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クロスミッションとは?普通の車のトランスミッションとの違いを解説!

クロスミッションとは

クロスミッションとは、車のミッションの特性を指す言葉です。
この言葉や仕組みはどのようなモノなのでしょうか。

クロスミッションの言葉の意味

クロスミッションと聞くと、なにか交差(クロス)しているのか?と思われるかもしれませんが、違います。

クロスミッションは、正式名称を「クロスレシオトランスミッション」といって、自動車などのトランスミッションのうち、それぞれのギアのギア比の差が比較的近いものを指す言葉で、昨今では「クロース」という言葉も使われます。

ギア比が近く、加速が早くなるように改造されている車のことを、「あの車はギアがクロスしている」などと指します。

ギア比の差というものには明確な定義や基準はなく、あくまでミッションを交換した際の純正のギア比との比較や、乗り手の好みによって表されます。

あの頭文字Dのトヨタ・スプリンタートレノ(AE86)もクロスミッション搭載

クロスミッションの特徴の一つは、加速です。

頭文字(イニシャル)Dという漫画で、主人公が通称ハチロクと呼ばれるトヨタ・スプリンタートレノ(AE86)に乗り、次々と現れる走り屋と峠で速さを競い合う物語があります。
主人公が初めて、峠でバトル(競走)をした際、相手の車はマツダ・RX-7(FD3S)でしたが、排気量、馬力共に劣る主人公の車が、相手とスタートダッシュで競いました。

それを見た相手チームのリーダーが、「ラリー用のクロスミッションを組んでいるからだ」という分析をします。その時の主人公が勝負できたのはこのクロスミッションが組まれていたからです。

クロスミッションはスタートダッシュや低いギアでの加速勝負に強い威力を発揮します。

クロスミッションでエンジンパワーを有効活用できる

エンジンのパワーは最初から最大出力になるのではなく、回転数に応じて徐々にパワーが出てきます。しかし、青天井にパワーが上がっていくわけではなく、エンジンごとにピークパワーがあり、それを超えると、回転数が上がってもパワーは落ちていきます。

この時、最もエンジンパワーが出るおいしい所を、「パワーバンド」といいます。

純正のミッションは、パワーバンドを最大活用する設計ではありませんので、シフトアップとともに、エンジン回転数とパワー出力がストンと落ちてしまい、再びパワーを出すまでにタイムラグが発生してしまいます。

しかし、クロスミッションは、ギア比が近いためにシフトアップしてもエンジン回転数とパワー出力を著しく低下するのを防ぐことができ、パワーバンドを有効活用できます。

クロスミッションと普通の車のトランスミッションの違い

クロスミッションや純正トランスミッションの解説をするためには、ミッションの中にあるギア比のことに触れなければなりません。
その上で、違いを解説します。

マニュアル車とギア比の関係

車の動力はエンジンで生みますが、その動力は直接タイヤにつながっているわけではありません。
エンジンで生まれた動力はミッションを通し、効率的にその力を伝えます。
MT車だとよく分かりますが、車が停車している状態からは1速を使用してエンジンの大きなパワーを使って発進しますが、逆に5速では発進できません。
これは、発進のためにエンジンパワーをもっとも有効にタイヤに伝えることのできるギア比が1速であるから、ということになります。

クロスミッションとギア比の関係

メーカ日産スバルHONDA
車種名シルビアS15
(SPEC-R)
BRZS2000
排気量1,998cc1,998cc1,997cc
駆動方式FRFRFR
1速3.6263.5383.133
2速2.22.062.045
3速1.5411.4041.481
4速1.21311.161
5速10.7130.97
6速0.7670.5820.81
ファイナルギア3.6924.14.1

上の表は、メーカー別の車の普通の車(純正)のトランスミッションのギア比です。
表からもわかるように、同じ排気量2,000ccの後輪駆動車であっても、メーカーごと、エンジンや車の特性に合わせてギア比を決めています。

クロスミッションと普通の車のトランスミッションの仕組みとギア比

クロスミッションは、上記の普通の車(純正)のトランスミッションのギア比に比べて、数字が小さくなります。ギア比の数字が小さくなるということは、タイヤが1回転するために必要なエンジンの回転数が小さくなるということです。

ということは、同じエンジン回転数でもタイヤの回転数が上がれば、当然それだけ加速が早くなります。これが普通の車(純正)のトランスミッションとの決定的な違いです。

クロスミッションによってスタートダッシュや中間加速が早くなるのは、このような仕組みになっています。

クロスミッションとファイナルギアの関係

ミッションのギア比を表す際、「ファイナルギア」というものがあります。

これは、最終減速比といって、簡単にいうとシフトアップをした時の回転数の落ち方を決めるものです。

このファイナルギアを交換することで、純正のトランスミッションであっても、クロスミッションと似たような効果を得ることができます。

クロスミッションの効果とメリット・デメリット

クロスミッションにすることで、具体的に車にはどのような変化が合わられるのでしょうか。
そして、その変化におけるメリット、デメリットはあるのでしょうか。

クロスミッションの効果

ミッションの各ギア比とファイナルギアの数字がわかると、タイヤが1回転するのに必要なエンジン回転数がわかります。

例えば、日産・シルビアの場合、1速のギア比は3.626で、ファイナルギアは3.692です。
これを掛けると、1速3.626×ファイナル3.692=13.387…となります。

つまり、1速の場合、タイヤ1回転に必要なエンジン回転数は約13.4回転となります。ここに、クロスミッションに交換して、1速のギア比が2.907になるとします。

すると、1速2.907×ファイナル3.692=10.732…となり、タイヤ1回転に必要なエンジン回転数は約10.7回転となります。

クロスミッションに交換したことによって、1速でタイヤ1回転するために必要なエンジンの回転数が下がりました。
これは、エンジンの回転数が上がるにつれて、純正よりもタイヤが回転する、つまりパワーをタイヤに伝えるのが早くなることを意味します。

これと同様に、1速に限らず、2速、3速をクロスさせることによって、走り出しや中間加速の速度を向上させることができます。

クロスミッションのメリット

クロスミッションは発進や中間加速に強い力を発揮します。
そのため、狭いサーキットでパワーバンドを保ったまま走行したいときや、ドリフト走行などで高回転を維持してシフトチェンジを行いスピード調節をするときなどに、非常に向いています。

また、サーキット走行などでは頻繁なシフトチェンジが必要なので、レーシーな気分が味わえます。

クロスミッションのデメリット

クロスミッションはその特性上、加速および低速のギアに合わせたギア比なので、高速走行には向きません。

全体的にギアがクロスしている場合、100km/hで巡航する場合は純正ミッション以上のエンジン回転数が必要になり、燃費が落ちます。
そのため、クロスミッションは5速以降のギア比を逆にワイドにすることで、対応します。

デメリットになるかどうかはその人の好みによりますが、クロスミッションにすることによる頻繁なシフトチェンジは、運転を忙しくさせてしまうこともあります。

クロスミッションはモータースポーツの世界では大活躍

クロスミッションとラリー

ラリーカー
©Jakub Strzeszewski/stock.adobe.com

クロスミッションはモータースポーツの世界ではとても重要な役割を持っています。

WRCに代表されるラリーの世界では、クロスミッションは必要不可欠です。
というのも、ラリーの代名詞でもある荒れた路面を走る場合、「速く走る」と同時に、タイヤを速く回転させて土などを「かき出して走る」ことが求められます。
このような時は、ミッションをクロスさせて、パワーバンドを外さずにタイヤを回転させたほうが有利に走ることができます。

クロスミッションとF1

世界最高峰のモータースポーツであるF1ですが、F1のマシンはエンジンが高回転の領域で最もパワーが出るように作られています。
レースごと、当然ギア比は変更されますが、それでもエンジン低回転時のパワーは弱いため、ギアをクロスさせ、すぐにエンジンが高回転に達するように作られています。

クロスミッションを積んだ走り屋憧れのAE86

トヨタ・スプリンタートレノ AE86オーナー 土屋圭市氏

寒いです(^-^) pic.twitter.com/vmnNg0KAjz— 土屋圭市 (@k1tsuchiya) 2016年11月16日

全日本プロドリフト選手権(D1)の発起人でもあり、ドリフトを世の中に知らしめた、「ドリキン」と呼ばれる方です。
プロのレーサーでもあり、ドリフトという新しいモータースポーツの普及に尽力をされています。
彼の作り出したAE86はこだわりぬいたクロスミッションを搭載しています。

おそらく土屋圭一さんの86が置いてありました。 pic.twitter.com/1Ou5THiLHY— YGBK5 GDB-B迫真プロドラ部 (@k5SUBARU) 2016年11月27日

レーシングマシンではありませんが、オーナーのこだわりが詰まったAE86があります。高い戦闘力を誇るAE86は多くありますが、これほどまでにこだわりぬいたAE86はそうないのではないでしょうか。

クロスミッション 3.5速という選択

このトヨタ・スプリンタートレノ AE86には、純正には存在する5速がありません。
その代わり、4速と3速の間に3.5速というギアを搭載しています。
これによって最高速は得られなくなりますが、中間加速のつながりが格段に良くなり、ショートサーキットでのタイムアタックやドリフトなどでは、常にパワーバンドを維持した走りが実現できます。

まさに、ドリフトのために作られたこだわりのクロスミッションと言えます。

クロスミッションで車の走りが変わる

トヨタ 86
©Moose/stock.adobe.com

クロスミッションの解説はいかがでしたか?

外見はいじってないように見えて実はすごい加速をする、ショートサーキットを走る時に有効にパワーバンドを維持したいなど、走りにこだわりを持ちたいオーナーにはぴったりの選択肢だと思います。

様々なアフターパーツメーカーからクロスミッションは販売されています。
自分の愛車に合うクロスミッションがあれば、一度検討してみてはいかがでしょう。

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執筆者プロフィール
MOBY編集部
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新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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