更新
「乗用車と同じように減速できると思うな!」車間距離をあけてるトラックの前に割り込んだら…巨額の損害賠償が!?
流れのよい高速道路や幹線道路を走っていると、一般車に比べて明らかにゆっくりとしたペースで進むトラックを目にすることがあります。
前車との車間距離を非常に大きく取っているトラックも多く、一般のドライバーからすると「空けすぎでは?」と思うこともあるかもしれません。広く空いた車間に、次々と一般車が入っていく状況も見られます。
しかし、前方が詰まっているケースは特に、トラックの前に割り込む行為は危険な状況を引き起こす可能性があります。トラックをはじめとする大型車両が大きく車間距離を空けているのには明確な理由があり、急ブレーキの際にはさまざまなリスクが生じるのです。
トラックが止まるまでには長い距離が必要

車両が停止するまでに必要な「制動距離」は、基本的に車重に比例するため、大型かつ大量の荷物を載せたトラックは、止まるまでにより長い距離を要します。
国土交通省発表の「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書」(2019年版)によれば、トラックによる事故のうち約半数が「追突事故」となっています。一方、警察庁発表の「交通事故の発生状況」(2019年版)を見ると、交通事故全体に占める追突事故の割合は約33%です。
相対的に、乗用車に比べてトラックの事故では「追突」が多いことがわかります。原因は「過労による注意力低下」といったドライバー由来の要素も考えられますが、「制動距離の長さ」という車両側の要素もあるといえそうです。
急ブレーキ操作が難しい「エアブレーキ」
上述のように、トラックが車間距離を空ける理由としては、まず制動距離の長さが挙げられます。
さらに、「乗用車とのブレーキ構造の違い」も理由の1つです。通常、乗用車に用いられる「油圧ブレーキ」に対し、トラックなどの大型車に用いられる「エアブレーキ」は、きわめて強い制動力を特徴としています。

制動力の強いエアブレーキは、踏み込む力の調整が難しいことでも知られており、乗用車と同じ感覚でペダルを踏んでしまうと恐ろしいほどの急ブレーキがかかります。
運送業に10年以上携わるトラックドライバーは、「普通の車が『踏んだだけ止まる』のに対して、エアブレーキはラグがあるというか、ドカンと利くイメージです。スムーズに止まるにはかなりデリケートな操作が必要で、急ブレーキをかけてしまうと姿勢が大きく崩れ、かなり不安定な状態になります」と話しています。
実際に衝突まではいかなくとも、トラックは急ブレーキそのものが「コントロール不能な状況」を引き起こしかねません。急ブレーキの際にハンドルを切っていたり、積み荷の重量配分に偏りがあったりすれば、横転のリスクも考えられます。
急ブレーキは積み荷への影響も
実際に事故が起きなくとも、急ブレーキによりトラックの姿勢が大きく崩れれば、積み荷に影響が出てしまう可能性があります。
急ブレーキによって生じる影響について、先のトラックドライバーは「積み荷はワイヤーなどで固定されるのが一般的ですが、重量や形状によっては急ブレーキの際に支えきれなくなる可能性もあります」と話します。
さらに、大きな荷崩れがない場合でも、急ブレーキの衝撃が荷物に影響することもあるようです。トラックドライバーは、「精密機器や危険物、生物など、運ぶもののなかにはデリケートなものもありますし、荷崩れが起きなくても影響が出てしまい、荷主からのクレームにつながることもあります」といいます。
トラックが車間距離を空ける理由は「衝突を避けるために制動距離を確保すること」はもちろん、「積み荷への影響を防ぐために急ブレーキを避けること」にもあるのです。
加害者の常套句「この程度で大げさな」
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...