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自動ブレーキ義務化!既存車、中古車はどうなる?

あなたは、運転中に『ヒヤリハット』の経験はありますか?例えば、クルマの運転中、急に信号の横断歩道で目の前に子どもが飛び出してきたなんて経験があるでしょう。急ブレーキをかけて危険を回避してつらい気持ちをしたのではないでしょうか。
今回は、普及が進んでいる自動ブレーキについて、法律による義務化も含めて紹介していきます。2021年11月より段階的に『衝突被害軽減ブレーキ』の義務付けが開始予定となる点についても触れて説明しますので、ぜひ読んでみてください。
目次
自動ブレーキ義務化とは?

最初に『自動ブレーキ義務化』について説明します。
2019年12月17日、国土交通省は『衝突被害軽減ブレーキ』を、世界で初めて段階的に新車販売されている乗用車に装備を義務付ける方針を2021年11月より開始する予定であると公表しました。
事故の撲滅が第一目的
赤羽一嘉・国土交通大臣による記者会見では今回の政策について以下のコメントが述べられています。赤羽国土交通大臣によって自動ブレーキ義務化の目的が掲載されているのです。
- 高齢者・子どもが被害を受ける事故の撲滅
- 自動車事故を無くし安全・安心な社会を構築する
- 車両の安全装置は一定の限界があり、ユーザーの過信対策に係る取り組みを進める
- 安全基準を国際標準化していきたい
(引用) 国土交通省公式サイト『赤羽大臣会見要旨』(2019年12月17日)
衝突被害軽減ブレーキの義務付けを行う最大の理由は、『交通事故の撲滅』です。高齢者や子どもが被害を受ける事故がいまだに後を絶たない現代、撲滅することで安心し安全に暮らせる社会を作る目標を掲げています。また、世界に先駆けて日本から安全基準を提示し、国際標準化を図りたい意図があるのです。
事故件数と死亡者数はいまだに多く存在する
交通事故総合分析センターの統計によると2019年の交通事故件数と死亡者数は以下の通りです。同年中の1月~12月までの12ヶ月間で合計した数を表記しています。
項目/年度 | 2018年 | 2019年 |
発生件数 | 43万601件 | 38万1002件(-11.5%) |
死亡者数 | 3,532人 | 3,215人(-9.0%) |
(引用元)公益社団法人交通事故総合分析センター『交通事故発生状況』
2019年は交通事故発生件数が前年より11%、死亡者数が9%減少しています。しかし毎年、事故発生件数は38万件、死亡者数は3000人以上出ているのが現状です。自動ブレーキ義務化を進めるにあたり、交通事故件数と死亡者数の減少は重大な課題となります。
自動ブレーキ義務化の背景は国際基準の成立

なぜ、自動ブレーキの義務化が進められているのでしょうか。理由として、「国際基準の成立」が挙げられます。2019年6月28日、国際連合が開いている『国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)』の第178回会合にて、乗用車などの衝突被害軽減ブレーキの国際基準が成立したのです。
国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)とは?
国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)とは、国際連合が主宰している自動車の協定規則を作っている委員会です。
委員会は以下の目的で運用されています。
- 安全で環境性能が高い自動車を普及させる
- 自動車の安全・環境基準を世界で調和させる
- 国際的な自動車の相互承認の推進
(引用)国土交通省『自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の概要 』
安全かつ環境性能が高いクルマを普及させ、地球温暖化の防止や高齢者・子どもが巻き込まれる事故を防ぐための話し合いが行われています。ヨーロッパ各国や日本、アメリカ、中国などの主要国から、ISO(国際標準化機構)などの非政府組織もメンバーに加わり相互連携を図っているのです。
衝突被害軽減ブレーキの国際基準は?
衝突被害軽減ブレーキの国際基準は、以下の要件でまとめられて試験方法が定義されています。
- 静止車両、走行車両、歩行者に対して試験を行い、所定の制動要件を満たすこと。
- エンジン始動のたびに、システムは自動的に起動してスタンバイすること。
- 緊急制動の0.8秒前(対歩行者の場合、緊急制動開始)までに警報すること。
(引用元)国土交通省『乗用車等の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)の国際基準』
「静止車両に時速40kmで走る車両が追突しない」「横断している歩行者に時速30kmのクルマが衝突しない」などの試験項目が存在します。
義務化であなたのクルマはどうなる?

自動ブレーキ義務化に伴い、あなたが所有しているクルマはどうなるのでしょうか。
『衝突被害軽減ブレーキ』の装備義務化はいつから始まるの?
以下、『衝突被害軽減ブレーキ』の装備義務化が始まる時期を表にまとめてみました。
国産車 | 輸入車 | |
新型車 | 2021年11月 | 2024年7月 |
継続生産車 | 2024年7月 | 2026年7月 |
現状、「2021年11月以降に発売される新車」に装備の義務付けが予定されています。自動ブレーキを装備していないクルマが走行できなくなる法律が定められない限り、現在所有しているクルマは公道の走行が可能です。
日本の新車生産台数の60%以上に自動ブレーキが搭載されている
国土交通省の集計によれば、2016年時点で、日本で生産された新車の66.2%に『衝突被害軽減ブレーキ』が搭載されていると報告されています。

2013年の15.4%から右肩上がりで増加し、今では60%を超える新車に、自動ブレーキが装備されているのです。新車を購入すれば3台に2台は自動ブレーキに対応しています。
『衝突被害軽減ブレーキ』は元から装備されていなければ手に入らない
しかし、衝突被害軽減ブレーキは現時点で使用しているクルマに後付けができる「キット」が販売されていません。衝突被害軽減ブレーキが装備されているクルマは、新車もしくは装備されている中古車の購入を検討しましょう。
自動ブレーキ搭載車を買うメリットは?お得な補助金も

衝突被害軽減ブレーキ搭載車を購入するメリットを紹介します。現在、国土交通省と経済産業省による『サポカー補助金』交付が実施されています。
『サポカー』とは?
『サポカー』とは、高齢ドライバーの運転中交通事故を防止する対策の一環として、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い加速抑制装置などを装備しているクルマを指しています。
サポカー補助金のポイント
サポカー補助金のポイントとして以下が挙げられます。
- 「衝突被害軽減ブレーキ」「ペダル踏み間違い急発進等抑制装置」が搭載されたクルマが安く購入できる
- 登録車・軽自動車問わず対象となる
- 最大10万円の補助金額が得られる
(参照1)経済産業省『サポカー補助金の対象となる車種・グレード等について』
(参照2)経済産業省『補正予算案に「サポカー補助金」が盛り込まれました』
「衝突被害軽減ブレーキ」「ペダル踏み間違い急発進等抑制装置」が搭載されたクルマを購入する際に購入補助が下りるのです。普通乗用車などの登録車と軽自動車が対象となります。
例として、「衝突被害軽減ブレーキ」「ペダル踏み間違い急発進等抑制装置」が両方装備された登録車を購入した場合、最大で10万円の購入補助金が支給され、安くクルマが購入できるのです。
マイカーや中古車でも対策方法はある!『ペダル踏み間違い防止装置』とは

自動ブレーキが搭載されていないマイカーや中古車でも、『ペダル踏み間違い防止装置』を装着すれば、交通事故防止対策が可能です。
『ペダル踏み間違い防止装置』の特徴
ペダル踏み間違い防止装置の特徴を簡単に紹介します。
- 3つの『ペダル踏み間違い防止装置』の種類がある
- 発進時のペダル誤操作による事故被害を抑える効果がある
- 政府および各地自治体にて「補助金制度」が設けられている
(参照1)国土交通省『後付け急発進等抑制装置の先行個別認定結果を公表します』
(参照2)経済産業省『補正予算案に「サポカー補助金」が盛り込まれました』
アクセルとブレーキの踏み間違え事故は、交通事故総合分析センターの集計によると、75歳以上のペダル踏み間違い事故割合が全事故件数の3%に該当するなど、高齢になるにつれて、割合が高くなりつつあります。
クルマにペダル踏み間違い抑制装置を装備することにより、誤ってアクセルを踏んでしまった際の急発進急加速を防ぎ抑える効果が期待できるのです。コンビニエンスストアの駐車場の発進時など実際の事故例を検証して、装置が開発されています。事故を起こすパターンを想定して作られているので、安全と安心を得る手助けをしてくれるのです。
3つの『ペダル踏み間違い防止装置』の種類がある
国土交通省が認定している『ペダル踏み間違い防止装置』は、3種類の認定基準があります。
認定対象の種類 | 機能例 |
障害物検知機能付きペダル踏み間違い急発進等抑制装置 | 発進時、前方または後方の壁などの障害物を検知しているときに、ランプとブザーでお知らせし、万一、その状態からアクセルペダルの強い踏み込みを検知した場合には、エンジン出力を抑制する装置。 |
ペダル踏み間違い急発進等抑制装置 | 前進・後退を問わず、異常と定義したアクセルセンサーの信号変化を検出したとき、アクセル全閉時相当の疑似信号を出力し、加速を抑制する装置。 |
ペダル踏み間違い防止装置 | 踏めばブレーキ、足を横にずらしてアクセルを操作できるようにしたもので、「踏む動作」と「開く動作」という異なる動きで操作することで踏み間違いを起こさないようにする装置。 |
(引用元)国土交通省『後付け急発進等抑制装置の先行個別認定結果を公表します』
発進時のペダル誤操作による事故被害の軽減効果がある
万が一、ブレーキペダルではなくアクセルペダルを踏み込んでしまった場合、通常では衝突事故を引き起こすでしょう。しかし、ペダル踏み間違い防止装置を装着していた場合、エンジンの出力を抑えて急発進を防止し、事故被害を軽くできる効果があります。
ただし、装置には作動の限界があり、作動条件も製造メーカーによって違いがあります。よって、ドライバーは取り付けを担当した業者や販売店より装置の使用方法を確認し、安全にクルマを取り扱う必要があるのです。
政府および各地自治体にて「補助金制度」が設けられている
政府のみでなく、日本全国の自治体にてペダル踏み間違い防止装置の後付け導入費用を補助する制度が設けられている場合があります。簡単な事例の紹介です。
- 国土交通省『サポカー補助金』
- 東京都『高齢者安全運転支援装置設置促進事業補助金』
- 愛知県豊田市『後付け安全運転支援装置設置費補助金』
(参照1)国土交通省『後付け急発進等抑制装置の先行個別認定結果を公表します』
(参照2)経済産業省『補正予算案に「サポカー補助金」が盛り込まれました』
(参照4)愛知県豊田市『後付け安全運転支援装置設置費補助金』
自動ブレーキ義務化のまとめ
ここまで、自動ブレーキの義務化について紹介してきました。以下、簡単におさらいをしましょう。
- 国連で自動ブレーキの国際基準が成立した
- 2021年11月以降発売の新型車は自動ブレーキが義務化される方針が定まっている
- 自動ブレーキは既に新車生産の60%の割合を占めている
- 自動ブレーキなど搭載車の購入促進施策が始まっている
国際基準が成立し、自動ブレーキの装備が義務化されることで、事故の減少を図る方向へ動きつつあります。既に日本の新車生産台数の60%に自動ブレーキが搭載されている点を考えても、普及は容易となっているのです。
『サポカー補助』の施策が始まり新車への購入促進が進む中、より安全な交通社会を作るために自動ブレーキ義務化が大きく貢献するでしょう。ただし、装備が付いているとはいえ、ドライバーにも安全運転の義務は変わりなく存在します。日々の運転で安全運転を心がけて、快適な交通環境を作りましょう。
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...