MOBY(モビー)自動車はおもしろい!

MOBY[モビー] > お役立ち情報 > 車検・メンテナンス > 皆さんに伝えたい…現役整備士が嘆く不正車検!発生理由と所有者に罰則があるケースも解説
自動車整備工場
車検・メンテナンス

更新

皆さんに伝えたい…現役整備士が嘆く不正車検!発生理由と所有者に罰則があるケースも解説

不正車検とは?

©xiaosan/stock.adobe.com

不正車検とは、本来の手順で検査・整備を行わなかったり、嘘の情報に書き換えて車検を通すことを指します。不正車検のなかには、「ペーパー車検」や「闇車検」などがあります。

ペーパー車検とは、車検の検査を全く行っていないにもかかわらず、書類を発行する車検方法です。闇車検とは、保安基準に適合していない車の情報を適合するように書き換えてしまう車検方法を指します。

近年、ディーラーで発覚した不正車検が話題になっています。毎回ディーラーで車検を受けている方のなかには「ディーラーの車検はきちんとしているのだろうか?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、不正車検についてやディーラー車検とその他の車検方法の違い、なぜ不正車検が起こったのかその背景を、現役で整備士を行っている筆者が推測しお伝えしたいと思います。

最近話題になっているディーラー不正車検の内容とは?

今回の不正車検の内容は、一部の検査を実施せず車検の書類を発行するというもので、先ほど解説した不正内容とは少し異なります。

不正車検を行ったとして大きく取り上げられたディーラーは、「ネッツトヨタ愛知」と「レクサス高輪」です。ネッツトヨタでは約5000台、レクサスでは約500台の不正車検が発覚しました。

不正車検は依頼者にも罰則・処分がある?

©Andrey Popov/stock.adobe.com

不正車検を行うと、場合によっては依頼者(自動車ユーザー)にも罰則や処分があります。ただし、これは闇車検のような不正改造を行った(=依頼した)場合のみです。

もちろん、不正車検を行った整備工場や検査員へは不正内容問わず重い罰則が下されます。具体的な処分内容は以下3つです。

  • 指定工場の取り消し
  • 検査員の解任
  • 保安基準適合証などの交付停止(期間を設ける)

ただ、不正車検とひと口にいっても、「どんな不正車検をしていたのか」「何台行ったのか」で処分内容が変わります。不正の規模が大きくなればなるほど重い処分になります。

今回のネッツトヨタを例に挙げると、ネッツトヨタに下された処分内容は「指定工場の取り消し」「自動車検査員の解任(7名)」の2つでした。

ネッツトヨタでは5000台もの大規模な不正車検を行っていたために、このような重い処分が下されたようです。

最近話題になっているディーラー不正車検では、ユーザーは罪に問われない

最近話題になっているディーラーが行った不正車検では、ユーザーは罪に問われません。ディーラー側の理由で不正車検を行っていたからです。

しかし、先ほどもお伝えしたように、もし不正改造をしている車であり、なおかつ車検を通すようにユーザーも依頼・関与していた場合、この限りではありません。

不正を行った状況によりますが、極めて悪質な場合、贈収賄(ぞうしゅうわい)など、何かしらの罪に問われる可能性もあります。

ディーラー車検とユーザー車検の違い

ディーラー不正車検はどうして起こってしまったのでしょうか?それを推察する前に、車検の通し方(ユーザーの依頼の仕方)には大きく3種類あり、それぞれ何が違うのかを解説します。

ディーラー車検

ディーラー車検では、見積もり、車検整備、検査ラインを行い車検を通します。ユーザーの代わりに自賠責の更新や税金の納付まで、全ての作業をディーラーで行います。そして、車検にかかる書類を作成後、保安基準適合標章を発行しユーザーに車をお返しするという流れです。

ただしこの流れは、自社で検査を行うことができるよう、地方運輸局長から指定を受けている「指定工場」だった場合に限ります。

地方運輸局長からの認証を受けている「認証工場」は、車検整備を行ったあと運輸支局へ車検を通しに行かなければなりません。

民間車検(格安車検も含む)

格安車検も含む民間車検の場合、認証工場や指定工場ならディーラー車検とほぼ同じ流れとなります。

しかし、未認証工場の場合、分解整備(特定整備)を行えないため、一部の車検整備ができません。

そのため、車検整備を行わず運輸支局へ車を持ち込み車検を通します。代行車検などとも呼ばれるとおり、書類作成のみを代行するだけの、ほぼユーザー車検と同じ可能性もあるのです。

誤解しないでいただきたいのは、民間車検や格安車検が全て整備をしていないわけではないという点です。なかには、ディーラー車検と同じように、しっかりと車検整備を行っている整備工場もあります。

ユーザー車検

ユーザー車検は整備工場に関与せず、ユーザー自身が運輸支局へ持ち込み車検をとおします。そのため、車検をとおす際、車検整備をしていない人が多くいます。

書類の作成や自賠責の更新、税金の納付、全て自分自身で行わなければなりません。運輸支局にはそれぞれ窓口があるので、各窓口を回りながら必要書類を準備します。そして、多くの検査員が在中する検査ラインに車を持ち込み、流れ作業で検査を行います。

もし保安基準に適合しない箇所があれば、適合するように修正後、再検査が必要です。修正は自分もしくはお金を払って整備工場で行います。

ディーラー車検にかかる時間はどのくらい?

©beeboys/stock.adobe.com

このように、ディーラー車検はユーザー車検と違い、ディーラーの整備士や検査員が車検にかかる業務を全てを行うため時間がかかってしまう点が、デメリットともいえます。具体的な作業内容・作業目安時間は以下のとおりです。

  • 車の状態確認(20分)
  • 車検の見積もり(15分)
  • 整備部品の取り寄せ(数日かかる場合も)
  • 車検整備(1時間)
  • 車検の検査(30分)
  • 書類作成(30分)

ディーラー車検では書類の作成や自賠責の更新など、ユーザー車検において自分自身で行わなければならない作業をユーザーに代わり全て検査員が行っています。

一般的にはこのような流れですが、全ての車がスムーズに進むとは限りません。保安基準に不適合な箇所があれば修正が必要ですし、場合によっては交換しなければならないパーツが出てくる可能性もあります。

ディーラーで即日車検や1日車検はできる?

ディーラーでも即日車検や1日車検は可能ですが、これは車の状態によるので一概には言えません。

古い車であれば当然、交換部品も多くなりますし、なかにはラジエーター交換などの重整備をしなければならないことも。整備箇所が多い車の場合、1日では終わらないことも珍しくないのです。

また、見積もりもせずに当日来店して「1日車検をしてくれ」と依頼された場合は、なかなか難しいでしょう。

交換必要箇所があり、さらに交換部品の在庫がない場合、部品の取り寄せも必要となるためです。

さらに、ディーラーは基本的に予約制を採用しています。そのため、飛び込みでこられても予約を優先するので、どうしても作業時間が確保できず後回しになります。

まとめると、ディーラーでも1日車検や短時間車検は不可能ではないが、あらかじめ準備が必要だということ。

どうしても1日で車検を終わらせたいのであれば、事前に見積もりを行い、必要部品の取り寄せなどをお願いしてから車検を行いましょう。

執筆者プロフィール
山北吏(つかさ)
山北吏(つかさ)
1989年生まれ。現役整備士(整備士3級)webライター。webライター歴は1年半。愛車はインプレッサ(GH8)。車に乗るなら絶対MT!実家が田舎だったこともあり山道は得意!整備士として働き始め3年目。前職は輸入業...

\ この記事が役に立ったらシェアしよう /

MOBYをフォローして最新記事を受け取ろう

すべての画像を見る

画像ギャラリー

コメント

利用規約

関連する記事

関連キーワード