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べーパーロック現象の怖さとは?フェード現象との違いや防止対策

ベーパーロック現象とは?

ブレーキフルード沸騰により制動力が低下する現象

べーパーロック現象とは
©May_Chanikran/stock.adobe.com

ベーパーロック現象はブレーキフルードの沸騰が原因で制動力が低下する現象です(つまり油圧ブレーキ採用車で発生するもの)。一部の大型自動車を除き、ほとんどの自動車は油圧ブレーキ仕様となっているので、日常的に自動車を運転する誰もがベーパーロック現象に遭う可能性があります。

言うまでもなく、ブレーキトラブルは重大事故に発展するリスクがあるので、ベーパーロックを発生させない運転を日頃から心がけることが大切です。

フェード現象との違いは?

ブレーキが関連する現象の1つにフェード現象があります。これはブレーキパッドが過度に高温になると発生する現象で、ベーパーロックと同様に制動力低下をもたらします。

フェード現象の原因はブレーキパッドの高温化であるのに対し、ベーパーロックはブレーキフルードの沸騰が原因となるので、大きく異なるものだとわかります。

しかし、ブレーキによって発生した熱がブレーキフルードへ伝わることを踏まえると、フェード現象はベーパーロック現象に影響しうるものであることがわかります。

フェード現象に関して詳しくは以下のリンクからご確認ください。

ベーパーロック現象が発生する原因

すでに少し触れましたが、ベーパーロックが発生する原因はローターやキャリパーなどのブレーキシステムの熱がブレーキフルードへ伝わるからです。より厳密には、ブレーキフルードがその熱によって沸点に達したときにベーパーロック現象が発生します。

気泡がブレーキフルードに発生する

ブレーキフルードが沸騰することで内部に気泡が発生します。ベーパーロックがブレーキの効きを悪くさせるのはこの気泡が原因です。

油圧ブレーキの自動車が制動力を発揮する仕組みをザックリまとめると、ブレーキペダルを踏むことでマスターシリンダーを押し出し、そのマスターシリンダーがブレーキフルードを送り出して油圧を生み出し、その油圧がブレーキのピストンを押すことでブレーキパッドがディスクへ押し付けられて摩擦する(ブレーキをかける)となっています。

しかしブレーキフルード内部に気泡が発生していると、ブレーキペダルを踏む力(踏力)が気泡を縮ませるのに働いてしまうため、ブレーキの効きが悪くなる(ブレーキペダルが通常よりも奥まで踏むことになる)仕組みです。

ベーパーロック現象が発生しやすい場面

ここで、ベーパーロック現象が発生しやすい場面をいくつか紹介します。

その1:カーブの多い下り道

べーパーロック現象 発生しやすい場面
©M・H/stock.adobe.com

下り道はアクセルを踏んでいなくても車両速度が上がりやすく、そこにカーブがいくつもあれば、ブレーキへの負荷が増加してブレーキ機構全体の温度が高くなります。ヘアピンカーブに差し掛かったところでブレーキペダルを踏んだらそのまま奥まで行ってしまった……つまり、ブレーキが効かなくなったなんてことも。

その2:サーキット走行時

サーキット走行をはじめとするタイムアタック競技ではフルブレーキングが頻繁に行われ、ブレーキへの負荷は一般道では想像を絶するものになります。そのような高負荷のかかる設計がされていない純正ブレーキパッドにDOT3のブレーキフルードでは、すぐにブレーキの効きが悪くなることでしょう。そのため、サーキット走行車両のブレーキ関係パーツは大方、強化されています。

ベーパーロック現象の対策と対処方法

べーパーロック現象 対処法
@PixieMe/stock.adobe.com

ベーパーロック現象を防ぐためにはどのような対策を取り、実際に発生したときにはどう対処すれば良いのでしょうか。

ベーパーロック現象を起こさないようにするには?

エンジンブレーキとフットブレーキの両方を使う

ブレーキペダルを踏んでブレーキを効かせるだけではなく、エンジンブレーキ(エンジンの回転抵抗を利用したブレーキ)と組み合わせて走行する方法はベーパーロックやフェードの対策方法として一般的です。

MT車でエンジンブレーキを活かす場合、まずは1つギア比の低いギアへシフトダウンします。例えば、3速ギアで走行していて、ちょっと速度が出過ぎていると思ったら、2速ギアへシフトダウンしてエンジンブレーキをより効かせ、減速と同時にフットブレーキの使用頻度を減らす(使わないわけではない)という感覚です。ギア比の高いギアで下りを走ると、エンジンブレーキの効きは弱くなりますし、ギア比の関係もあってグイグイと加速します。

AT車の場合は、オーバードライブをオフにする、あるいは2レンジやL(ロー)レンジで走行するのが有効です。D(ドライブ)レンジ走行時のエンジンブレーキは効きが不十分なことがあるので、走行シーンに合わせてレンジを使い分けましょう。

CVT車はAT車とほとんど同じ(オーバードライブのスイッチは無い)で、レンジを使い分けて走行してください。

ブレーキフルードを交換する

古くなったブレーキフルードを交換するのもベーパーロック現象対策に有効です。ブレーキフルードの経年劣化が進むと、ベーパーロックが発生しやすくなったり、気泡が原因でブレーキペダルを踏んだときのフィーリングも悪くなったりと、良いことがありません。

交換する際には車種ごとに決められている規格のブレーキフルードを選ぶのが一般的ですが、ブレーキ系統を強化すると言う場合には沸騰しにくいブレーキフルードを選ぶこともあります。

ブレーキパッド強化はベーパーロック対策になる?

ブレーキパッドを強化品に交換することで制動力が上がったり耐フェード性能は向上しますが、むしろより熱がかかりやすくなるリスクがあります(より強くブレーキをかけられるため)。

ベーパーロック現象が発生したときの対処方法

安全なところで一度停車する

©Gudellaphoto/stock.adobe.com

ブレーキの効きが悪くなるベーパーロック現象が発生したときには、一度安全なところに停車してブレーキを冷却しましょう。冷却と言っても実際にブレーキキャリパーやディスクローターへ水をかけるのではなく、放置することでブレーキの放熱を行う感じです。

一度発生した気泡を取り除くにはエア抜きを行う必要がある(つまりジャッキアップ必須)ので、基本的に出先で行うのは不可能です。早めにブレーキフルードを交換しましょう。

より強いエンジンブレーキをかける

すぐに停車できる場面でなければ、より強力なエンジンブレーキを効かせて強い制動力を発揮させましょう。

ブレーキペダルが抜けたときにはポンピングする

ベーパーロック現象時にブレーキペダルが床までスコンと抜けることがあります。こうなると運転手はパニックになりかねませんが、そのときにはポンピングを行いましょう。

ポンピングとはペダルの踏み戻しを行うことです。ブレーキを奥まで踏んだらペダルを完全に戻し、もう一度奥まで踏むというのを繰り返します。ポンピングで制動力が復活する可能性があるので、絶対に戻るというわけではありませんが、いざというときの手段として覚えておきましょう。

サイドブレーキを使う

最近では引くタイプのサイドブレーキが搭載されている車両も少なくなりましたが、このタイプの車両であればベーパーロック時に併用するのも有効です。リアブレーキを強くかけることができるので、なんとしてでも減速しなければならないときの最後の手段として有効です。

ベーパーロック現象に陥らないためには、ブレーキフルードのメンテナンスはもちろんのこと、運転手の状況に合わせた的確なドライビングが不可欠です。整備も運転も抜かりなく行い、ドライブを安全に楽しみましょう。

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執筆者プロフィール
中華鍋振る人
中華鍋振る人
自動車とバイクに関連する記事を書いています。モータースポーツは観戦よりも参戦派。道交法や違反に関する情報を、法律に詳しくない人にもわかりやすく解説しています。
監修者プロフィール
鈴木 ケンイチ
鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレー...

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