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軽自動車で快適な車中泊をするための車種選びとベッド作りのコツ

キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です


80年代半ばごろまでは、車の中で快適に寝たければ、寝られそうな車(大抵は商用車)をユーザーが探して工夫を凝らしたり改造をするか、出来上がった高価なキャンピングカーを買う以外になかった。

そして軽自動車が現在の規格になるまでは、サイズも小さく、ワンボックスならなんとかなるとしても、それ以外で快適に寝られるような車などなかった。

しかし、現在はキャンプブームと相まってなのか、メーカー側も車中泊を意識した車を積極的に作るような動きがある。

そして「軽自動車での車中泊」への関心も年々高まっているように感じられるが、とりわけ軽自動車に車中泊を意識した作りのものが多くなっているようにも感じる。

キャンピングカー関連のショーを見に行っても軽キャンピングカーのブースは盛況だ。

普通車サイズ以上のキャンピングカーを所有することは難しくても、サイズが小さくて価格も比較的安価な軽のキャンピングカーならより現実的で、セカンドカーして持てると考える人も多いのだろう。

それから、軽自動車の性能が向上していることもこうした状況を後押ししていると思う。

また、軽トラをベースに作られたキャンピングカーの人気も高いが、自分で軽トラの荷台に小屋を作ったり、幌を張って半分キャンピングカー・半分テント的な使い方などもじわじわと広がりを見せている。

ビルダーの作った軽キャンピングカーも使いやすくて快適そうな良い車はいっぱいあるし、自分で荷台に小屋を作るのも楽しいと思う。

しかし今回はそれらについては敢えて除外する。もう少し手前と言うか、あまり大袈裟なことはせずに、ちょっとした工夫や工作だけで、普通の軽ワンボックスやハイトワゴンで快適に寝られるようにする術や車種の選定などについて考察したいと思う。

軽自動車の分類

軽自動車での快適な車中泊について考える前に、車中泊に向いている車種(軽キャンピングカーと軽トラは除く)について触れておこう。

あまり車に詳しくない人は四角くて広そうで、外観的にはなんとなく似て見えたりすると、何がどう違うのかわからない人もいるかもしれない。

例えば、スズキ「エブリイ」とホンダ「N-VAN」の区別がつかないような人もいるのではないかと思うが、この2つは構造的な面でも室内のスペースに関しても全く異なる。

車のタイプによって使い勝手に大きな違いが出るので、車を選ぶ前にタイプ別の違いをしっかり把握しておくことが重要だ。

車中泊に使えそうな軽自動車(重ねて言うが軽キャンピングカーと軽トラは除く)をタイプ別に分類すると、以下の5タイプに分けられる。

・ワンボックス系
・スーパーハイトワゴン
・ハイトワゴン
・スーパーハイトワゴンがベースの軽VAN
・ジムニー

現在このどれにも属さない車種の方が少ないようにも思う。

因みにジムニーだけタイプではなくダイレクトに車名なのは、詳しい話は割愛するが、ジムニーは構造的にも性能的にもあらゆる面で他の軽自動車とは全く異なる唯一無二の存在で、車中泊もできる車だからだ。

ワンボックスタイプの特徴

まず最初に『ワンボックスタイプ』について。

結論から言ってしまうと、このタイプが最も車中泊には便利で適していると思う。

乗り心地や普段の使い勝手や快適さ、走行性能など他の面がどんなに優れていても、車中泊での利便性の高さは、ワンボックスと、ワンボックスではないがホンダの「N-VAN」に敵うものはないと断言して良いように思う。

現在、軽ワンボックスはスズキの「エブリイ/エブリイワゴン」とダイハツの「ハイゼットカーゴ/アトレーワゴン」しかない。

エブリイは商用車版でエブリイワゴンは同じ車をベースにした乗用車版。ハイゼットカーゴとアトレーワゴンの関係も同様だ。

また、他のメーカーにスクラムとかクリッパーとかサンバーなどもあるが、何れもスズキかダイハツのOEM(他社で作られた車)だから、ブランドは色々あっても、実質このタイプは基本的に現在2車種しか存在しないことになる。

以前は、スズキとダイハツだけでなく、本田・三菱・スバル・マツダ(マツダはかなり昔に撤退)の各社が独自に作っていて、各々に特色があったのに、現行は実質たった2車種とは寂しい限りだ。

このタイプの一番大きな特徴は、前席部分を使うことなく、前席から後ろの部分だけで一般的な体格の大人が就寝するのに十分なスペース(最長180cm位)を確保できる点だ。

逆に言えばこのタイプと軽トラ以外は、どれも運転席や助手席部分のスペースも使用しなければ寝られないということだ。この違いは非常に大きい。

例えば、ワンボックスなら2名乗車でも前席から後ろは常設ベッド兼居間にしておくことができる。

寝ようと思ったらすぐに寝られるのと、色々と準備を整えなければ寝られないのとでは大違いだ。雨なんか降っていたら、ベッドを作る作業も億劫になってしまうことだろう。

そして就寝中は使っていない前席が荷物置き場にもなるし、シェードやカーテンの準備も少なくて済む。

現在ほとんどの軽自動車がFFかFFベースの4WDだ。

小さいながらもボンネットがあって、そこにエンジンが収まっているFFレイアウトでは、3.4m(軽自動車の最大の長さ)の中に、前席とは独立した1.8mもの長さのスペースを設けることは物理的に不可能。

ワンボックスタイプがこの長さを確保できる理由は、後輪駆動(4WDもあるけど後輪駆動ベース)だからである。

エブリイとハイゼット(エブリイワゴンとアトレーワゴンも含む)はどちらも前席の下にエンジンのあるFRレイアウトだ。前席の下にエンジンを収めることで、長い室内長を確保できるのだ。

割と最近まで製造されていたホンダの「アクティ/バモス」は、なんとスポーツカーのようなリアミッドシップレイアウトで、「サンバー」(ダイハツOEMのではなくスバル製の)はポルシェ911と同じRRレイアウト(リアエンジン・後輪駆動)だった。

どちらもFR同様に長い室内長を確保できていたが、FFレイアウトではこうは行かない。

ワンボックスタイプのベッドスペースの作り方

前述の通り、ワンボックスタイプなら、後席を収納または格納してしまえば、前席を使うことなく就寝スペースを確保することができる。

極端なことを言えば、マットさえ敷けば普通に寝られる車もある。

だが、例えば私のバモスを例に挙げると、後席は床下に格納する仕組みになっているのだが、格納しても後席から後ろの荷室の部分との間に5cm近い段差ができてしまう(この車は後席を半分ずつたたむことができるので、半分は座席のままにした状態)。

長さ的には十分でも、この段差を解消しないことには快適に寝ることができない。

そこで私の場合は、2×4材で高さ調整用の枠組みを作り、その上に合板を置いて寝台にし、その上にキャンプ用のマットを敷いてベッドにしている。

合板の下の枠組みは、高さは低いながらも収納スペースとなり、工具やタイヤチェーン、折りたたみチェア・テーブルなどの収納スペースとして活用している。

もっと高さがあれば荷物を入れやすいだろうにと思われるかもしれないが、ワンボックスとは言え軽自動車だから室内高は高くない。

あまり高くしてしまうと中で座れなくなってしまうため、この程度がちょうど使いやすいのだ。

そしてこの枠組みもボードも二分割式で、特に固定もしない(ズレない仕組みにはしてある)ため、至って簡単に退けられるように作ってある。

なぜなら、先程書いた通り、この車はエンジンがリアミッドシップレイアウトであるため、メンテナンスをするときや何かあった時に退ける必要があるからだ。

それだけでなく、全席使う状態にするのも簡単で、シンプルだけどちょっと自慢の設備になっている。

段差ではなく、床が斜めになってしまうような車の場合も、似たような工夫をした方が快適になる。

また、商用車で縦に溝の入った鉄板が剥き出しのような場合も、そのままマットを敷くだけより、マットの下にコンパネを一枚敷くだけでも寝心地は良くなり断熱性も高まって、より快適になる。

ちょっとしたことでより快適で便利になるので、そうした工夫や努力は惜しまない方が良い。

もちろん、同じような仕組みで前席から後ろ全体が平らになるようにして、2人が寝られるようにすることもできるし、自分の使い方に合わせて工夫をするのは良いと思う。

しかし、私の場合はこの中で2人で寝ることを想定していないため、あえて1人用のベッドにし、運転席の後ろ側の後席は座席のままにしてある。

これは3人乗車ができるようにと言うより、自分がここに座ることができると何かと便利だからだ。

それから、この車の後席は便利な両側スライドドアだけど、左のドアを開けると、ドアを開けたらいきなりベッドとなってしまう。

それだと外で履物を脱いでから車内に入らなければならず、脱いだ履物の置く場所をどうするかといった問題も生じる。特に土砂降りの雨だったりしたら、案外厄介だ。

しかし、このレイアウトなら、右後席側を玄関のようにして使うことができる。

ここに一旦座って、そこで履物を脱いでそのまま置いておけるので、「ドアを開けたらいきなりベッド」で生じる問題は全て解消される。

余談だが、靴と書かずに敢えて履物と書いている理由は、自分の生活スタイルが1年の大半と都会に出る時以外は靴ではなくサンダルで、靴と書いてしまうと半分ウソになるからだ。

そんなことはどうでも良いのだが、このイス付き玄関は何かと便利だ。着替えや弁当とかを食べる時にも使えるが、もちろん鞄の置き場とかにも良い。

ワンボックスタイプ以外で車中泊をする場合

ワンボックスタイプではない車(キャンピングカーと軽トラは除く)の場合は、ホンダ「N-VAN」を除き、どれも助手席か運転席を使用しないと就寝スペースを作ることはできない。

その前に一応お断りしておくが、運転席や助手席をリクライニングさせてそこに寝るだけというのは除外し、平らなベッドを作って寝るという話だ。

運転席や助手席をめいっぱいリクライニングさせた時に、後席の座面、またはたたんだ後席とリクライニングさせた前席の背もたれと面とが合うようなら、比較的平らなベッドを作ることが容易である。

だが、上の画像のように面が合わない車の場合は残念ながら快適な寝床を作るのは難しい。

ワンボックス以外の車で車中泊用として選ぶなら、この「リクライニングさせた前席の背もたれと後席と面が合う」が要だと思う。

そこまではクリアしたとして、次に問題となるのが前席の倒した背もたれと座面との間にできてしまう段差(後席にもできてしまう場合がある)だ。

この段差を残したままキャンプ用のマットなどを敷いても、もう一つ快適にはならない。

上の画像は前席ではないが、こんな風にしてクッションや衣類などを置いて極力段差が解消されるようにし、それからマットを敷くと格段に快適性は向上する。

ジムニーは後席をたたんで前席の背もたれを倒すと面が合うようになっており、たたんだ後席は平らだ。

オプションにもアフターマーケット品にも、前席の段差解消用のマットとその上に敷くジムニー専用のベッドキットなどが存在する。

どんな車よりも山奥深くまで入っていけるジムニーだからこそ、車内で就寝したいと思う人も多いはずで、少なくとも現行型は車中泊をすることも想定した仕様になっているようだ。

先程ジムニーは唯一無二の存在と書いたが、構造や性能だけでなく、こういった専用品が豊富なこともジムニーならではだ。

話がジムニー寄りになってしまったが、例えばダイハツのタフトもできないことはないようである。しかし、スズキハスラーの方がこうした使い方をより想定した作りになっているとか、各々特徴があるようだ。

全部つぶさに調べ上げたわけではないので、具体的にどの車がより車中泊に向いているとか、あるいは全く向いていないとか列挙はしないが、車中泊を考えているなら、車を選ぶ際にこうした点についてよく調べた方が良さそうである。

もう一台かなり特殊な車がある。ホンダの「N-VAN」だ。

この車はアクティの後継に当たる商用車だが、構造や生い立ちは全く異なり、大人気のN-BOX(乗用車)がベースになっているFFの車だ。

FFだから、先述のように前席より後ろに180cm(大人が寝られる長さの目安)ものスペースを設けることはできない。

しかし、後席も助手席も床下に収納して運転席以外は全て平らな空間にしてしまうことができ、助手席を床下に収納すると長さが2,635mmもある空間が生まれるのだ。

そしてFFだから床が低く、ハイルーフと相まって、1,365mmもの室内高が確保されている。前席より後ろの長さはワンボックスには及ばないが、この2点においてはワンボックスも敵わない。

しかし、ハッキリ言ってしまうと後席は本当に補助席程度のもので、助手席の座り心地もあまり良いものではないらしい。

とは言え、1人で使うことを基本としているならワンボックスよりパーフェクトかもしれない。

もし次に軽自動車を入手するとしたら、ジムニーとN-VANのどっちが良いか悩ましい。買えるわけでもないし、そんな計画など全くないのに勝手に妄想だけは膨らんでしまう。

車中泊のベッドマットについて

ワンボックスのように完全に平らな床が確保されているのであれば、どんなタイプのマットも使うことができるだろう。

長さが合えば普通の布団や高さの低いコットを使うこともできる。

しかし、座席を使用して寝床を作る場合(ワンボックス以外の軽自動車の場合)は、段差が余程パーフェクトに解消されているのでなければ、少ししっかりしたマットを敷いたほうが無難だ。

逆に言えば、しっかりしたマットを使えば、段差の解消も必要最小限で済ませられる。

例えば、キャンプ用の薄いエンソライトマットや、軽さやコンパクトになることを追求した薄めのエアマットより、エアマットならある程度厚みがあるしっかりしたもの、あるいはサーマレストに代表されるような自動膨張式(現在サーマレストはハイスペックなエアマットに主力を移行している傾向にあるが)のマットなどを選んだ方が良い。

また、N-VANにはオプションでインフレータブルのSUPボードと同じような技術を使ったマットも用意されているが、これはしっかりとした平らな面ができるので、かなりパーフェクトなベッドが出来上がると思う。

その他、快眠するためには窓を塞ぐシェードやカーテンも重要で、寝袋などの寝具選びも大切だ。しかしそこまで話が及ぶと長くなりすぎるか、内容が薄くなるかなので、またの機会に。

軽自動車で快適に車中泊をしたいなら、先ずは何に主眼を置いて車種を選ぶか、そして段差の解消。これに尽きる。

また、狭い軽自動車の車内だから、あれもこれこれもと欲張らずに、極力室内をシンプルにしておくなんてことも、案外軽自動車で快適に車中泊をする上でのコツかもしれない。

ライター:笠原 サタン

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執筆者プロフィール
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