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タイヤが外れて凶器に……車のナット、大丈夫?国際規格採用の思わぬ落とし穴
平成22年(2010年)、大型車のホイールが国際規格へと変わりました。しかし切り替わった翌年から、大型車のタイヤ・ホイール脱落事故は、約10年間で12倍近くも増加しています。
最近TV番組でも「国際化の思わぬ影響」として取り上げられ、ネットでも話題になりました。普段使っているものの規格が切り替わる際の注意点などを考えてみましょう。
新規格への切り替えが思わぬ事故を引き起こす
国内で製造・販売される大型車(トラック等)は、排出ガス規制やポスト新長期規制適合車から、新・ISO方式ホイールを採用することになりました。国際基準をクリアし、輸出を増加させるためです。
この切り替えは平成22年(2010年)にスタート。それ以前に製造されたトラックと、以降に製造されたトラックでは、ホイールの形状や締め付けをするナットの規格、ボルト穴の数やPCD(ピッチサークルディアメーター:ホイールのボルト穴を中心に結んだ際に出来る円の直径)が違います。
ホイールナットは、JIS規格では球面座ワンピースという形を使用していましたが、ISO規格に変わり、平面座ワッシャー付きツーピースという形に変わりました。
ISO方式のナットを使用する場合、ワッシャーとナットの隙間に潤滑剤を塗布しなければなりません。しかし、この作業はJIS規格ナットを使用していた際には無かったため、取り付け時に塗布を失念してしまうことがあるといいます。
すると、ナットの締め付け力は約半分に低下し、車体からホイールが外れやすくなってしまいます。この作業が周知徹底されていないことから、国際規格のISO基準となったナットを使用し始めた2010年以降、大型車のタイヤ・ホイール脱落件数は、増加傾向にあるのです。
ホイールの仕様も微妙に変わったことで誤装着も
ホイールの穴の数も、JIS方式では22.5インチホイールが8穴なのに対し、ISO規格では10穴です。PCDは19.5インチホイールで285mmだったものが275mmへ、22.5インチホイールでは285mmだったものが335mmへ変わっています。
これにより、車体側はISO規格なのに、誤ってJIS規格のホイールを取り付ける(またはその逆)というトラブルも起きているようです。
19.5インチホイールでは、ボルト穴数は同じもののPCDの数値が小さいため、ホイールとホイールボルトの間に隙間ができます。この状態でJIS規格のホイールを装着すると、十分な締め付け力が得られずに、ホイールに亀裂が生じたり、車輪脱落事故の原因になったりするのです。
国際基準と異なるモノ、もっと身近なところにも
IS規格とISO規格の混在は、もっと身近なものでも見られます。例えば、クルマのウィンカーレバー。日本車はほとんどが「右」に付いています。 これはJIS規格で定められているためです。
しかし、国際基準のISO規格では「ハンドル位置の左右に関わらず、ウィンカーは左側、ワイパーは右側」と定められています。このため、輸出される日本車では、右ハンドル車でも左ハンドル車でも、原則としてワイパーが右、ウィンカーが左という、日本の当たり前とは逆の配置になっているのです。
輸入車の中には、JIS規格とレバーの位置が逆の車が多くあります。これは、国際規格のISO規格に従っている証です。
このように、車などの工業製品の中には、国際規格と国内規格の多くが混在しています。現在は、輸出車では位置を逆にして対応していますが、国際的な動きへ同調してISO規格へ統一という動きが出てくれば、左にウィンカーが配置される右ハンドル車が日本国内に増える可能性もあるでしょう。
世界全体をターゲットに販売を拡大させる日本の自動車メーカーだからこそ、国内規格よりも国際規格を優先する動きが、2010年の大型車のように出てくる可能性は否定できません。
大型車のタイヤ脱落事故のように、人命に関わるケースもありますので、国際規格への統一の際は広く周知をしてもらいたいものですね。
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- 執筆者プロフィール
- Red29
- 1980年代生まれ。国産ディーラーでの営業職として働き、自動車関連の執筆者として独立。ユーザー目線に立った執筆を心掛けています。愛車はトヨタプリウス。ホットハッチに代表される、小規模小パワーのクルマが...