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【シトロエン 5HP バーン・ファインド】シトロンと呼ばれた小型車は何故海を渡ったのか?
日本で発見された5HPの数奇な運命
シトロエン100周年を記念し、開催された「シトロエン・センティナリー・ギャザリング」では1920年初頭に誕生した5HPのバーン・ファインドが展示されました。バーン・ファインドとは、歴史的価値のある車がそれとは知られず、納屋や倉庫などから発見される個体のこと。まさにこの5HPもそんな1台。フランスから北海道に渡った宣教師が初代オーナーにあたり、その後譲渡され不動車となったものを2代目オーナーが自走するまでにレストア。その後、再び不動となっていた個体が家族からシトロエンに譲渡された経緯を持つのです。
サイクルカーと差別化。超小型車5HPの誕生
シトロエン 5HPがデビューしたのは1921年。パリサロンでのワールドプレミアを始まりとしています。5HPはかつてより馴染み深い名で呼ぶなら通称「5CV」。 タイプCとして、安価なサイクルカーが席巻するなか満を持して誕生しました。5HPはヨーロッパでの大衆車普及を目指し設立されたシトロエンにとって、タイプA・タイプBに続く創成時モデル。普通車同等の性能をその小さなボディに組み込み、小型車ながらサイクルカーとの差別化を図ったのです。
違いは敢えてそのままに。5HPバーン・ファインドは文化的遺産
5HPは初お披露目のあと1922年に、2人乗り2シーターとなる小型車・タイプCとして販売を開始。同モデルは排気量856CC、車両重量約550kgの超コンパクトとしながら、エンジンは本格的な直列4気筒SV(サイドバルブ)を搭載し、トランスミッションは3速MT、サスペンションは前後1/4楕円リーフカンチレバー式が採用され、最高出力は11hpを達成。ボディバリエーションはオープンとなる「トルペード」としました。
5HPにはその後ホイールベースを拡大し、3人乗り・3シーターとしたC3が登場。C3には後席シートの両隣にトランクルームを設置し、シートを上から見たレイアウトが四つ葉に見えることから通称「トレフル(=四つ葉)」と呼ばれるモデルを追加。ボディバリエーションもトルペード、カブリオレ、商用バン、トラックとなったのです。
プジョー・シトロエン・ジャポンによると、この5HP バーン・ファインドは、厳密にはフェンダーの形状やインストルメントパネルの素材などがオリジナルとは明らかに違うとのこと。しかし、その違いがシトロエンと日本を結ぶ貴重な自動車文化遺産だとして、敢えてそのままの状態で展示されることとなりました。
シトロエン 5HPのスペック詳細
下記のスペックはプジョー・シトロエン・ジャポンのサイト「シトロエン Origins」より、1922年式5HPのものとしています。
エンジン:直列4気筒SV(サイドバルブ) 最高出力:11hp/2,100rpm
最大トルク:-
ボディサイズ:全長 3,200mm 全幅 1,400mm 全高 1,550mm ホイールベース –
車両重量:555kg
トランスミッション:3速MT
駆動方式:FR
乗車定員:3人
新車時車両価格:-
*本記事の画像は2019年8月に開催されたシトロエン創立100周年イベント「シトロエン・センティナリー・ギャザリング」にて撮影。
※参考文献:オクタン日本版特別編集 “シトロエン オリジンズ 1919-2019”(世界文化社)
- 執筆者プロフィール
- 石黒 真理