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バック禁止?乗客が転んだら交通事故扱い?路線バスの知られざるルールとは
市民の大切な足として親しまれてきたバスは、かつて運転手のほかに車掌が必ず乗車していました。しかし最近は「ワンマン運行」がほとんど。運転手が一人で安全を確保しながら運行するために、実は様々なルールが設けられているのです。
「バスは一人ではバックできない」はホント?
バスが一般道でバックをしている姿を見かけることがほとんどないことから、「バスはバック禁止なの?」という声が、インターネット上などで見られることがあります。
公安委員会がまとめた『交通の方法に関する教則』によると、「車掌が乗務している場合は車掌の誘導を受けること」と記載されていますが、前述の通り昨今の路線バスはワンマン運行がほとんどのため、多くの場合車掌の誘導を受けることができません。では、バスは後退することはできないのでしょうか?
これについて国土交通省の担当者は以下のように話します。
「ワンマン運行している路線バスがバックしてはならないという法律はなく、安全を確認できればバックすることはできます。また、安全が確認できない場所では警笛音(クラクション)を鳴らしてバックすることが定められています」
車掌が乗務している場合は誘導を受けることが原則ですが、ワンマンであっても、運転者が安全確認を行った上で、バックをすること自体は可能であるようです。
現在のバスにはバックカメラが装備されていることもあり、バックが必要な際はカメラの映像を参考にしながらの運転が一般的なようです。
ただし、死角が多いバスでは後退時に重大事故のリスクも高いことから、一般の乗用車以上にゆっくりと安全確認をしながら行うよう、国土交通省では指導しています。
「クラクションOK」「抜け道NG」…路線バス特有のルール
充分注意すればバックができるということがわかったわけですが、実はバスには乗用車とは異なる特有のルールが定められています。
例えば、乗客は「走行中みだりに運転者に話しかけること」が禁止されています。そのため、もし話しかけられた場合、運転手は乗客に停車するまで待つよう促すことが多いようです。乗客の不必要な声がけは安全な運行の妨げになることから、バス利用の際は注意しなければなりません。
また、路線バスに乗っていると渋滞などで全く進まないことがあります。一般の乗用車であれば、裏道などを通って迂回することも視野に入りますが、路線バスではそれが認められていません。
これは、路線バスの走行ルートは国土交通省によって定められており、そのルートを外れて走行することが禁じられているからです。そのため、どんなに渋滞していたとしても、路線バスは抜け道を通ることはできません。
このほか、路線バスはバス停などで発進の際に警笛を鳴らすことがあります。一般車ではむやみに警笛を鳴らすことを禁じられていますが、バスの場合は発進時の警笛が認められています。
その理由は、バスは車体が大きく死角も多いため、ミラーだけでは確認が不十分であるためです。降車した乗客などがバスの近くにいるかどうかを確認するために、発進する際に警笛を慣らして回りに注意を促しています。
さらに、一般の交通事故は車が物や人にぶつかったことを指しますが、バスの場合は車内で乗客が転倒してケガをした場合でも交通事故に該当してしまいます。そのため、路線バスの車内では、「バスが完全に停車するまでお席を立たないようお願いします」といったアナウンスや、注意書きで、厳しく注意喚起が行われているのです。
バスは運行中にやむを得ず急ブレーキをかける恐れがありますから、その際に乗客がケガをしては「交通事故」になってしまうというわけです。
路線バスは私たちの生活には欠かせない公共交通機関ですが、乗用車にはないリスクが伴います。そのため、このようなバス特有のルールを設定することで、乗客が安全に利用できる環境が維持されているのです。
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- 執筆者プロフィール
- 清水 圭太
- 1995年生まれ。自動車やファッション、高級時計などのライターとして執筆活動中。現在の愛車はランドローバー、輸入車が好き。週末はSUVで旅行に行くのが楽しみになっている。