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マツダ ロードスターの歴史を振り返る|全4世代試乗レポと比較画像

2020年はマツダ創業100周年、2019年はロードスター生誕30周年でした。本来であれば2020年にはマツダ100周年記念イベントが開催され、その中でもロードスターにフォーカスしたコンテンツがあったかと思いますが、新型コロナの影響で何ら開催されることはありませんでした。

そこで、マツダさんから歴代ロードスターをすべてお借りして撮影と試乗し、WEB上でロードスターにフォーカスしてお届けすることにしました。

ロードスター誕生の裏側

初代ロードスターが誕生したのは1989年、平成元年。この年は新型車の当たり年で令和になっても語り継がれる名車が数々誕生した年でした。日産 R32GT-R、スバル レガシィ、トヨタ セルシオなどなど。

当時、マツダは多販売チャネル方式を展開、ロードスターは「ユーノス」ブランドとなります。ユーノス ロードスターの誕生以前の1980年代初頭からマツダ社内では「ライトウェイトスポーツ」という言葉が当たり前に使われていたとのことです。

ライトウェイトスポーツといえば、ハチロクことAE86トヨタ カローラ レビン、スピリンター トレノを代表する排気量1,500cc〜2,000ccの軽量ボディのスポーツカーで価格もライト。

ロードスター開発の火付け役となったのは、1970年代からロサンゼルスを拠点として活動してたモータージャーナリスト、ボブ・ホール氏。日本の自動車メディアでも活動をしていたボブ・ホール氏は1979年4月16日にマツダ本社を訪問、このとき後にマツダの社長となる当時研究開発本部長だった山本健一氏に会いました。そのとき、ボブ・ホール氏はFRの4代目ファミリアをベースにしたライトウェイトスポーツのスケッチをチョークボードに描き、山本健一氏に「ぜひ一度、トライアンフ スピットファイアに乗ってみてください」と提案しています。

ボブ・ホールがチョークボードに描いたスケッチ
ボブ・ホールがチョークボードに描いたスケッチ。「X508」は4代目ファミリアの開発コード。
(画像:マツダ広報資料)
トライアンフ スピットファイア。トライアンフはイギリスの自動車メーカー。1962年から1980年まで生産されたライトウェイトスポーツでいくつかのモデルがある。
画像は最終型の「1500」。
ボブホールが山本健一に乗るように提案したモデルと同じかどうか不明だが、年代的にこのモデルかもしれない。
(©neutralgrey1/stock.adobe.com)

こうしてマツダはライトウェイトスポーツを開発をスタート、先行開発では「オフライン55」のプロジェクト名で市販化できる確率を55%以上に設定されました。オフラインとは既存車種を示すオンラインの反対語。1984年11月にはマツダのライトウェイトスポーツ計画の方針は固まり、イギリスの自動車エンジニアリング会社であるインターナショナル・オートモーティブ・デザイン社に自走可能なプロトタイプの製作を委託します。

しかし、インターナショナル・オートモーティブ・デザイン社では量産が難しいと判断したマツダは、自社で一から開発し直すことを決断、前後重量配分を50:50とするフロントミッドシップ、後輪駆動、ダブルウィッシュボーンサスペンション、簡単に開閉できるソフトトップを備えたオープンカーという現行モデルにも受け継がれる基本アーキテクチャがこのときに固まります。

FRのオープン・2シーターのライトウェイトスポーツは世界的にとてもニッチな市場で、マツダ社内では量産化に懐疑的な意見があったところ、1987年4月に最終プロトタイプを価格やスペックとともにロサンゼルスへ送り、評価を確認する「モデルクリニック」の実施をします。そこでは多くから高い評価を受け、アメリカの販売子会社トップからは、早く市販化してほしいという声もあり量産化が確定します。1987年9月には開発に遅れがでないようにする以降のデザイン変更を禁止する「デザイン凍結」を宣言、市販化が急がれました。

「だれもが、しあわせになる」ロードスター4世代の変遷

構想着手から5年、量産開発から3年という紆余曲折の開発期間を経て、ついに1989年2月のシカゴオートショーでロードスターはワールドプレミアを果たします。このときの車名は北米市場モデル名の「MX-5ミアータ」。

シカゴオートショーのワールドプレミアを受け、日本国内メディアの多くから強い要望が殺到、国内発表会、試乗会が前倒しされるという異例の事態に。1989年7月末から予約会が全国46ヶ所で開催、どこも人で溢れ返るというこれも異例の事態が起こります。

初代 NA型(1989〜1997年)

マツダ ロードスター NA フロント
初代 NA型ロードスター

初代ロードスターのボディサイズは全長3,970mm、全幅1,675mm、全高1,235mm、ホイールベース2,265mm。「人馬一体」を具現化するのに最も重要な軽量化により5速MT車で1トンを切る940kgを達成。エンジンは自然吸気DOHC1.6Lで最高出力は120ps、最大トルクは14.0kgf・mというスペックでデビューします。

パワープラントフレーム(PPF)と呼ばれるペアシャシーを採用、マツダ車として初採用されたダブルウィッシュボーン式サスペンション、ダイレクト感あふれる走りを実現しました。なお、足回りはオーナーが好きなようにチューニングできるような設計にもなっていました。

ペアシャシー
(画像:マツダ広報資料)

1993年には大幅改良が施され、エンジンは200cc排気量を拡大、最高出力130ps、最大トルク16.0kgf・mへと高めています。

初代NAロードスターのカタログには、「だれもが、しあわせになる」というキャッチコピーが書かれていました。マツダは今でもロードスターの進む道に迷ったとき、このコピーに立ち返るといいます。

2代目 NC型(1998〜2004年)

マツダ ロードスター NB フロント

1998年1月に2代目ロードスターがデビューします。初代のキープコンセプトでフルモデルチェンジされ、基本的なデザインは継承されています。外観上で最も大きく変わったのは、リトラクタブルライトの廃止。この頃はアメリカでのヘッドライトの地上最低高の規制緩和、衝突安全性、空気抵抗、フロント部の重量増などのさまざまな問題点からリトラクタブルライトは次々と姿を消していった時代でした。

エンジンは初代NAロードスターに搭載されていた1.8Lと1.6Lを改良して採用、シャシーは最適化を施し熟成、ソフトトップ部分では初代のビニール製リアウィンドウからデフォッガー入りのガラス製に変更、同時にリアウィンドウ周りのファスナーを廃止して開閉しやすくなりました。

2代目ロードスターのテーマは「Lots of Fun」
文字通りたくさんの楽しさを追求したライトウェイトスポーツです。2000年には初代を含めて、二人乗り小型オープンスポーツカーのカテゴリで累計生産台数531,890台の世界一の記録を樹立、ギネスブックに認定されました。

3代目 NC型ロードスター(2005〜2014年)

マツダ ロードスター NC フロント

ロードスターは2005年に2回目のフルモデルチェンジを受け、3代目NC型となります。2代目が初代のアーキテクチャを引き継いでいますが、3代目はプラットフォームからはじまるすべてを刷新しています。

外観はデザインイメージを引き継ぎながら大きく進化、安全性能の向上のため全幅は先代比40mm拡大、エンジンとガソリンタンクを車両のヨー慣性モーメント低減のためにほぼホイールベース内に配置しこれを65mm拡大、一方全長は40mm拡大に収めましたが全体的に大きくなります。

エンジンは先代と変わり2.0Lに。最高出力は170ps、最大トルク189N・mを発生(MT車)、新開発の6速マニュアルトランスミッションを搭載、ATも6速になります。足回りも変わり後輪は5リンクのマルチリンク式を採用しています。

2006年には電動ルーフシステム「パワーリトラクタブルハードトップ」モデルを追加しています。この技術はマツダ独自のもので開閉時間は当時の世界最速12秒というものでした。

2005-2006年日本カーオブザイヤーを受賞、10年という長いライフサイクルで熟成を重ねて次の世代へとバトンを渡します。

4代目 NDロードスター(2015年〜)

マツダ ロードスター ND フロント

2015年5月、ロードスターは3度目のフルモデルチェンジを受け、4代目ND型となります。翌年2016年には、電動ハードトップの「RF」が追加され現在に至ります。

エンジンは「SKYACTIV-G 1.5」の給排気系を最適化、高回転化などのチューニングを施しロードスター専用ものとし、最高出力131ps、最大トルク150N・mを発生します。6速マニュアルトランスミッションは6速を直結にした新設計のものを採用するなど、初代からの「人馬一体」と「Lots of Fun」をさらに追求しています。

ソフトトップの開閉は、運転席に座ったまま手を伸ばして即座に可能なまでに進化しています。少しだけ慣れが必要ですが、信号待ちの間に片手でヒョイと開閉できるほどです。

4代目になり初代デビューから30年を経ても「だれもが、しあわせになる」ライトウェイトスポーツは、世界中から高い評価を受けています。また、世代を問わずロードスターを愛する人は世界中に存在し、中でも日本のロードスターのファンクラブ「Roadstar Club of Japan(RCOJ)」は国内最大級の会員数を誇っています。

4世代ロードスター全モデル一気乗り

マツダ ロードスター ND リア

試乗の順は、初代NAからNB、NC、最後にNDというのが順当でしょうが、ここはあえて最新型のNDをたっぷりロングドライブしてからのNAから世代順に試乗、最後はもう一度NDで締めるというメニューにしました。

ロードスター全世代 リア

もはやネオ・クラシックカーの部類に入ってしまった初代NAロードスターは、マツダのメカニックの行き届いたメンテナンスで非常に程度がよく、機関も良好。エンジンをかけると少々ガソリン臭いのが堪らまい。走り出してすぐに感じたのが、どっしりとしたボディの剛性感。30周年を迎えたモデルとは思えない「人馬一体」の軽快で愉しい走りは、NDと同じDNAなのだと実感。

2代目NBもその感想は変わらずも「あ、1世代でこんなにも進化するのか」と乗り出し3分で感じることができます。そしてすべてが1ランク上がり運転しやすくなった、キープコンセプトでの正常進化を強く感じます。

3代目NCに乗った瞬間「あれ?」と思うほどのパワフルさを感じます。NCは歴代ロードスターでは最もハイパワーな170psを誇る2.0Lエンジンですから、当然といえば当然。ND→NA→NBの順に乗ってからのNCは少し異次元の走りを見せますが、しばらく走っているとロードスターのDNAがしっかりと見えてきます。ソフトトップを開けて高速道路のランプをアクセルオンで走れば「だれもが、しあわせになる」ときを味わえます。

ハイパワーなNCからすぐにNDに乗り換えると、原点回帰した感がヒシヒシと伝わってきます。ロードスターはアンダーパワーの方がしっくりきます。意のままに操れる、人馬一体を日本の公道で存分に味わうなら、アクセル全開で走っても法定速度内で収まるパワーの方が愉しいもの。もっとパワーがほしいという声もありますが、そういう方はチューンナップで。マツダさんは、車をイジる余地もそれとなくきちんと残してくれています。

4世代を通してマツダの「ライトウェイトスポーツ」の心意気を同じように共通して感じました。それぞれの時代、世代毎の「Lots of Fun」を体験できた筆者はとても幸せでした。

ちなみに筆者も、ロードスターは大好きな車のうちの1台。

さて、ここで筆を置くことにしますが、4世代の変遷を画像で皆様へお届けしたく、次項から世代間の比較ができるようにまとめました。どうぞご覧ください。

全4世代 比較画像

外装デザイン

マツダ ロードスター NA フロント
NA
マツダ ロードスター NB フロント
NB
マツダ ロードスター NC フロント
NC
マツダ ロードスター ND フロント
ND

リア

マツダ ロードスター NA リア
NA
マツダ ロードスター NB リア
NB
マツダ ロードスター NC リア
マツダ ロードスター ND リア
ND

ボディサイド

マツダ ロードスター NA サイド
NA
マツダ ロードスター NB ボディサイド
NB
マツダ ロードスター NC ボディサイド
NC
マツダ ロードスター ND ボディサイド
ND

タイヤ・ホイール

マツダ ロードスター NA ホイール
NA
マツダ ロードスター NB フロント
NB
マツダ ロードスター NC ホイール
NC
マツダ ロードスター ND ホイール
ND

インテリア

マツダ ロードスター NA インテリア
NA
マツダ ロードスター NB インテリア
NB
マツダ ロードスター NC インテリア
NC
マツダ ロードスター ND インテリア
ND

インパネ(運転席側)

マツダ ロードスター NA インパネ
NA
マツダ ロードスター NB インパネ
NB
マツダ ロードスター NC インパネ
NC
マツダ ロードスター ND インパネ
ND

インパネ(助手席側)

マツダ ロードスター NA シート
NA
マツダ ロードスター NB インパネ
NB
マツダ ロードスター NC インパネ
マツダ ロードスター ND インパネ
ND

シート

マツダ ロードスター NA シート
NA
マツダ ロードスター NB シート
NB
マツダ ロードスター NC シート
NC
マツダ ロードスター ND シート
ND

ラゲッジスペース

マツダ ロードスター NA トランク
NA
マツダ ロードスター NB トランク
NB
マツダ ロードスター NC トランク
NC
マツダ ロードスター ND トランク
ND

エンジンルーム

マツダ ロードスター NA エンジンルーム
NA
マツダ ロードスター NB トランク
NB
マツダ ロードスター NC  エンジンルーム
NC
マツダ ロードスター ND エンジンルーム
ND
ロードスター全4世代
最新「ロードスター」中古車情報
本日の在庫数 1台
平均価格 4,832万円
支払総額 4,832~4,832万円

マツダ スポーツカー現行車種と個性的な歴代モデルを紹介!

執筆者プロフィール
宇野智
宇野 智
モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...

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