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車中泊で快適な島旅をするならカーフェリーがおすすめ?!

キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です


以前私はクルマで奄美大島へよく行っていた。

クルマでと言っても、奄美大島まで橋が架かっているわけではないから、当然カーフェリーを利用してだ。

こういった遠い島へ愛車と共に渡る旅は、船旅と車中泊旅の両方を堪能することができて最高だった。

「最高だった」と過去形になっている理由は後で説明するとして、この記事ではどこそこまでの料金はいくらとかいった情報などではなく、カーフェリーについての基本的なことと、船旅と島旅の魅力などについてお話ししたいと思う。

カーフェリーの種類や役割

大方の人がご存知のことと思うが、カーフェリーとは車両だけとか乗客だけではなく、乗客と車両を同時に運搬することのできる船のことだ。

しかし、一口にカーフェリーと言っても、航路は数km程度の短距離を繋ぐものから数100kmに及ぶものまであり、船の大きさも小さめの車数台を載せられる程度の規模のものあれば、総トン数16000トン超、旅客定員が700名超で、車両積載台数は乗用車以外に大型トラックを150台以上積めるような巨大な船もある。

このように規模は千差万別だが、当然ながら役割や性質のようなものも大きく異なる。

まずはそれを整理してみよう。

(一社)日本旅客船協会の資料によると、日本のフェリーの現況は、主な中長距離フェリーが14社 19航路 51隻、主な短距離フェリーが13社 12航路 28隻となっていて、これだけ見ると中長距離を航行するフェリーの方が航路も船の数も多いことになってしまう。

しかし、「国内フェリー全体」の数字は141社 163航路 285隻となっていて、「主な」ではないフェリーの方が圧倒的に数が多いようだ。

実際に自分が利用したことのあるフェリーでこの一覧に載っていないものが幾つもあり、例えば十分にメジャーな存在なので、どちらかの「主な」には含まれていそうな青函フェリーや津軽海峡フェリーもこの一覧には載っていない。

なので確かなことは言えないが、普通に考えて「主な」から洩れている中長距離フェリーが短距離フェリーより多く存在するとは考えにくい。

「主な」ではない114社 132航路 206隻の大半は、おそらく短距離或いは中距離程度のフェリーではないかと想像できる。

短距離・中小規模のフェリーは、例えば瀬戸内海の島々などで暮らす人にとっては生活に密接に関わる(通勤通学に使われている)存在だが、都会や海から離れた地域に住んでいる多くの人にとってはあまり縁のない存在で、そんなにも多くの中小規模のフェリーが全国各地で活躍しているとは想像がつかない人も多いのではないかと思う。

ところで、その短距離フェリーには、橋の架かっていない離島へ渡るためのものと、陸路を行くより距離をショートカットして、時間・燃料・運転手の体力などをセーブする役割を担うものとがある。

後者の代表的なものとしては、三浦半島の久里浜と房総半島の金谷を結ぶ東京湾フェリーや、愛知県の伊良湖と三重県の鳥羽を結ぶ伊勢湾フェリーが挙げられる。

この二つには距離をショートカットするだけではなく、東京近郊や名古屋近郊といった非常に道路が混雑するところを通らないで済ます役割もある。

どちらも利用したことがあるが、東京湾アクアラインの通行料金は2009年にETC割引で大幅に値下げされる前まではボッタクリとも思えるような金額だったため、それまでは房総半島に行く(神奈川県に住んでいた頃)のも、房総半島から出る(房総半島に移り住んだ後)のも東京湾フェリーがメインの手段(私は陸路伝いに房総南部から北上する機会が案外少ない)だった。

しかし、道路の整備が進んだり通行料金が安くなるのは大変良いことではあるのだが、それによって東京湾フェリーも伊勢湾フェリーも優位性が少々薄らいでしまったことは否めない。

便利と引き換えに申し訳ないような寂しいような気もする。

それどころか、利用者数の減少で廃止になどなってしまったら困る。

旅のコースや行き先によっては依然フェリーの方が陸路を行くより合理的(私は故郷の神奈川県南部に用があるときは今でも基本的に東京湾フェリーを利用している)なこともある。

こういったフェリーの利用をあまり考えたことのなかった人も、便利なフェリー存続のために積極的に車中泊旅での利用を考慮に入れていただきたいと願う。

次に、前後が逆になるが前者の橋の架かっていない島へ渡る近距離フェリーについて。

小豆島・豊島・直島など、比較的近距離だけどフェリーを利用しなければクルマでは行けない幾つかの島へ私もクルマと一緒に渡ったことがある。

これらは離島とは言え感覚的には東京湾フェリーや伊勢湾フェリーに近く、船旅をした感は希薄だ。

しかし、これはこれで楽しいので、中小規模の離島フェリーを利用しまくる車中泊旅なんてのも面白いのではないかとも思う。

次に、どちらかと言うと今回のメインのテーマの長距離フェリーについて。

長距離フェリーにも二つのタイプがある。

一つは船でしか渡れない遠い島と日本列島のメイン四島のいずれかとを結ぶ船

もう一つは、陸路で行けるところを車両も人も海上輸送してしまう船だ

四国・九州は本州と橋で繋がっているので、本州~四国・九州を結ぶ船もこれに該当する。

こうした船を利用する最も大きな理由や利便性について、運送業は別として主にレジャーユースに当てはめて考えてみると、それは「運転手が楽をするため」であると思う。

コスト的に考えると、船会社や航路、車両サイズや燃費によって一律には比較できないことではあるのだが、自走した場合の燃料代+道路の通行料金より、船賃の方が高いケースの方が多いと思う。

しかし、自走した場合は例えば眠気覚ましにコーヒーや栄養ドリンクなどをたくさん飲んでしまったりして、乗船中より余計な出費をしてしまう可能性も低くはない。

細かなことのようだが塵も積もればだ。

そして、長距離フェリーは「宿代込み」でもあり、風呂もある。

車中泊ではなく宿に泊まったり温泉や銭湯に行ったとしたら、そういった出費も加算して比較することになる。

案外こういった諸々の出費を加算していくとどっちの方が出費が多くなるか怪しくなってくる。

時間についてはどうだろうか。

休憩なしに走行した場合の時間と比較すると、距離をショートカットするためのフェリーとは違って、長距離フェリーでの移動の方が余計に時間がかかるケースの方が多いと思う。

しかし、休憩や睡眠の時間、或いは渋滞に巻き込まれた場合の時間なども含めたものが本当の移動時間だ。

それと比較すると逆にフェリーの方が少ない時間で済むことも十分あり得る。

また、家に居ようと車中泊の旅の最中であろうと、基本的に睡眠時間は同じだけ必要だ。

寝ている間に目的地へ向かって前進してくれる船は、時間を有効に使うことができて合理的であるとも考えられる。

そして、睡眠時間を削って(少々無茶をして)運転しても疲労が溜まってどこかでその皺寄せを解消しなければならなくなる。

このように考えると、一見自走するよりコストも時間も余計にかかりそうな長距離フェリーの方が合理的である可能性は十分にある。

関東から九州へ自走したときは途中広島や九州の知人のところに寄り道したりして、それはそれで旅として楽しかったのだが、もう一つ忘れてはならないのは、長距離フェリーは船旅が楽しめることだ。

これは船が苦手な人には当てはまらないことだが、個人的にはこれも長距離フェリーの大きな魅力の一つとなっている。

九州・四国どちらへも自走とフェリーと両方経験しているが、必ずしもどちらの方が合理的だったとか、どちらの方が楽しかったということもなく、結局甲乙つけ難いようだ。

ところで、九州も四国も本州とは橋で繋がっているので、日本列島のメイン四島のうち、唯一橋やトンネルで道路が繋がっていない(鉄路は繋がっているが)のは北海道のみだ。

そして、太平洋側には茨城の大洗や仙台と北海道、日本海側には舞鶴・敦賀・新潟と北海道を結ぶ長距離フェリーがある。

しかし、距離的にはもっと近い青森や八戸と北海道を結ぶフェリーもあるので、北海道~本州間の長距離フェリーは、意味合いとしては運転手の負担を軽減するためのフェリーに近いものになる。

それでは、長距離フェリーでしか人車共に行くことのできない場所はどこかと言えば、奄美・沖縄のみ(小笠原への定期船はカーフェリーではないので、ここでは除外)だ。

私は奄美大島へは4車種で行ったことがあるから、最低でも4往復はしていることになるが、1車種を除いてどのクルマも複数回行っているので、何度行ったか回数は正確に覚えていない。

そして、以前奄美・沖縄への航路は東京・阪神・鹿児島からと3航路あり、そのどれも利用したことがあるのだが、現在奄美・沖縄へフェリーで行ける唯一の方法は鹿児島からのみとなってしまった。

冒頭で「クルマで奄美大島へよく行っていた。」と過去形になっていた理由はこれだ。

最後に残った航路が、関東からは最もハードルの高いものとなってしまったからだ。

以前は東京の有明からその名も「フェリーありあけ」という船が出ていた。

私も何度か利用したことがあるのだが、この船は2009年に三重県沖で座礁し廃船となってしまった。

その後代替船で運行していた時期もあったようではあるけど、この航路は残念ながら2014年に旅客運行を止めてしまった。

しかし、私が最も多く利用したのは阪神~奄美・沖縄航路だ。

有明から直接奄美まで行く船賃より、大阪まで陸路を走り、大阪南港からフェリーに乗った場合の合計金額の方が安かったからだ。

ところが、非常に残念なことにこの航路も知らぬ間に2017年に旅客運行を止めてしまっていたため、私が利用したのは2013年が最後になってしまった。

東京より大阪や尼崎辺りの方が奄美出身者の人口は多いよう(と聞く)で、そのためか「フェリーありあけ」より阪神航路の船の方が旅客の数も多くて船内の設備や雰囲気も、より客船らしかった。

そして、奄美への里帰りで利用する人の率が高かったようで、話をすると面白い人が多かったことも魅力だった。

昔の長距離列車などもそうだったが、船旅をしていると話しかけてくる人や、1人でビールなど飲んでいると一緒に飲もうと声をかけてくる人が必ずいる。

私は自分から進んで人に話しかけるようなタイプでもないが、それを嫌ったり拒むタイプでもない。

普段の生活ではまるで接点のないような人と長時間会話をしたり一緒に酒を飲む機会ができてしまうのも船旅の面白さの一つだと思っている。

考えてみたら、普段の生活の中で長時間会話をする人のタイプなんてのは案外限られていて、仕事や趣味など何かしらの共通点のある人が殆どだ。

近くにいても実は異次元の世界で暮らしているような人の方が圧倒的に多い。

船内というのは、強いて言えば同じ船に乗ったことだけが共通点のような人達と、無理にではなく会話をすることになるような稀な環境でもあるのだ。

ところで、これは余談だが、鹿児島航路で私の乗ったことのある船の一つに「フェリーなみのうえ」(この航路を運行している船は一隻ではない)というのがあった。

その船は引退後に韓国へ渡り、セウォル号と名を変えて再利用されていたことを後から知った。

しかし、その名前の船の乗客がとんでもなく悲惨な目に遭ったことはまだ記憶に新しい。「あの船が」と思うとなんとも言えない気分になる。

離島を自分のクルマで旅する利点と魅力

次に離島へ渡る長距離カーフェリーの実利的な魅力について。

最大の利点は、普段の車中泊旅と同じことが遠い島でできてしまうことだ

例えば、私が島に渡る目的はカヤックやSUPでツーリングしたりサーフィンをしに行くことで、普段車中泊をする多くの場合の目的もこれと同じなのだけど、荷物が大きいから自分のクルマが一緒だと本当にありがたい。

飛行機で島へ行く場合は、水上で使う乗り物は通常どれか一つに絞らなければならないが、ツーリングするつもりでフォールディングカヤックやツーリング用のSUPのボードを持って行ったら良い波に巡り合ってしまったり、逆にサーフィン用のSUPのボードを持って行ったら全く波に恵まれないなんてことは案外ありがちなことだ。

そして、長く居れば状況に応じて両方楽しみたくもなる。

自分のクルマと一緒なら、どっちも無理せず持って行くことができる。

それに加え、車中泊をする皆さんなら周知のことだが、慣れた自分の部屋を運んでしまえることでもある。

宿泊費が全くかからないか、大幅にセーブすることができることを意味する。

これは滞在期間が長くなる程大きなアドバンテージとなり、少し長い旅だと「飛行機+レンタカー+たまに宿泊まり+宅配便」より確実に安上がりになってしまう。

何事もやる気次第

関東の人が奄美・沖縄へ自分のクルマと共に行くことは、私が頻繁に行っていた頃より難易度が高くなってしまったことは前述の通りだが、自分のクルマと島を旅する方法はカーフェリーを利用する以外にもなくはない。

クルマだけ貨物船で送って、人間は飛行機で行く方法だ。

実はその方法で、かれこれ2ヶ月以上夏の南国奄美で車中泊旅を堪能している知人がいる。

その人物は30代半ばの女性で、私のような危うい自由業・自営業者でもなければフリーターでもなく、ちゃんと定収入のある会社員だ。

仕事はどうしているのかと言えば、リモート会議とかで今のところなんとかなっているようだ。

コロナ禍の受難を逆手に取って利用しているようなことになっている。

そして、彼女はなんと自動車免許を取得してから10年以上ほぼペイパードライバーだったにも関わらず、私や私の周囲の人達の影響を少なからず受け、今年の確か4月か5月頃に突然ハイエースを購入してしまったばかりなのだ。

しかも現行の200系ではなく、見た目を気に入って100系だ。

最初のうちははっきり言うと運転が上手くないと言うより、具体的に言えば私が半日で進む距離を車内で一泊入れて進むようなペースで移動しながら車中泊と運転の経験を重ね、車内も次第に自分でカスタマイズしていった。

そして、愛車の100系ハイエースを家にして、この夏は奄美で暮らすことを決意(奄美には大島以外に徳之島なども含め以前にも行った経験がある)し、とっとと行動に移してしまったのだ。

ここで「費用はいくら?」「具体的にどうやってやるの?」のような質問はナンセンスだ。

やる気のある人は調べればわかるようなことをやたらに人に訊こうとなどしない。さっさと自分で調べて、思い立ったら実行に移してしまう。

そんなものだ。

また、彼女の行動を見ていると、夏の車中泊の暑さ対策について「標高の高いところや涼しいところに行くこと」などと真顔でアドバイスしているベテランて?と思えてくる。

彼女は「何処か」に行きたかったのではなくて、夏の南国奄美に行きたかったのだ。

だから、暑くて汗疹だらけになろうと、ネズミに網戸を齧られようと、そんなことなどものともせず(と言うとさぞかし逞しそうな人を想像してしまいそうだが、見た目は至って普通の快活そうなタイプの女性)、やりたかった南国での車中泊生活を淡々と実行し、堪能している。

そんなだから、あちこちのシマ(奄美では集落のことをシマと言う)にすぐに多くの知り合いができ、どこへ行っても可愛がられていた。

島の旅を楽しむ上で非常に重要だと思うことの一つは、自分と世間の間に壁を作ってしまったり、自分達だけの殻に閉じ籠らないことだ。

媚を売るような態度をとる必要など全くないが、普通に楽しく人と接していればシマの人達は優しく受け入れてくれる

その方が何倍も島の旅は楽しくなると私は思う。

これぞリアルなVANLIFE

自慢するわけではないが、キャンプ歴40年以上にもなると、アウトドアや車中泊関連の写真や文章を見れば、ウソくさいものとリアルはすぐに見分けがつくようになってしまった。

人も乗せて散らかり気味の車内のこの写真、普段はもう少し綺麗にしているのだけどと、本人は少々心外に思うかもしれない。

しかし、これぞリアルなVANLIFEの車内だ。

ライター:笠原 サタン

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執筆者プロフィール
車旅情報Webマガジン「DRIMO」
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