというデータがあります。
現在、キャンピングカーの購入を検討している方も、災害時のシェルターとしての存在や役割を期待していることと思いますが、その多くが自宅の一室やキッチンを持ちだしたようなモーターホームを想定しているのではないでしょうか。
今回は、災害シェルターとしてのキャンピングカーは、どのような装備や機能が求められるのか、どんなキャンピングカーなら災害時に役に立つのかを考えてみたいと思います。
最初の72時間を生き抜くための防災シェルター
こちらは、日本RV協会が調査したキャンピングカーの購入動機の調査の一部ですが、「防災のためにキャンピングカーを購入したいか」という問いに、77.3%≒8割近い方が「はい」と答えています。
内閣府の資料によれば、災害発生から最初の72時間が勝負と書かれていますし、TV番組などでもそうした事をよく耳にします。
72時間とは、政府や自治体の救援の手が被災者個々に届くためには72時間を要すると言う意味で、災害発生から3日間は、自力で生き延びなければなりません。
そのためには「備え」が必要です。
食料や水、衣類にリネン類、衛生用品や薬など、様々なものが思い浮かびますし、災害発生時に「あったらいい」と思うものはたくさんあり、どれも、ないよりあるに越したことはありませんが、本稿では、次に紹介する3つの要素を最低限確保すべきものと考えました。
これらの要素を備えているキャンピングカーであれば、災害発生から3日間を生き延びるためのシェルターの役割を果たせるのではないでしょうか。
食糧・水の確保~72時間の必要量とは
これは言わずもがな…ですが、水と食料、そして塩がなければ人は生存する事はできません。
幸い、キャンピングカーには水や食料をストックしておくことが可能ですので、充分防災シェルターとしての素質を備えていると言えます。
では、72時間を生き延びるために必要な水や食料の量はどの程度なのでしょう。
内閣府の資料によれば、飲料水は1人1日分で3リットルを想定しているので、3日間では9リットルとなり、2Lペットボトルで4.5本≒5本分になります。
夫婦二人世帯で必要な飲料水は2Lペットボトル10本/3日間、4人家族であれば同20本/3日間が必要と言う事になります。
大きなモーターホームであれば、常時積んでおくことができるかもしれませんが、バンコンや車中泊仕様車では、常時20本(40リッター)のミネラルウォーターを積んでおくことは現実的ではありません。
常時ストックと言う事で言えば、所有するキャンピングカーに積載可能な範囲で最大限に積んでおくしかないでしょう。キャンピングカーの大小などによって、備蓄水の量には違いがありそうです。
では、食料はどうでしょうか。
カップ麺で考えてみます。カップ麺1個/1食と考えた場合、3日間で9個のカップ麺が必要となり、2人世帯では18個、4人家族では36個のカップ麺が必要ですが、1食につきカップ麺1個では足りないので、実際にはもっと多くの食料を積んでおく必要があります。
内閣府の資料では、食料に関しては例えば「乾麺」など嵩張らずに積んで置けるもので工夫が必要としていますが、筆者が考えるに、乾麺は「水」がないと食べられる状態にならない事から、水のストックが足りない状態ではあまり推奨できる備蓄食とは言えないように思います。
どうせ調理に水を使うなら、茹でた後に水を捨ててしまう乾麺より、水を全て吸って体内に取り込める「炊飯」の方が貴重な水を無駄にしないという点では優れているように思います。
幸い、キャンパーであれば自分が使い慣れたいクッカーをお持ちですし、クッカーに合わせた燃料やエネルギー源のストックもお持ちだとおもいますので、キャンピングカーをシェルターとして考えた場合、「米」は備蓄性に優れた食品と言えるでしょう。
我が家の米のストック方法
我が家では、無洗米を夫婦の1食分1.2合に鷹の爪を入れて小分けを9個作り、ジップロックにひとまとめにしてストックしています。
10.8合の米をストックするスペースはメスティン2.5個相当と小さめで、食品ストックとしてはスペース効率が良いと言えます。もちろん、米を食べるには炊飯が必要で、水やクッカーのスペースも必要になりますが、それはカップ麺等でも同じです。
この米のストックは、自分がキャンパーだからこその発想だと思います。キャンプ道具での炊飯に慣れていて、ほとんど負担に感じないからこその発想で、そうでなければ、カップ麺やレトルトご飯等をストックしようと思ったのではないでしょうか。
キャンピングカー内に食品をストックする場所
飲料水や食品を車内にストックして置く場合、気温や直射日光などによる品質劣化や変質を考慮すべきでしょう。
品質の安定した食品や、短期間でローテーションするのであれば、車内に備え付けの戸棚などへの収納でも問題なさそうですが、できれば、温度変化の少ない直射日光が当たらない場所への保管がお勧めとなります。
ちなみに我が家では、飲料水や食品のストッカーとして、クーラーボックスや車載冷蔵庫を活用しています。
特に保冷材などを入れなくても、車内の気温の高低にあまり左右されず、緩やかな温度変化となる点に期待しています。
上の写真の赤枠内は、我が家のキャンピングカー車内と車載冷蔵庫内の24時間の最低・最高気温です。
左が冷蔵庫内、右が車内ですが、明らかに冷蔵庫内の最高温度の方が低く抑えられているのが分かります。
脚を伸ばして眠れるスペースとプライバシーを守れるスペース
災害発生時、充分なパーソナルスペースの確保は重要です。
「エコノミークラス症候群」という言葉を聞いた事があるかと思いますが、災害のストレスや水分不足の状態で、身体を伸ばす事ができない状態が長時間続くと、血管内にできた血栓によって、最悪死に至る疾患が生じる場合があります。
実は「エコノミークラス症候群」は、車中泊だけに顕著に見られる症状ではなく、1人分のスペースが狭く、手足を伸ばしにくい状態では、避難所内での発生も多いことが確認されています。
つまり、そもそも災害発生のストレスから、血栓ができやすい状態の上に、さらに長時間にわたって手足が屈曲したままの姿勢を続ける事で、より一層血栓ができやすくなっているのだそうです。
ある調査では、車内で手足を伸ばせるスペースのある、いわゆるワゴン車での「エコノミークラス症候群」の発生確率が低かった事実もあるようなので、就寝スペースを確保できるキャンピングカーは、「エコノミークラス症候群」発生を抑制できると考えられます。(*)
また、避難所では24時間ずっと衆人環視の中に居たり、例え視線を遮る事ができたとしても、周囲の避難者の会話や物音まではシャットアウトする事はできない事から、大きな心的ストレスがかかります。
その点でもキャンピングカーであれば、他人からの視線を遮り、プライベートな空間を確保する事ができます。
我が家のキャンパーはコンパクトな車体が特徴で、車内に余分なスペースはあまりありませんが、対面ソファーを展開してフラットなベッドを作ることができます。
日ごろから、このソファ&ベッドの上に荷物を置くなどでスペースを減らさないよう、積み荷の積載方法について工夫をしたりしています。
キャンプ等での就寝時でも、荷物を移動させることなく就寝できるスペースの確保は心掛けています。
(*)参考:安心安全情報
https://www.itscom.co.jp/safety/column/021/
電力~サブバッテリー、ポータブル電源
電力の確保は、キャンピングカーの得意種目です。
サブバッテリーや、キャンプ用のポータブル電源の電気を使用する事ができますし、ソーラーパネルによる充電や走行充電によって電気を作り出す能力を備えている点で、シェルターとしての能力は高いと言えます。
スマホの充電や灯り、湯沸かしや簡単な調理などを容易にする「電力」を確保できる事は非常に大きなメリット。
大きなモーターホームばかりでなく、車内にベッドとサブバッテリーしかないような簡易的なバンコン・車中泊仕様車であっても、日ごろから車中泊やキャンプのための電力確保に配慮していることが、災害時に威力を発揮するはずです。
我が家の車両には、正弦波1500Wが使えるサブバッテリーを備え、走行充電・外部充電が可能です。さらに容量1260Wh×出力1600Wの大型のポータブル電源を購入していますので、災害時でも電力供給は充分と言えます。
今後、ポータブル電源の買い増しと、ソーラー充電を可能にする予定です。
こうして考えてみると、キャンピングカーは災害発生時の最初の3日間を生き延びるためのシェルターとしての役割を充分に果たせそうです。
もちろん、大型のモーターホームの方が積み込める備蓄品が多いのは当然ですが、それだけで、災害シェルターとして優れているとは言えないでしょう。
例えば、災害後に被災地域を脱出しようとする場合などでは、身軽で機動性に優れる4四輪駆動のバンコンの能力が生かされるでしょうし、災害時の燃料供給不足を考えれば、軽キャンの給油頻度の低い好燃費も大きな強みです。
つまり、キャンピングカーの大小に関わらず、得手不得手があり、シェルターとしての優位性は一概に言えず、少なくとも、「水食糧」「スペース」「電力」の3つを備えておけるのであれば、充分にシェルターとしての役割を担う事ができるはずです。
キャンピングカーをシェルター利用するメリットとは
キャンピングカーをシェルターとして利用する事は、自分だけが快適な避難生活を送ると言う事ではなく、以下のことにもつながっていきます。
・コロナによるソーシャルディスタンス拡大~避難所の収容人数の提供
withコロナの災害時には、避難所でのソーシャルディスタンスも検討しなければならず、各地の行政では、避難所の1人当たりのスペースを従来の数倍の広さと考え始めています。
当然、限られた施設でソーシャルディスタンスが拡大されれば、収容人数自体が減ることになります。キャンピングカー保有世帯がキャンピングカーのシェルターを利用することによって、自分たちの分の避難所の収容スペースを空けることになり、その分多くの人の収容ができれば、それも社会貢献の1つと言えるのではないでしょうか。
・ペットを連れての避難で避難所に迷惑をかけない
「災害時、家族同然のペットを置き去りにはできない…」そう考える方も多いと思いますが、食事・排泄・散歩以外にも、鳴き声や体臭などで周囲に迷惑をかけてしまう可能性があるため、ペットを連れての避難はなかなか難しいものがあります。
ですが、キャンピングカー内に置いておけるなら、避難所に迷惑をかけずにペット連れで避難する事も可能でしょう。
・スマホ充電など、電力のお裾分けによる貢献も可能
ソーラー充電などで得られた電力に余裕があるなら、避難生活者のスマホを充電してあげる等、電力のお裾分けによる貢献が可能になります。
限りのあるガスボンベ等の提供は難しいですが、ソーラー充電で得た電力であればお裾分けも可能ではないでしょうか。
キャンピングカーに備えておいた方がよいもの
キャンピングカーを防災シェルターとして考える場合には、飲料水・食品以外にも「あったらよいもの」が色々あります。
限られたスペースのキャンピングカー車内に全てを備えておく事は難しいかもしれませんが、可能な範囲で、できるだけストックしておく事をお勧めします。
1.薬・サプリメント
持病のある方は薬を切らすわけにはいかないので、医師から処方される薬をストックしておく必要があります。ずっと積み放しにせず、数日分ずつのローテーションするのがお勧めです。
栄養補給等のサプリメントも普段飲み慣れているものをストックしておくとよいでしょう。
2.衣類・リネン類
衣類は下着を中心に、リネン類はタオルやハンカチ等があれば被災時にも非常に役立ちます。
3.ペーパー類・衛生用品
ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどのペーパー類、身体の汚れを落とし清潔に保つための衛生用品。
実際の災害時に、赤ちゃん用の紙おむつや女性用の生理用品などが不足した事例がありますし、熱い時期には「汗拭きシート」等は便利ですので、ストックしておくとよいでしょう。
4.キャンプ用品・キャンプ道具
内閣府の資料には、軍手・蝋燭・ライター・カセットコンロ・ガスボンベなどが記載されていますが、キャンパーの方であれば、それらは「キャンプ道具」の一言でまとめられます。
屋外で生活するための用品や道具が揃っている上、それらを使い慣れている訳ですから、キャンピングカーをシェルター利用する上でより快適になるはずです。
5.簡易トイレ
トイレ問題は非常に重要です。避難所などのトイレは落ち着かないし、汚れ等であまり使いたくないという声は少なくありません。
トイレをあまり使いたくないために、水分摂取を抑えた結果、血液が濃厚になってしまい、エコノミークラス症候群になりやすくなる等の弊害もありますので、自前の簡易トイレを用意しておく事をお勧めします。
モーターホームにはトイレが装備されているケースが多いですが、汚物を水洗トイレに流す前提である場合、災害時には使用できなくなる可能性が高くなります。
自力で汚物処理ができる簡易トイレは、可能であればぜひ備えておきたい備品の1つです。
参考:ホリアキ株式会社 http://www.horiaki.co.jp/lp/instantoilet.html
キャンピングカーに常時積んでおけないもの
ガスボンベやスプレー缶などのように、炎天下の車内には保管しない方が良いものもあります。
炎天下の車内は50℃を超える事も珍しくありませんが、ガスボンベやスプレー缶には、40℃を超える場所に保管してはいけない旨が明記されています。
JAFのテストによれば、車内温度は春や秋であってもガスボンベの保管が危険な温度になりますので、いくら災害時の備えだとしても、危険物を車内に常時保管することはお勧めできません。
また、銀行通帳や印鑑、証券などの貴重品を常に車内に保管することも、防犯を考えれば妥当な保管場所とは言えません。
我が家では大きめのしっかりしたバッグを用意し、ガスボンベや燃料量アルコール、着替えやリネン、衛生用品や銀行通帳や印鑑などを入れて『非常持ち出し品』を用意しています。
災害発生時には、このバッグを車に放り込めば、車内のストックと併せてシェルターとしての備品が揃う…といった感じにしています。
まとめ
今回は、災害発生時のシェルターとしてのキャンピングカーを考えてみました。
モーターホームのように自宅の一室にいるようなプライベートな空間が確保でき、日常生活と何ら違わないような生活を送れるならそれが何よりですが、小型コンパクトな簡易装備のキャンピングカーであっても、以下の最低限の条件を備えていれば、充分にシェルターの役割は担ってくれるものと考えます。
- 災害発生から3日間を生き延びられる飲料水と食品のストック
- 手足を伸ばせて、プライバシーを守れるようなパーソナルスペースの確保
- 灯り・調理・通信などを賄う事ができる電力
そして、車内に常時備えておけないものを、「災害時持出用」としてまとめておく事で、災害発生時には、車内の備品+持出バッグで最初の3日間を生き延びられると考えます。
ライター: Enjoy Camper
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- 執筆者プロフィール
- 車旅情報Webマガジン「DRIMO」
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