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ホンダS660も生産終了…次期モデルは?魅力ある車を追い込む法規制について
S660が2022年3月で生産終了へ

2015年4月に発売開始されたホンダ「S660」は、先日のホンダの発表で、2022年3月の7年間をもって生産終了することが発表されました。「S660」は「Moduro Version Z」で、2021年3月に特別販売されるものが最終モデルとなります。
S660が生産終了になった理由
ホンダ「S660」が生産終了になる理由はいくつ考えられますが、法的な側面も考えると大きく3つの要素が挙げられます。
2025年から義務化される緊急自動ブレーキ

2019年12月に国土交通省が発表した、自動ブレーキの搭載義務化もひとつの要因といえるでしょう。自動ブレーキの搭載義務化は、国土交通省がかねてから進めている「ASV構想」の一環で事故数の削減を目的にした先進安全技術です。
緊急自動ブレーキには、2019年6月にジュネーブで開催された「自動車基準調和世界フォーラム」で成立した衝突被害軽減ブレーキの基準があります。この基準は日本の提案に基づいたもので、日本が世界に先駆けて実施している計画のひとつです。
既存の車も対象になると勘違いされるかもしれませんが、既に販売された車両や中古車に関しては該当しません。新車として販売される車両が該当します。ホンダ「S660」は安全運転支援システム「ホンダセンシング」の非搭載モデルでした。
2022年に導入予定とされる騒音規制
2022年から始まるとされる騒音規制も、内燃機をもつ自動車に関してはネックになるポイントといえます。これは、現在に始まった話ではなく、2016年のフェーズ1から始まり、2020年のフェーズ2、2022年のフェーズ3として計画されています。
フェーズ3になったことで、従来のフェーズ2より低い値の「68db-72db」という、極めて低い数値を規制で定められます。加えて、エンジン音だけでなく、タイヤから発生するロードノイズも含まれるともいわれています。
近年のS660販売台数の低迷
法規制による影響も大きいものの、近年のS660における販売台数の低迷も生産が継続されなかった要因ではないかと言われています。
S660が販売された2015年には9,296台の販売、翌年2016年には10,298台が販売されるなど好調な販売実績もその後は続かず、2017年には4,074台、2020年にはフロントフェイスの変更などが行われたにも関わらず2,747台まで落ち込んでいます。
もちろん、S660は趣味性の強い車種なので販売台数の落ち込みは、家族向けの車種と比べて早いと想像できます。とはいえ、ダイハツコペンなどは生産を続けているところから、メーカーによる判断が明暗を分けたといってもいいのではないでしょうか。
過去にも名車を生産終了に追い込んだのは法規制だった
自動車の歴史の中で、過去にも環境改善の法律のためにスポーツカーが激変した時期があります。それが、1970年にあった「排ガス規制」。排ガス規制法が制定された背景にはオイルショックとも重なり、かねてから高度経済成長や、産業成長の真っただ中で、世界で環境汚染の関心が高かった時期でした。
現在においても、カーボンフリーや電動化といった環境に関する関心が高く似たような状態だったと考えてよいでしょう。
そのなかで、ケンメリと呼ばれるスカイラインGT-Rの販売終了という、GT-Rの歴史が途切れ、R32型スカイラインGT-Rの復活まで空白の期間が生まれます。また、生産終了にはならなかったものの、牙を抜かれたスポーツカーも多くあり、パワーが抑えられた世代がこの世代です。
自動車業界では、このことを「冬の時代」とも呼ばれています。現在の100年に1度といわれる自動車業界の変化は「冬の時代の再来」となってしまうのでしょうか。
S660次期モデルとは
S660は、2011年東京モーターショーで発表された「EV-STER」が根底にあるといわれています。EV-STERは、電気自動車の小型スポーツカーとして公開されたコンセプトカーでした。
電気自動車の小型スポーツカーというコンセプトであれば、いずれの条件もクリアできる車両に仕上げることが可能といえるのではないでしょうか。ホンダ内でこのコンセプトそのままに、再販となることを期待したいですね。
- 執筆者プロフィール
- 渡辺 喬俊
- 1986年生まれ、元システムエンジニアからクルマ業界へ転身、社外品サスペンションの試作や、ドライビングサポートのセンサー部品テストドライバーの仕事を経験。愛車はSW20 MR2とBP5 レガシィ。壊れない車が欲し...