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ブレーキマスターシリンダーの点検・オーバーホール方法|交換時期や費用は?
目次
マスターシリンダーの構造と仕組
多くの自動車のブレーキ、クラッチは油圧によって動作しています。ブレーキペダルやクラッチペダルを踏んで、入力した力を油圧に変換する装置がマスターシリンダーです。
エンジンルームと車内との隔壁からニョキっと生えた、オイルの入ったタンクとその下の金属部品が、“マスターシリンダー”という部品です。
マスターシリンダーは安定したブレーキ、クラッチ操作には欠かせません。ブレーキが動作する仕組みを、以下の動画で確認してみましょう。
注射器を想像していただければ理解しやすいでしょう。2つの注射器同士をつないで、片側を押すと、反対側の注射器も同じ量だけ動きます。
マスターシリンダー内にはフルードと呼ばれる動作油が充填されています。フルードに、ペダルからピストンを介して圧力をかけることで、細い配管の先にあるブレーキやクラッチが動作する仕組みです。
自動車ではオイルを使い、圧力を媒介することで高圧、高温に耐え、高い応答性を発揮します。ブレーキという重要箇所なだけに信頼のおけるシンプルな構造となっています。
異常・故障した際の症状は?
ブレーキの効きが悪い・ブレーキペダルが奥まで入る・フルードが黒ずむ・クラッチの入れが悪いなどの症状が出た場合は、マスターシリンダーのオーバーホールが必要かもしれません。
マスターシリンダーはブレーキ、クラッチを動作させる重要保安部品です。異常がある場合は重大な事故につながる恐れがありますので、速やかに対処する必要があります。
磨耗したゴムパッキンや、金属疲労を起こしたスプリングを交換して新品の状態に戻してあげましょう。マスターシリンダーを構成する部品のうち、ピストンとシリンダーの隙間を埋めるのはゴムパッキンですし、ピストンを戻すのは金属スプリングの働きです。
また、長い間動かしていない車や、ブレーキフルードを長い間交換していない車は、マスターシリンダー内が錆などで固着している場合がありますのでその場合もオーバーホールが必要です。
マスターシリンダーの点検方法
マスターシリンダーの点検では、ブレーキフルード(ブレーキオイル)やクラッチフルードが漏れていないかを確認します。
ブレーキマスターシリンダーの点検
ブレーキタンクが破損してオイルが漏れていないかだけでなく、“マスターバック”からオイルが漏れていないかを確認しましょう。
マスターバックはブレーキタンク奥にある、円形の部分です。マスターバックが湿っていたり、塗装が剥がれている場合はブレーキマスターからのオイル漏れが原因の可能性が高いです。
一度マスターバックを拭き取ったあと、何回かブレーキペダルを踏んでみましょう。新たに湿ってくる場合はブレーキマスター(シリンダーやマスターバック)の交換や修理が必要です。
クラッチマスターシリンダーの点検
タンクが破損してオイルが漏れていないか、クラッチマスターとボディとの継ぎ目が濡れていないか、周辺のボディ塗装が剥げていないかを確認しましょう。
交換時期と交換費用
ブレーキマスターシリンダーの交換
ブレーキマスターシリンダーの交換時期は4年ごと、または漏れが見つかったらすぐに行います。
ブレーキマスターシリンダー内部のみを交換(オーバーホール)か、キットがなくできない場合はブレーキマスターごとすべて交換するアッセンブリー交換を行うことになり、費用は15,000円~50,000円ほど。オーバーホールのほうが費用や工賃が安く済みます。
クラッチマスターシリンダーの交換
クラッチマスターシリンダーはあまり壊れることはありませんが、漏れが見つかったらすぐに交換します。
クラッチマスターシリンダーはオーバーホールを行いますが、費用は9,000~12,000円ほどです。
オーバーホールのやり方
ブレーキマスターまたはクラッチマスターの整備は、マスターシリンダーのオーバーホールが基本です。マスターシリンダーのオーバーホールとは、内部のゴムパッキンやスプリングなどの消耗品をすべて交換することです。
ただし、マスターシリンダー内やピストンに傷や破損がある場合は、マスターシリンダーや周辺部品の交換が必要です。
マスターシリンダーはブレーキなどと同じく重要保安部品に指定されていますので、オーバーホールの際は認定工場などの信頼のおける場所で整備してもらいましょう。自分でオーバーホールする場合は、十分に注意して作業する必要があります。
また、整備士資格がなければ、自らが運転する車しか整備することができませんのでご注意ください。
準備するもの
- 各車種用マスターシリンダーオーバーホールキット/インナーキット
- 新品フルード
- フレアナットレンチ
- その他工具等
作業手順
具体的な方法は各車種で違いますので、整備書等で確認しながらおこなってください。 共通する、大まかな手順を説明します。
- フルードを抜いて、フレアナットレンチで各配管を外します。
- マスターシリンダーを取り外します。
- リザーバータンクを取り外します。
- ピストン固定ピンを外し、ピストンを取り出します。
- パーツクリーナー等で各部洗浄
- 各部品の傷等をチェックします。
- グリスを塗布しながら消耗部品を交換
- 元の状態に組み付けます。
- フルードを注入します。
- エア抜きを行います。
- 動作チェックを行い、正常に動くか、フルードの漏れがないか確認します。
適合するインナーキット/リペアキットを使おう
オーバーホールの際は、各マスターシリンダーに適合したオーバーホールキット(インナーキットやリペアキットなどとも呼ばれます)を使います。
キットの中身はゴムパッキンやスプリングなどの消耗品ですので、メーカー純正品でも5,000円~。各パーツのみのバラ売りの場合、600円~2,000円ほどで購入できます。
フルードが付着した場合はすぐに取り除こう
フルードは車の塗装を痛めますので、付着した場合は速やかに水・パーツクリーナーで洗い落としましょう。
ブレーキのエア抜きとは?
エア抜きは、細い配管内に空気が入ることによって、ペダルを操作しても空気が圧縮されるだけ、という動作不良を防ぐための重要な作業です。
ペダルを断続的に踏み込みながら配管から空気を抜かなければならないため、二人以上での作業を推奨します。(特殊工具を使うと1人でも可能です)
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...