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日本がMaaS先進国と肩を並べるには?現状と課題について

「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」は、鉄道やバス、タクシーなどの移動手段を1つのサービスとして束ねた新しい移動の考え方です。「ICT(情報通信技術)を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段による移動を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ」ことを目指しています。
2016年にフィンランドの「MaaS Global」社はMaaSプラットフォーム「Whim」を開発し、実証実験を経て、首都・ヘルシンキ市でシステムの実用化に成功。Whimの利用者により、公共交通の利用シェアの増加につながっています。
2019年4月、日本の「三井不動産」はMaaS Global社へ出資し、街づくりにおけるMaaSの実用化へ向けた協業契約を結びました。2020年には千葉県・柏の葉でWhimを使用した実証実験を予定しています。
今回は、MaaSについて、日本が先陣を切っている国々と同様に実用化を達成するには何が必要でしょうか。このページを読んでいる皆さんに紹介します。
(参照元)
国土交通省「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)について」
三井不動産「世界初の本格的なMaaSプラットフォーム「Whim」と街づくりにおけるMaaSの実用化へ向けた協業で契約締結」
三井不動産「自動運転システムの研究開発を行う先進モビリティ株式会社へ出資」
MaaS実用化を目指す日本の現状は

MaaSの実用化を目指す日本の現状を「地域公共交通」の観点から紹介します。国土交通省によると、地域公共交通は苦しい現状に悩まされているのです。
- 地域公共交通の輸送人員は軒並み大幅な下落傾向にあり、全国の6割の事業者が赤字。
- 特に地方部のバス事業の収支率は、低い水準。
- 低賃金、長時間労働などにより、自動車運転者を志望する人が減り、人手不足が深刻化。
(引用元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
地域交通の輸送人員は「都市圏」と「その他」問わず、軒並み大幅な下落傾向にあります。特に、地方は下落が顕著であり、2000年度を100%の割合で置くならば、2016年度は2000年度と比較し約76%まで落ち込んでいるのです。
同時に、「地方路線の乗合バス事業」は収支率が低く、100%を基準とすると約88%にとどまっています。よって、日本全国のバス事業者の6割以上が赤字運営に苦しみ、「民事再生法」「会社更生法」を受けるなどの法的整理を受ける会社が現れているのです。
また、バスやタクシーなどを対象とした自動車運転事業の人手不足が深刻であり、自動車運転有効求人倍率は2016年度に「2.33倍」を記録。全職業平均の「1.22倍」の2倍に近い結果を示しています。
(参照元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
MaaS実用化を目指す日本の課題とは

MaaS実用化を目指す日本の課題は何でしょうか。都市と地方では交通の現状や課題が異なっており、同じ方法では解決が難しいようです。国土交通省では、「あらゆる人々の豊かな暮らし」を目指して、「日本版」のMaaSを作る必要があると示しています。
都市の場合
●都市の課題
- 日常的な渋滞や混雑
(引用元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
大都市では「渋滞」の問題を解決しなければなりません。大都市や大都市近郊では、人口が多くて密度が高く、鉄道や自動車を利用した移動が中心です。しかし、同時に日常的な渋滞や混雑を招いています。
大都市や大都市の近郊でMaaSを実用化するには、以下の目的を持って取り組まなくてはなりません。
- 全ての人にとっての移動利便性の向上
- 日常的な混雑の緩和
- 特定条件下での局所的な混雑の緩和解消
(引用元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
すべての人々が移動の利便性向上を受けられるように取り組む必要性があります。加えて、日常だけでなくイベントや天候に左右されないような渋滞混雑のない環境を作ることが求められているのです。
地方の場合
●地方の課題
- 自家用車への依存
- 地域交通の衰退
- 運転免許返納後の高齢者、自家用車非保有者の移動手段不足
(引用元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
地方でMaaSを実用化するには、以下の目的を持って取り組まなくてはなりません。
- 生活交通の確保・維持
- 地域活性化に向けた生活交通の利便性向上
(引用元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
自家用車へ依存しなければならない環境下で、生活交通の確保や維持を目指さなくてはなりません。鉄道やバスの採算性低下に伴い、自動車運転免許返納後の高齢者や自家用車を所有していない人の移動手段が不足している問題があります。地域の活性化を同時に図るべく、生活交通の利便性向上にも目を向ける必要がありそうです。
(参照元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
MaaS実用化に向けて日本が取り組むべき施策

MaaSの実用化に向けて日本が取り組むべき施策を、国土交通省が資料で示している内容に沿って紹介します。
- 多様な事業者間のデータ連携の実現
- 交通事業者同士の連携・協働
- 住民視点での持続可能なサービスの実現
- 持続可能な社会を目指す都市・交通政策との整合化
(引用元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
MaaSの実用化にいち早く成功したフィンランドでは、MaaS Global社が提供するプラットフォーム「Whim」を使用し、旅客運送などの事業者が主要なデータについてオープンに開放することを改正した「交通事業法」で示しています。
データがオープン化されることで、利用者側は1つのプラットフォームで移動手段の情報を検索し、予約から支払い決済までが一括で可能。事業者側もデータを提供することにより低迷している採算性の向上につなげられる可能性があります。
MaaSを実用化した効果は、フィンランドの「Whim」が証明。首都・ヘルシンキにて2016年よりWhimの使用がスタートしています。Whimの使用を始めたユーザーのアンケートによれば、公共交通機関の利用シェアが48%から74%に増加。都市部における渋滞の削減や環境負荷の低減を実現しています。
データのオープン化によって利用者のデータを収集して、公共交通機関の運航効率化や生産性向上につなげています。相互の連携が図れるので、移動の価値向上にも大きく役立つメリットが存在するのです。
よって、今後の日本では、多種多様な地域での実証実験を行い、都市や地方に合ったモビリティサービスの創出を目指していく必要があります。オープンデータを活用し、地域の特性に合った環境づくりで、「すべての人々が移動の利便性向上」を受けられるような努力が必要となるでしょう。
(参照元)国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
まとめ
日本でMaaSを実現するにあたり、都市や地方の特性の違いや地域交通の空白、衰退化への対策など、対応しなければならない課題は山積みとなっています。与えられた状況下で、交通サービスの事業者それぞれが持ち合わせているデータを共有し、利用者に公共交通機関を使うメリットを得られる環境を整備しなければなりません。
皆さんの身近にも、MaaSが普及する時代がやってくるはずです。よりよい移動環境を得られるよう、今からMaaSについて理解を深めておきましょう。
(引用元、参照元)
国土交通省「日本版MaaSの実現に向けて」
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