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「まるで闇と光」昭和を駆けた暴走車《神風タクシー》と《個人タクシー》誕生のキッカケ
速度違反も当たり前?“神風タクシー”って知ってる?
目的地を伝えるだけでその場まで送ってくれるタクシー。バスとは異なり好きな場所で乗り降りできるため、誰もが利用したことのある交通手段と言えるでしょう。
安全第一で乗客を送り届けてくれるイメージがありますが、昭和30年代前半頃のタクシーは運転が荒く「神風タクシー」と揶揄されるケースがあったことをご存知でしょうか?
自動車が普及しタクシー運転手という職業のコンプライアンスが未成熟だった時代は、ノルマ達成のため、速度オーバー、信号無視、強引な追い越し、急旋回といった乱暴な運転が目立ったそうです。
中にはハイスピードで渋滞をくぐり抜けていくような、荒くれドライバーもいたよう。
そんな一般人では真似できない“神わざ”とも言える運転で路上を駆ける姿から、彼らは「神風タクシー」などと呼ばれるようになりました。
しかし、そんな乱暴な運転により当然事故も急増。やがて社会問題として注目されてしまう事態に発展したのです。
危険運転の裏に潜むドライバーの収入問題
タクシーの乱暴運転による事故が増えたことを受け、当時の世論では「神風タクシー」の追放を求める気運が高まりました。
いくらタクシードライバーといっても違反に引っかかれば、罰金を自腹で払わなくてはならず、事故を避けたいという考えは共通しています。ではなぜ、それでも危険運転が横行していたのでしょうか?
そこには当時のタクシードライバーを取り巻く劣悪な職場環境が関係していました。会社の固定給は少なく、売上のノルマなどの条件もハード。1人でも多くの乗客を乗せなければならないという状況が、無謀な運転を余儀なくされていたのです。
その後ドライバーの環境整備のため、乗務員の日雇いやノルマ制の禁止が決定。1日当たりの走行距離を350kmに制限するなどの措置が取られました。
- 執筆者プロフィール
- 小高皐月
- 1979年生まれ。会社員を経て、知人の縁で編集プロダクションに就職。子育ての経験を活かして様々な記事を担当していたが、取材をきっかけにドルオタ化。クルマを走らせながら一人でカラオケするのが大好きで、歴...