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軽トラと軽バン両方の経験者が語る!車中泊用車としての軽バンの魅力

キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です


軽トラ以上に車中泊用車としての人気の高い軽バン!

前回、車中泊用車としての軽トラの魅力と活用方法についての記事を書いた。

今回は、軽トラと並んでというより、おそらく軽トラ以上に車中泊用車としての人気の高い軽バンの魅力と、魅力だけでなく弱点なども整理しておこうと思う。

ただし、軽バンに限らず軽自動車全般に当てはる利点、例えば、税金や保険などランニングコストが安く、高速道路の通行料金が安く、燃費も良いなどといった話は省き、魅力も弱点も軽バンに絞った話にしようと思う。

軽バンとは?

まずは軽バンとはどんなクルマのことなのか。

そして、現行車両はどうなっているのかなどについて。

軽バンという言葉に明確な定義などなく、人によって解釈も異なると思うのだが、まずは定義(あくまでこの記事の中での定義)しておくことにする。

第一には、乗用/貨物の用途区分(ナンバー)に関係なく、荷室だけを使用して平均的な身長の大人が寝られるスペース(長さが概ね180cm程度はある空間)を確保できるクルマを指すことにする。

なので、スズキのアルト バン(まだ多数現役で活躍しているが現在は生産中止)のような軽のライトバンは4ナンバーの軽貨物車で、名前の通りバンではあるが、荷室だけのスペースで寝ることはできないので、ここでは軽バンに含めない(あくまでこの記事での勝手な定義)ことにする。

アルト バンに代わってスズキ スペーシアベースという乗用車ベースの軽貨物車が登場した。

これも車中泊旅用車として有力な候補に挙げられる魅力的なクルマだ。

しかし、助手席や運転席も使えば平らなベッドを作る場所を確保できるようだが、荷室だけでは先程挙げた条件を満たすことができない。

なので、車中泊旅用車として魅力的ではあっても、やはり軽バンには含めないことにする。

また、軽トラをベースに作られた「パネルバン」というタイプのクルマがあり、これも車中泊用車として大きな魅力がある。

daihatsu

しかし、今回はボディー全体が一体で、キャビンと荷室がつながっているバンのみを軽バンと呼ぶこととし、パネルバンも軽バンからは除外する(しつこいようだが、スペーシアベースもパネルバンもあくまでこの記事の中での話)ことにする。

以上を軽バンの定義とすると、一つだけの例外(その例外については後述)を除き、「軽バン」はそのままワンボックスタイプの軽自動車を指す言葉となる。

それで、現行生産されている車両からワンボックスの軽バンを探すと、名前は色々あるのだが、実際にはダイハツ ハイゼットカーゴ/アトレーとスズキ エブリイ/エブリイワゴンとこれらのOEM車両、及び、一時期消えてしまったけど割と最近復活した電気自動車の三菱 ミニキャブミーブしかない。

そして、エブリイとエブリイワゴンの関係は、貨物車バージョンと乗用車バージョンの違いで、ハイゼットカーゴとアトレーの関係は、アトレーがハイゼットカーゴの豪華バージョン(モデルチェンジ前のアトレーは乗用車ナンバーだったが、現在はアトレーも貨物車ナンバーとなっている)のような位置付けに過ぎず、基本的にはこの2つも同じクルマだ。

また、ミニキャブミーブは航続距離の問題等で、普通に旅で使うクルマとしてまだ少々難しい面があるため、これも対象外とすると、車中泊旅に使える軽のワンボックスは、名前は違っていても実質2車種しかないことになってしまう。

「車中泊用車としての軽トラの・・・」の記事で、現在軽トラを製造しているメーカーがダイハツとスズキしかないと書いたが、軽バンもこれに近い状態にあるということだ。

因みに現行のハイゼットカーゴ/アトレーとエブリイ/エブリイワゴンは、どちらも前席下辺りにエンジンを搭載するFR(フロントエンジン リアドライブまたは4WD)なので、基本的には同じ仕組みだ。

しかし、スバルが自社製造していた頃のサンバーはRR(リアエンジン リアドライブまたは4WD)で、ホンダのアクティ/バモス・バモスホビオ(貨物車/乗用車)は後軸の少し前にエンジンを搭載しするMR(ミッドエンジン リアドライブまたは4WD)だった。

外観は似て見えても各メーカーが製造していた頃の方が個性豊かでずっと面白かった。

今は没個性でつまらない状況になってしまっていることは否めない。

そんな中、新たなガソリンエンジンの軽ワンボックスが登場することなどないであろうし、多分このまま軽バンはBEV(バッテリーで走る電気自動車)への移行が進んでしまうのであろうと予測すると、軽バンを使って旅を楽しめる時間はもうそんなに長く残っていなくて、乗るなら今のうちなのかもしれない。

そう考える理由は、アトレーやN-VANなどは今のところレジャーユースも十分考慮に入れて販売されているようだが、それは販売数を増やすためのあわよくば的な考えであって、メーカー側としては、基本的に軽バンは長距離走行(輸送)より近距離の配送業務用などに主眼を置いているため、航続距離はあまり長くなくても良いというのが基本的なスタンスだと思うからだ。

そして、売る側の企業にとっても導入する側の企業にとっても色々な面でBEVは有利だ。

そうなると、今後全ての軽バンがBEVシフトしてしまう可能性は低くない

といったところで、それが終了する頃には私はこの世にいない可能性も十分高いので、自分には関係のないことかもしれないが、バッテリーの性能が飛躍的に向上して航続距離が現在の倍以上に伸びるとか、充電ステーションの数が激増したり充電時間が飛躍的に短縮されたりするなど、余程BEVを取り巻く環境が改善されるようなことでもなければ、やはりBEVになってしまった軽バンで旅をするのは難しいということだ。

しかし、悲観していても仕方がない。

話を戻して、ワンボックス以外の軽バンの一つだけの例外について説明しておこう。

それはホンダのN-VANだ。

HONDA

N-VANは日本で一番売れている乗用車でもあるN-BOXをベースに開発された軽貨物車なので、小さなボンネットの中にエンジンの収まったFF(前エンジン/前輪駆動)またはFFベースの4WDだから、ワンボックスではない。

そして、運転席と助手席から後(後席はたたんだ状態)の荷室スペースの長さは1,585mmなので、第一に挙げた軽バンの条件にも当てはまらない。

しかし、N-VANは、運転席以外は助手席も後席も床下に収納することができ、運転席以外を全て平らな床の荷室にしてしまうことができるようになっている

HONDA

そうすると、最大で長さが2,635mmもある、軽ワンボックスの荷室以上の長く平らな床を常に確保しておくことのできる大変ユニークなバンだ。

ということで、ワンボックスではないN-VANも軽バンに加えることにする。

ただし、N-VANもすぐにガソリンエンジン車が消えることはなさそうだが、N-VANベースのBEVの登場が間近なようではある。

軽バンの良いところ

少し暗くなりかけたので、次に軽バン全般に共通する利点について。

すぐに寝られる

軽トラを車中泊に利用するなら、荷台にシェルを載せてしまうか、幌を設置してしまうか、確実に降雨降雪の心配のない時以外は、毎晩寝る前に荷台にタープなどをかけたり、テントを張ったりすることになる。

また、軽ハイトワゴンや軽SUVの場合は倒した座席(前席)の段差を解消するなど、やはり毎度必ず寝る場所を作る手間が必要(1人なら助手席を潰したままにしておくこともできるが)だ。

この作業が面倒というだけでなく、車内にいながらこういったベッドメイキングのような作業の全てを済ませるのは結構難しい(できる人もいるかもしれないが)と思うのだが、車外に出てベッドメイキングをしなければならないとなると、嵐の日などはかなり厄介だ。

車中泊をする目的がキャンプのようなことを楽しむことであるなら、テントを張るよりは手間も少なくて済み、そういった準備もまた楽しいのかもしれない。

しかし、道中の休憩が主な目的のような車中泊の場合は、「何もしなくても寝床が確保されていること」は、荒天の日や疲れ切っている時には大変ありがたく重要なことで、車体が小さいながらもそれを最も簡単に実現できるのが軽バンだ。

積める荷物の量が多い

軽ハイトワゴンや軽SUVは、助手席や運転席も活用しなければ寝られるスペースを確保できないが、その分も含めると荷物を置くスペースが軽バンより断然少なくなってしまう。

大きな荷物を運ばなければならない旅では、軽ハイトワゴンや軽SUVでは力不足となってしまうこともありそうだ。

軽自動車はどれも長さと横幅がほぼ同じでありながら、軽バンは1クラス上のバンと大差ない量の荷物を積むことができる

本当に合理的なクルマだ。

キャビンと一体化された室内

構造変更をした軽トラでなければ、シェルを積んだ軽トラのキャビンと居室(シェルの中)は隔離されている。

私の使用しているハイゼットジャンボは、オプションの開け閉めできる背面窓が付いているため、窓を開ければ居室からキャビン内へ手を伸ばす程度のことはでき、空気の行き来もできるが、窓の大きさはパチンコの両替所や宝くじ売り場をほうふつとさせる程度の大きさだ。

これでもないより何かとずっと便利ではあるのだが、居室とキャビンが一体化されているというほどではない。

また、パネルバンにも壁をぶち抜き、キャビンと荷室が一体化された車中泊仕様車も販売されているが、本来はパネルバンのキャビンと荷室は完全に隔離されている。

今回パネルバンを除外した主な理由も、ノーマルなパネルバンと改造された車両とでは車中泊車としての使い勝手が全く異なり、話がややこしくなるからだ。

また、軽トラの荷台の方が、軽ワンボックスの荷室より容積的には圧倒的に広いシェルを積むことができるが、荷室を居室として使用中に、運転席助手席を荷物置き場にする際には、荷室とキャビンが一体化されている方が便利で、その点では軽バンに分がある

そして、多少エアコンの効きが落ちたとしても、走行中に室内全体の空気を循環させることができるのも、室内が一体化された軽バンの利点だ。

人を乗せられる

軽トラは2名しか乗車できないが、普通の軽バンは4名乗車することができる

車中泊に使うだけでなく、普段自分以外に2名以上の人を乗せる必要性があるのなら、軽トラという選択肢は消えることになる。

良くも悪くも目立たない

軽トラにオーバーハングのあるキャンピングシェルや自作のシェルを積んでいると、良くも悪くも人目を引きやすい。

私の使用しているBoo3という軽トラ用シェルは、外観が比較的あっさりしているので、自分ではあまり目立たないと思っていた。

しかし、ルーフキャリアを付けているせいなのかもしれないが、知人からは「遠目にもすぐわかる」と言われ、初めて見た人からは「何か面白そうなクルマと思った」といったような感想を聞くことが多い。

Boo3でもこうなのだから、目立ちたくない人や目立っては困る人には自作のシェルや背の高いキャンパーシェルなどが合わないことは明白だ。

それとは逆に、軽バンの場合は中をバッチリ車中泊仕様に改装していたとしても、外装がノーマルかノーマルに近い状態であれば、よくも悪くも全く目立つことがない

耐候性と強度の面で安心

車中泊に使うのであれば、断熱材なしの薄い板一枚だけの屋根では暑い時期は厳しい。

シェルを自作する場合や断熱材の入っていないシェルを車中泊に使う場合は、天井の断熱の工夫は必須だ。

低いグレードの軽バンの天井も、鉄板一枚で断熱処理などされていないことが多い。

しかし、内装がシンプルな方が自分で断熱材を入れるなどの工事はむしろやりやすく、逆にそれが魅力ともなる。

また、実は立派なキャブコンなどでも雨漏りに悩んでいる人は多いほどだから、自作のシェルの場合もメンテナンスや修理に手間がかかる覚悟が必要だと思う。

一方、最初から一体成形されたボディーの軽バンなら、当然こういった心配は無用だ。

軽バンの弱点

良いことばかりではなく、選べる車種が少なくなってしまったこと以外の軽バンの弱点のようなものもいくつか挙げておこう。

エンジンの搭載位置による問題

ハイゼットカーゴ/アトレーとエブリイ/エブリイワゴンのどちらもエンジンがシート下に搭載されていると書いた。

これは大変合理的でもあるのだが、不利益もいくつかある。

当然、ボンネットの中に収まっているより整備性は悪くなる。

そして、エンジンの熱がキャビン内に伝わってしまいやすい。

私はシート下にエンジンが搭載されているクルマをいくつか経験しているが、現在も使用しているキャラバンはグレードが高いせいなのか(自慢しようというのではない)、またエンジンの回転数が低いせいもあるかもしれないのだが、あまりこの熱問題に悩まされたことがない。

しかし、それ以外のボンゴOEM時代のバネットや、軽トラのミニキャブなどは、長距離走行や高速走行を続けると下から熱が伝わってきて、夏はとにかく暑かった印象が強い

バネットは、グレードが低くてとにかく簡素だったことが最も大きな原因だったと思う。

しかし、ミニキャブはハイグレードなタイプだったようなので(貰い物だったので詳しいことはわからない)、軽自動車ならではのエンジン回転数の高さが大きく影響していたのではないかと思う。

ハイゼットカーゴ/アトレーとエブリイ/エブリイワゴンは20年以上前のミニキャブより改善されているとは思うのだが、どちらにも長時間乗ったことがないので実情はわからない。

現行車両だったらずっと改善されているは思うが、10年以上前の古い中古車から軽バンを選ぶなら、私だったらスバル製のサンバーかホンダのアクティ/バモス・バモスホビオのどれか(先程述べた通りどれもエンジンは運転席から遠いところにあり、私は実際にサンバーのトラックとバモスで暑くないことを経験している)を選ぶと思う。

因みにN-VANはFFなので、上に挙げたどちらも関係のない話だ。

ペダルのオフセット

ハイゼットカーゴ/アトレーとエブリイ/エブリイワゴンは前輪が前席より前にあるのだが、前輪のタイヤハウスのせいで、はっきり言ってこのレイアウトは足元が狭い

そして、ペダルが車体中央寄りにオフセット気味になってしまう。

ミニキャブトラックもそうだったが、バモスもこれと同じで、長時間運転していると、右足をもっと外側に置きたくなることがある。

骨格が細いような人なら特にこんなことも感じないかもしれないし、耐えられないほどのことではないが、バモスに乗った後にキャブオーバーのハイゼットジャンボやキャラバンに乗ると、足元が広々としていてなんとも言えない解放感さえ感じてしまうことがある。

ミニキャブトラックもバモスもATだったからまだ良いが、MTでゴツい靴など履いていたら、結構操作し辛いのではないだろうかとも想像してしまう。

特にMTを選ぶならしっかり試乗した方が良さそうだ。

着座位置と衝突安全性

私はもうずっと昔から慣れてしまっているので全くわからないことだが、運転席より前が極端に短い着座位置での運転に違和感を感じる人もいるようだ。

しかし、これはこのレイアウトが運転しにくいということではなく、全く慣れの問題でしかない。

むしろ私などはフロントガラスのスラントが強くてダッシュボードが妙に長い今時のクルマの方が余程運転しにくいように感じる。

前席より前にエンジンの収まったボンネットがないことで、衝突した場合の安全性を心配する人がいる。

クラッシャブルゾーンが大きい方が、確かに安全性が高そうではある。

しかし、軽自動車の小さなボンネットのあるなしで、どの程度の違いがあるのかも不明ではある。

事故は自分の注意だけで防ぐことはできないが、そういった心配をするより、とにかく安全運転を心掛けることの方が大切だと私は思う。

世界一合理的な車中泊用車かもしれない

改めて軽バンの魅力をピックアップしていくと、世界一合理的な車中泊用車のような気もしてくる。

アメリカから来た若いサーファー達が軽バンに興味津々になっていることも多い。

今後の軽バンの見通しがあまり明るくなさそうなようなことも書いてしまったが、今後もこの楽しく合理的なクルマがずっと生き残っていくことを願いたい。

ライター:笠原 サタン

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執筆者プロフィール
車旅情報Webマガジン「DRIMO」
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