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ピラーレス車とは?【今さら聞けない自動車用語】
ピラーレスは今やミニバンや軽自動車にも採用され、乗降性を大きく向上させました。ピラーレス車の構造や衝突安全性能について解説します。
ピラーレス車とはBピラーがない車
ピラーレス車は、車の中央に位置する柱であるBピラーを取り払い、乗り降りや荷物の積み下ろしをしやすくした車です。Bピラーがなければ車内は非常に開放的になり、乗り降りにも便利です。
反面、車体中央に位置するBピラーは、構造的にもっとも大きな力が加わる部分にある柱であるため、ピラーレス車は車体剛性が著しく低下するうえ、側面衝突時の防護壁がなくなってしまうという問題点もあります。
1980年代までは、Bピラーを持たないクーペやセダンが数多く生産されていたものの、衝突安全性の高まりとともにピラーレス車は消滅しました。ところが、近年はBピラーを取り払ったピラーレス構造を採用するダイハツ タントや、ホンダ N-VANなどのワゴン車が少数ながら登場。もちろん、メーカーは対策を講じたうえでピラーレス車を販売しています。
代表的なピラーレス車
オープンカー
一般的なオープンカーは屋根がないため、変則的とはいえピラーレスに該当します。フロア周りを入念に補強することで、不足ぶんの車体剛性を確保しています。ホンダ S660のようなタルガトップ・オープンカーはロールケージを兼ねたBピラーが装備されています。
ハードトップクーペ
オープンカーに金属製のルーフを追加した車がハードトップクーペです。基本構造はオープンカーと同じ2ドア構造であるため、Bピラーがなくとも剛性確保は容易です。
日本車では、1965年に登場したトヨペット・コロナハードトップがはじめて採用し、1980年ごろまで多くのハードトップクーペが生産されました。輸入車では、メルセデス・ベンツ Eクラスと、同じくSクラスが伝統的にピラーレスハードトップを採用し続けています。
4ドアハードトップ(センターピラーレスセダン)も
初代および2代目カリーナEDは4ドアクーペピラーレス車の代表です。リアドアはフロアからベルトラインの高さまでしかない柱に固定しています。
ほかにも、3代目日産 ローレルや初代スバル レガシイ、初代三菱 ディアマンテなど、1970〜1980年代はメーカー各車がピラーレスの4ドアハードトップクーペを生産していました。現在は車体剛性や衝突安全性の確保が難しいため、4ドアハードトップは生産されていません。
ピラーレスのワゴン・ミニバン
トヨタ アイシス
2004年から2017年まで販売された初代トヨタ アイシスが、助手席側ピラーレス第一号車です。センターピラーをドアに内蔵した「パノラマオープンドア」がもたらす広い開口部は開放的で画期的。福祉車両や子育て世代に人気のミニバンとして活躍しました。
ピラーレスの軽自動車
ダイハツ タント
2代目ダイハツ タントは軽自動車初の助手席側ピラーレス車。「ミラクルオープンドア」の名称で3代目ダイハツ タントにも継続採用され、ダイハツ タントの特徴のひとつになっています。Bピラーがなくなるため、助手席のシートベルトはシートに固定。2019年7月発売の4代目ダイハツ タントにも、ピラーレスの「ミラクルオープンドア」が引き続き採用されます。
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ホンダ N-VAN
ホンダ N−VANは商用軽自動車初の助手席側ピラーレス車。ドア構造はダイハツ タントと同じように、ドアロックの追加と補強を加えてピラーレス化することで、商用車として快適な荷物の積み下ろしを実現しました。助手席シートベルトの固定はシートではなくドア固定とし、コストダウンも図られています。
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ピラーレス車の構造 ぶつかったらどうなる?安全性は?
近年登場しているピラーレス車には、ワゴンタイプが多い傾向です。ピラーレスとなるのは乗り降りの多い助手席のみ。ドアの中にBピラーと同等の補強を加えることで、車体剛性と衝突安全性を確保しています。さらに、通常の車よりもドアロック数をふやすことでドアの保持強度を向上させています。
こうしたピラーレス車の衝突安全性は、側面衝突テストで証明されています。例えば、ダイハツ タントは独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)がおこなう側面衝突試験で、最高ランクにあたるレベル5を獲得しています。
しかし、交通事故は試験のように、決まった方向から決まった力が加わるものではありません。また、ボディが潰れなければ身体が無事であるという保証もありません。
衝突試験はあくまで参考であり、ピラーレスが横方向の力に対して、Bピラーと同等の強度をもっていることを確かめるためのものということを覚えておきましょう。