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【忍野八海】富士山世界文化遺産ドライブガイド “忍野そばと不思議な霊場”
かつては「富士講」と呼ばれた山岳信仰の霊場。富士山周辺ドライブで立ち寄りたいおすすめスポットと山梨名物グルメを堪能するのに最適な「忍野八海」を実際にドライブに行き、自分の足で周ったレポートをお届け。
※本記事の撮影は新型コロナによる緊急事態宣言直前に行ったものです。諸状況を鑑み記事化を中断していました為、公開日においての季節と画像の季節感にズレが生じています。
目次
忍野八海とは?
「忍野八海」の読み方は「おしのはっかい」。山梨県忍野村にある観光名所。海ではなく8つの小さな池が密集しており、富士山を眺めながら散策と地元グルメが楽しめるスポットになっています。
この8つの池は、富士山の伏流水が湧き出たもので、水のきれいさ、透明度はそこらへん池とは全く異なる美しいもの。中には「おいっ!これで池かよ!」と思わず口走りそうなミニマルな池もありますが、そこには歴史があります。本記事では、その歴史に少しだけ触れてみます。
忍野八海ができるまで
平安時代より前は、忍野八海がある辺りを含め遠くは本栖湖、精進湖、青木ヶ原樹海までの広大な湖でした。当時は「剗の海(せのうみ)」と呼ばれていました。「忍野八海」の名称はその名残でしょう。
平安時代初期、貞観(じょうかん)6年、西暦にしますと864年、今からざっと1,200年くらい前に富士山が大爆発!これは「貞観大噴火」と呼ばれる歴史上に記録された大噴火で「剗の海」は埋め尽くされ、今の富士五湖を残すことになりました。
忍野は幾度の富士山の噴火を経て、背後の御坂山系からの水蝕、掘削、排水されてついに湖は涸れてしまいますが、富士山の伏流水を水源とする湧水池がいくつか残り、忍野八海になったとのこと。
富士山の噴火物、溶岩が冷えて固まると無数の気泡を含み、水を通しやすい岩質になります。もともとは湖でしたから、湖底は水を通さない岩質、土質。その上に水を通しやすい溶岩石という構成のため伏流水は地面に現れやすくなります。ちなみに、富士五湖も同じで、5つの湖は川が接続されない、伏流水を水源として水を湛えています。
アクセスと駐車場
忍野八海から最も近い高速道路インターは、中央道と直結する東富士五湖道路、山中湖インター。約7kmの距離、だいたい10分程度で忍野八海に到着。東名高速道路からは、御殿場インターから国道138号、東富士五湖道路が最短。約1時間、30kmの距離。有料道路を使わずのドライブもおすすめ。忍野八海の近くには山中湖、少し足を北に伸ばしば河口湖エリアに。
駐車場・料金
忍野八海は駐車場が多数。混雑していてもどこか空いているでしょう。そこそこエリアが広いので、どこに車を駐めても、近くの池から周れます。
駐車料金は、1回300円の定額制がほとんど。コインパーキングもありますが、観光協会や地元の店や地主が駐車場にしている定額制のところがおすすめ。
① 出口池(でぐちいけ)

「出口」ですが一番霊場。基本はここから周りますが、他から周っても問題なし。忍野八海ではここだけ他より離れた場所にあります。
出口池の他の7つの池は「北斗七星」を表し、出口池は「北極星」を表すとされています。忍野八海では最も大きな池となります。
② お釜池(おかまいけ)

上の画像、池の右側の湖面が丸く穴のようになっています。これを「お釜」になぞられ、釜の中から熱湯が沸騰するかのように水が湧き出ることから、その名がついたそうです。
ここでオカマの真似をしてもダダすべりするだけでなく、バチが当たる可能性もありますの注意してください。ここは霊場ですから。
③ 底抜池(そこなしいけ)
【注意】有料(入場料200円)の資料館の中にあり

洗い物が消えたという伝説のある池。底抜の名はそこから。忍野八海の中では最も昔の原風景のまま残された池とのこと。お釜池と水脈が繋がっているようです。
④ 銚子池(ちょうしいけ)

酒を注ぐ「銚子」と似た形をしていることから名付けられた池。縁結びの池として伝えられています。湖面をよく見ると砂を巻き上げながら水が湧き出てくる不思議な様子が確認できます。
⑤ 涌池(わくいけ)

忍野八海を代表する池。珪藻土で構成された水中洞窟から水が湧き出る。湖面には「セキショウモ」が生えて湧き出た水で揺れている様子が見えます。1983年に宇宙で雪をつくる実験が行われたとき、この湧池の水が使われたそうです。忍野八海では最も多くの湧水量を誇るとのこと。
⑥ 濁池(にごりいけ)

実際には濁っていません。昔、みずぼらしい行者が一杯の水を求めたが断られ、池の水が濁ってしまったという伝説から。涌池に隣接。阿原川へ水を注ぐ池で、その流れが美しい。
⑦ 鏡池/鰶池(かがみいけ/このしろいけ)

富士山を水面に映し出す池。撮影時は曇り空でその光景は見れなかったが、この画角で富士山が水面に映る。古くは、鰶池(このしろいけ)と呼ばれていたとのことでWネーム。この池には、すべてのことの善悪を見分けるという言い伝えがあります。
⑧ 菖蒲池(しょうぶいけ)

菖蒲が植えられた池。天気が良ければ池の畔から富士山を眺めることができます。菖蒲にまつわる言い伝えがあるとのことだが詳細不明。
忍野そば

山梨は食の名物が多いところ。忍野八海では「忍野そば」がおすすめ。忍野のそばは、そばの風味がしっかりとした田舎そば。野趣溢れる風味ではありますが、懐かしく優しい味でもあります。忍野伝承の製法でそばが打たれています。
忍野八海にはいくつかのそば屋があります。車を駐めた駐車場にいた地元スタッフの方に、どこが1番おすすめかを訊いたところ「麺処 びわ」を紹介されたので行ってきました。

「The そば」です。良い意味でざっくりとした食感。野趣溢れる風味と食感。ダシがよく効いた濃いめのそばつゆも乙。
ちょっと下調べしてから行った方が楽しめる忍野八海

それぞれの池のルーツを辿ると、なぜ富士講がここを霊場としたのかなど、古(いにしえ)に思いを馳せることができます。
ちょっと不思議な池と伝説をドライブとともにお楽しみください。
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...