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OHVとは?自動車の歴史で最も古いが今でも愛されるエンジン
OHVの歴史
OHVは、4ストローク・レシプロエンジン最初期に採用されたSV(サイドバルブ)と、現在主流となっているSOHC・DOHCとの間を埋めるバブル駆動方式です。燃焼室の横にバルブがあるSVに対し、エンジンの上にバルブが駆動するため「オーバー・ヘッド・バルブ」と呼ばれます。
OHVエンジンを開発したのは、1903年に創立したアメリカ・ビュイック社。それからまたたく間に自動車をはじめ、航空機、船舶用エンジンに広まり、さまざまなOHVエンジンが製造されました。
日本におけるOHVエンジンの歴史
日本におけるOHVエンジンの遍歴は、戦前に生産されたトヨタ(トヨダ) AA型の3.4L直列6気筒OHVを含めたわずかな数と、航空機エンジンとしてOHVエンジンが生産されました。
戦後直後は資材不足でOHVエンジンを満足にはつくることができなかったため、整備性に優れるSVが主流になります。日本の復興とともにOHVエンジンの普及が進み、1960年代に入ってからようやくすべてのエンジンがOHVに切り替わりました。それからSOHCエンジンに切り替わるまでの約20年間に渡り、数多くのOHVエンジンが生産され続けました。
OHVの構造とSVやSOHC・DOHCとの違い
OHVの特徴は、燃焼室形状の最適化により、SVに比べて非常に効率よくガソリンのエネルギーを取り出せるようになったことです。エンジンヘッド上のバルブを駆動させるために、エンジンブロックからエンジンヘッドまでを長い金属棒によって接続することでバルブに必要な動力を得ています。
クランクの回転を受けて回るカムシャフトの動きを、プッシュロッドとロッカーアームを介してバルブを駆動させることでOHVエンジンは稼働します。しかし、重く長い金属棒であるプッシュロッドは、熱膨張や慣性重量により、高回転ではカムの動きを正確にバルブへと伝えることができません。
ムリに回転を上げるとバルブサージングやバルブジャンプなどの症状を引き起こし、エンジンを壊してしまう恐れがありました。
OHVエンジンのメリット・デメリット
バルブ追従性が低いため、高回転域での稼働は苦手であるものの、低回転域でのエンジン効率はSOHCやDOHCに大きく劣ることはありません。そのため、過度に回転数を高める必要のない実用車向けエンジンや大排気量エンジン、回転変動の少ない航空機や船舶、汎用エンジンとしては十分な性能を発揮します。
また、エンジンヘッドにカムシャフトがないため、SOHCやDOHCに比べてエンジン高が低く抑えられことでコンパクトなエンジンにできるメリットがあります。
OHVの仕組みがわかる動画
SOHCとDOHCの仕組みがわかる動画
アメリカンV8の真髄はOHV バイクならハーレーも
排気干渉により「ドロドロ」と響く排気音が特徴のアメリカンV8エンジンと、ハーレーダビッドソンのV型2気筒エンジンに多く採用されるのはOHVエンジン。
広大国土面積を持つアメリカの道路は直線道路が多いため、豊かな低速トルクでの一定速走行を得意とする大排気量エンジンが好まれます。エンジンを高回転まで回す必要がないため、SOHCやDOHCが普及したのちもアメリカ製のエンジにはOHVが広く採用されています。
OHVは根強いファンが多いエンジン
GM キャデラックや、シボレー コルベット、同じくカマロなど、アメリカの名車と呼ばれる車に搭載されるエンジンはアメリカの伝統を重んじ、現代でもOHVエンジンが搭載されています。とくにシボレー コルベットの低いボンネットは、エンジンヘッドの小さなOHVエンジンでなければ実現することのできない、大切なアイデンティティとなっています。
また、長く生産されたVW タイプ1(ビートル)や、ローバー ミニに搭載されたOHVエンジン、初期のケーターハム スーパーセブンに搭載されたフォード製225E(ケントエンジン)も、いまだ根強いファンが多いOHVエンジンです。
レシプロ航空機のエンジンもOHVが多く、零式艦上戦闘機(零戦)に搭載されたいくつかのエンジンもすべてOHV。車、航空機、船舶を問わず幅広く利用され、歴史上もっとも長く愛され続けるエンジンがOHVです。
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...