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超合理主義のトヨタがエンブレムを統一しないのはなぜ?実は明確な世界戦略が
車の前後に装着されたメーカーエンブレムは車の象徴であると同時にメーカーの象徴です。メッキなどで飾られたエンブレムは、よく目立つため広告ともなりえます。
多くの自動車メーカーはそれぞれの企業ロゴで統一していますが、トヨタはエンブレムを統一していません。
トヨタマーク以外のエンブレムを装着している車が多いうえ、同じ車種なのに違うエンブレムが装着されていることもあります。
なぜトヨタはさまざまなエンブレムを使い分けるのでしょうか。
トヨタ車に使われるエンブレムの種類が多いのはなぜ?
昔はメーカー内部のブランドや車種ごとに、その車を象徴したエンブレムが装着されることが多かったものの、現在ではほとんどのメーカーが企業マークで統一しています。
そのなかで、現在も車種によって多くのエンブレムを使い分けるトヨタは異例といえるでしょう。
多数のエンブレムを用意することは、わずかとはいえコストアップに繋がります。厳格なコスト低減を推し進めるトヨタの考えとは矛盾するようにも思えます。
エンブレムの使い分けに関して、明確な基準はあるのでしょうか。
どのチャネルで販売されている車か
エンブレムの使い分けの基準のひとつとなっていたのが、トヨタの複数の販売チャネルです。
他のメーカーが販売チャネルの統合を進めるなか、トヨタは近年までトヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツの4種類のディーラー販売を展開していました。
なかでも1998年に誕生したネッツは、スポーティな車種に特化した専門チャネルであり、他チャネルとの差別化を図るために、Netzの「N」をモチーフにしたエンブレムを装着するようになりました。
代表的な車であるか
特徴的な車種には、歴史やキャラクターに合わせた特徴的なエンブレムを用いるのもトヨタの通例です。
トヨタの代表車種であるカローラは1966年の初代から、車名を表す花冠のエンブレムを用いています。近年はCorollaの「C」をモチーフにしたエンブレムが装着されています。
クラウンは1955年に登場した初代から王冠エンブレムがトレードマーク。1967年に初登場したセンチュリーは鳳凰をかたどったエンブレムが現在も伝統的に用いられています。
その他の車種でも、アルファードには「α」をモチーフにデザイン、ノアには車名の頭文字を表す「N」マーク、エスクァイアには剣と盾をイメージしたエンブレムが装着されています。
さらに生産終了車種の一例を挙げると、エスティマには車名の頭文字を表す「E」、ソアラにはグリフォン、ブレビスにはライオン、初代セリカには飛竜をかたどったエンブレムが装着されていました。
販売チャネルの統合やモデルチェンジタイミングによってさらにややこしく
2020年8月以降、すべてのトヨタの販売チャネルがひとつに統合され、エンブレムもトヨタマークに統一されました。
ネッツでの専売モデルだったヴィッツは、ヤリスへのフルモデルチェンジ時にトヨタマークに変更。同じくネッツ専売のヴォクシーやヴェルファイアも、マイナーチェンジ時にトヨタマークに変更されています。
これにより、同じ車種でも、ネッツ店で販売されていた時代のエンブレム「N」と、トヨタ店で販売が始まった際のエンブレム「T」を付けた車が存在するため、トヨタのエンブレム事情は余計にややこしくなりました。
また、モデルチェンジのタイミングによっては、同じ車種でもエンブレムが異なることがあります。
初代MR2は鷹のエンブレムが装着されていましたが、2代目MR2はT型マークの誕生時期と重なったためトヨタマークに変わりました。タカ科チュウヒのエンブレムが特徴だったハリアーは、販売チャネルの統合で4代目からはトヨタマークに変更されています。
トヨタではエンブレムを柔軟に使い分けている
トヨタによれば、実のところ使用するエンブレムに明確な基準はないそう。
国内での取扱車種が多いトヨタには、多少のコストを掛けてでも車個々の特別感を演出したいという思惑もあることでしょう。
反対に、トヨタ車であることを主張したい輸出モデルのほとんどはトヨタマークで統一されています。
デザインや伝統、モデルチェンジ時期、営業・販売といったさまざまな観点で、トヨタは車種に応じてエンブレムを柔軟に使い分けていると言えるようです。
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- 執筆者プロフィール
- 伊藤友春
- 1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...