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ホンダ「CR-Z」の魅力を再認識!第三世代になったMTハイブリッド

前史:初代インサイト・ZE-1(1999年〜2006年)

「CR-Z」の祖先を探る際に必ず登場するのが名車「CR-X」ですが、ハイブリッド車であることや
形式番号から類推すると初代「インサイト」と見ることもできます。

初代「インサイト」は、ホンダ初のハイブリッド車として初代「プリウス」から遅れること2年の
1999年に発表となりました。

ホンダ インサイト 初代 1999年型
ホンダ インサイト 初代 1999年型 リア

1997年の東京モーターショーで「次世代ライトウエイトスポーツの提案」として参考出品された
「J-VX」のコンセプトを引き継いだ量産モデルで、1.0L 直3 SOHC 12バルブ VTECに市販車初の
IMAを組み合わせたハイブリッドエンジンを搭載していました。

2代目「CR-X」に似たフォルムは、燃費向上のために徹底した空浮抵抗削減処理が施された結果で
アンダーフロアをフラット化し整流効果を狙ったドア前の処理やプロトタイプレーシングカーの
ようなリアフェンダーのデザインは、のちのハイブリッドカーのデザインに影響を与えました。

ホンダ CR-X 1.5X 2代目 1987年型
ホンダ CR-X 1.5X 2代目 1987年型 リア

全長:3,940mm
全幅:1,695mm
全高:1,355mm
ホイールベース:2,400mm
車両重量:850kg(CVT)/820kg(MT)

出典:https://goo.gl/

当時の量産ガソリン車として世界最高の35km/Lを誇る超低燃費車として開発された経緯は、
初代「CR-X」に似ていてライトウエイトスポーツというよりも超低燃費スペシャルモデルと
いった性格の強い車でした。

ゼロ世代:CR-Zコンセプト(2007年/2009年)

初代「インサイト」が生産中止となった翌年、2007年の東京モーターショウに「CR-Z」と
ネーミングされたコンセプトカーが参考出品されました。

ホンダ CR-Z 初代 2007年
ホンダ CR-Z 初代 2007年 リア

この時すでに「プリウス」は2代目に進化してベストセラーカーになっていて、対してのホンダは
2代目「シビックハイブリッド」をリリースしていましたが販売台数で歯が立たない状態でした。

ホンダは「環境に直球勝負するのではなくホンダらしい走りの楽しさも兼ね備えたハイブリッド」
というコンセプトを「CR-Z」に与えました。
その後、当時の福井威夫社長が「CR-Z」をベースに市販モデルを開発すると明言したことから、
「インサイト」の後継モデルになるのではという憶測がなされます。

しかし、2009年1月に発表した2代目「インサイト」は「CR-Z」とは異なる5ドアハッチバックで、「プリウス」に対抗するモデルとしてリリースされました。

ホンダ インサイト EX 北米仕様 2代目 2009年型

2代目「インサイト」発表から半年、福井社長に替わって伊東孝紳社長が就任した時の初記者会見で
「CR-Z」の市販を明言して2009年の東京モーターショーに「CR-Z CONCEPT 2009」を出展。

ホンダ CR-Z CONCEPT 2009 初代
ホンダ CR-Z CONCEPT 2009 初代 リア
ホンダ CR-Z CONCEPT 2009 初代 インパネ
ホンダ CR-Z CONCEPT 2009 初代 内装

全長:4,080mm
全幅:1,740mm
全高:1,350mm
ホイールベース:2,435mm

それまでのIMAハイブリッドは1.3Lガゾリンエンジンとの組み合わせでしたが「CR-Z」では
1.5Lとなってハイブリッド車初の6速MTとの組み合わせで、従来車にはない新しい走りが
期待できるのではと注目を集めました。

CR-Z Concept 2009

第一世代:CR-Z・ZF1(2010年〜2012年)

2010年2月、満を持して第一世代「CR-Z」が発表されました。

CR-Zは、ハイブリッドカーの可能性をより広げ、
新しい楽しさを全身で感じていただきたい、との想いから、
「Emotional=見て、触れて、ときめく」
「Exciting=積極的に走りたくなる」
「Smart=エコで、使えて、自己を解放できる」の
3つの価値を持つクルマを目指して開発した。
デザイン、パッケージング、走行性能などすべての領域において
この3つの価値を実現するため、Hondaの先進技術を投入した。

出典:http://www.honda.co.jp/

ホンダ CR-Z α 初代 2010年

全長:4,080 mm
全幅:1,740 mm
全高:1,395 mm
ホイールベース:2,435 mm
車両重量:1,160 kg(CVT)/ 1,130 kg(MT)
最高出力(エンジン+モーター):113PS+14PS(CVT)/114PS+14PS(MT)
最大トルク(エンジン+モーター):14.7kgm+6.0kgm(CVT)/14.8kgm+6.0kgm(MT)

全高以外のスペックは「CR-Z Concept 2009」と変更はありませんでした。
全高の差はシャークフィンアンテナが標準装備となったためで、その差は+45mm。

価格はCVTとMTに価格差がなく、廉価版の「β」が2,268,000円、上級の「α」が2,498,000円
(消費税5%を含む)でした。

マニュアルミッションとハイブリッドの組み合わせは、ハイブリッドの実験的モデルであった
初代「インサイト」以来で、6速MTは「CR-Z」が初搭載となったことも話題となって、発売後
一ヶ月間で受注台数10万台を超えるヒット車種でした。

トランスミッションの受注比率が「CVT:MT」で「60:40」とMT車の注文台数が多かったのも
話題となりました。

モータージャーナリストにより試乗レポートも、MTとCVTを比較するものが多く見られました。

「CR-Z」は、2010-2011日本自動車殿堂カーデザインオブザイヤーを受賞します。

しかし「ハイブリッドカーの可能性としてのスポーティクーペ」というホンダの提案は
「CR-Xの再来か」といったような市場のニーズと少しズレていたようで、次第に注目が
薄れてゆくこととなります。

ハイブリッド車ゆえに高めな価格設定となってしまう宿命があり、峠をキビキビ駆け回る
「CR-X SiR」の姿に重ね合わせるとバッテリーを積んだボディは重いうえに調子に乗って
モーターアシスト全開で走るとあっという間にバッテリー切れでアンダーパワーになって
しまうことなどネガティブ面がクローズアップされてしまいます。

第二世代:CR-Z・ZF2(2012年〜2015年)

2012年9月、初のマイナーチェンジで第二世代となります。
第一世代から型式変更を受けて「ZF2」(第一世代は「ZF1」)となったことから、パーツの
互換性などが低いことが伺え、バージョンアップの本気さが伝わってきます。

ホンダ CR-Z α・Master label 初代 2012年

外観上の大きな違いは、フロントバンパーのチンスカートとリアバンパーのディフューザーや
上位グレードに専用サスとともに17インチタイヤが装着されたところです。

これらは「ZF1」にも流用可能なパーツですが、流用の効かない大きく進化した部分というのが
ハイブリッドの真骨頂であるパワーユニットとバッテリーです。

CR-Zは、国内のHondaハイブリッドカーでは初となるリチウムイオンバッテリーの採用によるモーター出力の向上や、力強い加速を瞬時に実現できる新開発の「PLUS SPORTシステム」を搭載するなど、走行性能と燃費性能をさらに進化させました。

出典:http://www.honda.co.jp/

バッテリーは第一世代の「ニッケル水素バッテリー」から「リチウムイオンバッテリー」に
バージョンアップされて同じ容積で容量が大きく放充電性能の高いバッテリーとなって、
積極的にモーターを活用することが可能となったほか、IMAモーターも高出力化が図られて
第一世代の「14PS」から「20PS」にパワーアップしました。

・ZF1(ニッケル水素バッテリー):電圧100V/出力13kW/体積39.7L/重量20.2kg
・ZF2(リチウムイオンバッテリー):電圧144V/出力18.8kW/体積38.6L/重量20.2kg

価格は第一世代と同じでCVTとMTに価格差がなく、廉価版の「β」が2,365,000円、
上級の「α」が2,575,000円、17インチの足回りを装備した最上級の「α・Master label」が
2,630,000円(消費税5%を含む)と10万円弱の価格アップとなりました。

新たに装備された「PLUS SPORTシステム」は、ドライバーの意思でモーターアシストをコントロールするシステムで「バッテリー残40%以上、車速30Km以上、一定舵角以内」
といった条件がクリアしている時にステアリングに装着された「+Sボタン」を押すことで
ホンダでは「V6 3リッターの加速感」が得られると表現しています。

ホンダ CR-Z 2012年 PLUS SPORTシステムメーター
ホンダ CR-Z 初代 2012年型 PLUS SPORTボタン

F1などのモータースポーツでも似たようなギミックが存在しているので、ドライバーに
走る楽しさを提供する新しいシステムと言えるでしょう。

VTECエンジンも環境重視仕様から出力重視仕様に変更となって、高出力化したモーターと
併せて「CR-Z」の走る楽しさを進化させました。

・ZF1(最高出力):113PS+14PS(CVT)/114PS+14PS(MT)
 ZF1(最大トルク):14.7kgm+6.0kgm(CVT)/14.8kgm+6.0kgm(MT)

・ZF2(最高出力):118PS+20PS(CVT)/120PS+20PS(MT)
 ZF2(最大トルク):14.7kgm+8.0kgm(CVT)/14.8kgm+8.0kgm(MT)

進化した第二世代を無限がチュニング「MUGEN RZ」

第二世代の「ZF2」発表とともに誕生したのが「FD2 シビック MUGEN RR」に続く、
無限のコンプリートモデル「CR-Z MUGEN RZ」です。

「ZF2」発表の少し前、2012年7月に無限はSUPER GT・GT300クラスに「CR-Z」を
ベースとしたレーシングハイブリッド「MUGEN CR-Z GT」を発表・参戦していて
「CR-Z MUGEN RZ」はそのスピリッツを受け継いだロードカーです。

第二世代の「ZF2」をベースに、スーパーチャージャーを装着して約30%出力アップ、
エグゾーストやECUも専用にチューニングして、そのパワーに併せてサスペンション
専用にチューニングされています。

最大出力は156PS+20PS、最大トルクは18.9kgm+8kgm

「FD2 シビック MUGEN RR」は、限定300台が発売後10分で売り切れたといわれる伝説の一台でしたが、同じ300台限定の「CR-Z MUGEN RZ」の売れ行きはあまり芳しくなく、「CR-Zをベースに、誰もが熱い走りを楽しめる車を作りたかった」と無限はコメントしていますが、ベース車から200万円ほど高い449万4000円という価格は市場のニーズとマッチしていなかったようです。

カスタムパーツメーカー「無限 MUGEN」について詳しくはこちら

第三世代:CR-Z・ZF2(2015年〜)

第一世代発表から5年半、第二世代発表から3年が経過した2015年8月、生産中止も噂された
「CR-Z」はまさかの第三世代に進化します。

バッテリー技術の革新で第二世代はモアパワーを得ましたが、二代目「インサイト」がベースとされる足回りはハイブリッドらしい快適な走行性能は持っていても、限界走行での挙動は第一世代から持病とも言える部分でした。

センサー、カメラ、3Dスキャンを駆使した足回りの緻密な挙動解析と、リアバンパー形状の変更による、後輪をミリ単位で外に出す試行錯誤。そして、足回りの主要アームから練り直し、リアトレッドの10mm拡大を実現。さらに前輪も含め、ダンパー減衰力、バネレートを徹底的にチューニングし、操舵時の安定感・安心感、ワインディング走行時のスムーズさなどを磨いた。

出典:http://www.honda.co.jp/

ディフューザーを含めたリアバンパーのデザインはサイドスカートを含めて空力重視で
見直されています。

それに伴って、ホンダアクセスから発売される純正オプション「Modulo」は「S-style」
と銘打ってテールゲートスポイラーをGTウイングタイプに変更しました。

ドラッグが大きくならないように控えめだった従来品と比べると、無限のウイングに
近いものになったことがわかります。

ホンダ CR-Z α・Master label 初代 2012年 リア

スタビリティのあがったサスペンションには、15インチに大径化された強化ブレーキが組み合わされて足回りは最適化されました。それに対して、パワーユニットは全くの手付かずでフィットなどに搭載される最新型の「i-DCD」の搭載は見送られています。

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「i-DCD」は幾度かのリコールを経てリファインされたホンダの次世代ハイブリッドですが
構造上、マニュアルミッションを組み合わせることができないのも要因のようです。

大きくリファインされた部分としては、電子制御パーキングブレーキ採用したことで従来の
レバー式のサイドブレーキを廃止したことで大型アームレストを装着できるようになって
キャビン内の利便性と高級感を手に入れました。

今回採用された新デザインのフロントバンパーは「CR-Z」の面構えを大きく変えました。

第一世代と第二世代はコンセプトモデルから通じるデザインで、虫っぽいなど酷評されていましたが、第三世代は「猛々しさではなく、伸びやかで品格のある力強さ」を表現すべく
「翼を広げたような躍動感」をイメージしたそうです。

ホンダ S660 α(6MT) 5代目 2015年型

センターグリルが大型化されてイメージした翼を伸びやかなデザインが採用されたことで
新型「NSX」や「S660」にも似た新時代のホンダスポーツのアイコンを手にしています。

今回のマイナーチェンジでグレードが整理されて、廉価版の「β」がカタログ落ちしました。

価格は第一世代からの伝統でCVTとMTに価格差がなく、16インチタイヤのベーシックモデル
「α」が2,700,000円、17インチタイヤとレザー調コンビシート、低速域衝突軽減ブレーキである
シティブレーキアクティブシステムやサイドエアバックなどを含むあんしんパッケージを装着した
「α・Master label」が2,850,000円(消費税8%を含む)と「α」比較で5万円弱の価格アップとなり「α・Master label」は約15万円アップで熟成した足回りとあんしんパッケージを得ました。

過去、後輪のトレッドに不満を持っていたユーザーの多くがワイドスペーサーなどで調整していたことや大型アームレストが標準化されたことを含めれば実質的な価格アップはないとみれます。

熟成されたハイプリッドスポーツを再認識

第一世代発表当初は「スポーティでプレミアムなコンパクトハイブリッドの可能性」を目指して 「BMW MINI」をベンチマークとした足回りと必要十分な動力性能を持たせてリリースしたようですが、市場のニーズに合わせて改良を重ねて「孤高のハイブリッドスポーツクーペ」へと進化を遂げた「CR-Z」。

執筆者プロフィール
MOBY編集部
MOBY編集部
新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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