初めて車と出会う人の為の車情報メディア MOBY [モビー]

【ホンダ インサイト 試乗記】令和時代のクルマ、セダンとは?の答えを導くカギに。

2018年12月に発表、発売されたホンダ・インサイト。5ドアハッチバックだった先代とは異なり4ドアセダンで国内発売が復活。折しも令和の新元号発表直後の試乗となった。

インサイトに乗って「令和のクルマはどうなる?」を考えた

ホンダ インサイト

今回の試乗車は、ホンダのハイブリッド・セダン、インサイト。

ホンダ・インサイトをお借りして約500kmほど乗った感想の結論から述べれば、「これからのセダンはこうあるべきじゃないか」ということだ。(冒頭からウンチクと筆者の勝手な考えを徒然なるままに記すので遠慮なく読み飛ばしていただきたい。)

奇しくも新元号「令和」が発表された直後にインサイトに試乗、今までの自動車文化の進行=モータリゼーションを振り返りながら、これからの「ニホンのセダンの在り方」を考えてみた。まずは、モータリゼーションを簡潔に振り返ってみよう。

昭和20年代 終戦と戦後復興
昭和30年代 日本経済の急成長と三種の神器(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)の普及
昭和40年代 マイカーブーム。自動車販売台数の急増。いざなぎ景気。
昭和50年代 スーパーカーブーム。オイルショック。物価上昇、不景気。
昭和60年代 ハイソカーブーム。バブル景気。
平成1桁年代 ミニバンブーム。名車が続々登場。バブル崩壊。
平成10年代 SUVブームの序章はじまる。景気停滞。
平成20年代 SUVブーム絶頂へ。景気回復せず格差広がる。若者のクルマ離れ顕著に。
令和 ???

この表には記していないが、平成20年代は自動車産業にはさまざまな大きなモータリゼーションが発生している。自動車の電動化、自動運転がその2大モータリゼーションである。ことにEU加盟国が続々と発表した、自動車の完全電動化のニュースは衝撃的だった。自動車の人気の中身も大きく変化している。軽自動車は圧倒的にトールワゴンの人気が定着、乗用車ではSUVが圧勝である。世界中の自動車メーカーは平成20年代に続々と新型SUVを開発し市場に投入、あのランボルギーニもウルス、ロールス・ロイスはカリナン、ベントレーはベンテイガと平成10年代以前には想像もつかなかったメーカーからのSUVが登場している。今や、自動車メーカーはSUVがラインナップにないと生き残れないのである。

ホンダ インサイト

日没時の富士山の麓を走る。

しかし、これからの令和の時代のモータリゼーションはどうなっていくのだろう。自動車のEV化、自動運転化が進む一方、クルマが趣味であることの大切さが再認識されていくような気がしてならない。トヨタはモータスポーツに力を入れている。GAZOOがそうだ。GRブランドで新型スープラが出る。クラシックカーも静かなブームとして根付いている。クルマの分野は、電動化・自動運転・コネクテッドといったより自動的、電子的、無機質的なものへと発展していく一方、モータースポーツやドライブを愉しみ、古い車を大切にする趣味の分野の二極化が進むであろう。実際にマツダは、30年前にデビューした初代NA型ロードスターの部品の供給を行うことを発表、ヤナセも自社が取り扱うブランドに限らず、さまざまなメーカーのメンテナンスや修理に対応していくとこを表明している。(2019年5月17日追記:トヨタGRは新型スープラ発表会(5/17開催)にて、初代A70型スープラ、2代目A80型スープラの部品供給再開を友山プレジデントが発表した)

ホンダ インサイト

試乗車のグレード、EX・BLACK STYLEだけの特別色「ルーセブラック・メタリック」は紫色を隠し色にしている。

そうは言っても、この二極化が具現化して誰もが実感できるようになるまで、あと最低でも10年はかかると私はみている。令和10年代のモータリゼーション年表には「クルマの自動運転化、電動化の普及広がる」と書き記されるとして、令和1桁年代のモータリゼーションはどうなるのか?

ドイツ御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)を筆頭に、ヨーロッパの主要自動車メーカーは、次世代EVの開発と同時並行に、EVしか売れなくなる前に内燃機関の最後の新型導入ラッシュになっている様子である。ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンといった内燃機関は最後の開発の10年となるであろう。しかし、ここに何か驚くようなスペックや仕様、技術は投入されないであろう。もはや内燃機関は完全な熟成期を迎えて過ぎ去ろうとしている。しかしながら、世界は広い。EVしか売れなくなる国は、世界中の人口を考えたら、少なくとも圧倒的大多数ではない。10年後も20年後もガソリンがなければ移動できない地域は果てしなく広がっているはずである。つまり、ワールドワイドに見たら、内燃機関は今のところ不滅なのである。

ホンダ インサイト

ホンダのアイデンティティ。昆虫の複眼のようなライト。

さて、話は未来の世界の自動車に発展してしまったが、令和元年の今、実際に日本でクルマを買って乗ろうとしている人々にはどんな変化が起きているのだろうか?これは全く推測にしか過ぎないが、クルマ選びは原点回帰していくのではないか、と私は考えている。

街中のクルマは、SUVと軽トールワゴンばかりである。地域差もあるので「ばかり」と書くと語弊が生じるかもしれないが、販売台数統計はそれを裏付けている。しかし、そろそろSUVブームは右肩下がりになっていくのではなかろうか?そろそろ車を買い換える人は、次もSUVを買いたいと思っているだろうか?かっこよくて人気もあるSUVに一度は乗ってみたものの、果たして車高の高さは必要なのか?すり減ったタイヤを履き替えるとき、ミニバンセダンのときよりサイズが大きく高いタイヤだと思わなかっただろうか?自分の所有する車がSUVであったことに本当に恩恵を受けたと感じたことが何回あっただろうか?そんなことを考えた人は、次のクルマの選択肢にセダンやステーションワゴンといったボディタイプが候補に上がってくるのでは?と私は考えている。

ホンダ インサイト

冒頭の画像から少し時間が経過して暗くなる。

ことにセダンは現代のクルマの基本的なカタチである。平成の後半の幼稚園児にクルマの絵を書けというと、ミニバンSUVを書くそうだ。昭和の幼稚園児は皆、セダンを書いていた。クルマの基本はセダンである、といって間違いはないであろう。自動運転の普及化の前に、もう一度「クルマの運転、ドライブの愉しみとは?クルマのカタチとは?」と考え直すきっかけは多い。車の買い替えを検討する人は、このモータリゼーションの過渡期にあって、自然と原点回帰するのではなかろうか。

ホンダ インサイト

カメラを三脚で固定し定点撮影。前の画像よりさらに時間が経過。撮影の限界時点でのシャッター。

といったところで、今回試乗したホンダ・インサイトは、まさに私を原点回帰させてくれた。冒頭で「これからのセダンはこうあるべきじゃないか」と述べたが、言い換えれば「これからのクルマはこれでいい」となった。では、その結論に至った理由を外装デザインから順にお伝えしていこう。

ファストバックはこれからのセダンの定番へ

ホンダ インサイト

ひと目でホンダとわかるフロントマスク。そこそこの押し出し感はセダンの定番スタイルでもある。

ホンダ インサイト

大きめのアルミホイールとスポーティーな印象のデザインは今どきのセダンの定番スタイル。

ホンダ インサイト

昔のセダンは箱が3つくっつけたようなデザインだった。今のセダンの流行りは後ろなだらかに寝ているファストバックスタイル。

ホンダ インサイト

リアはオーソドックスなデザイン。しかし、控えめながらもスポイラーを装備してスポーティー感を出すのは令和のセダン的スタイル。

ホンダ インサイト

お尻の位置が高いファストバック。個人的には好きなデザイン。

ホンダ インサイト

こうやって見ると後ろは人相が悪く見えるかもしれない。

ホンダ インサイト

「ファストバック・セダンとは?」の回答にしたい画像。

ホンダ インサイト

あまり下からクルマを見上げることはないが、そうするとこう見える。

ホンダ インサイト

ホンダのアイデンティティ。昆虫の複眼のようなライト。

ホンダ インサイト

”多眼LEDヘッドライト”

リアウィンドウがなだらかなファストバックスタイルのスポーティーなデザインは、令和のセダンの主流。エンジンスペックがスポーツカー並みでなくても、演出は大切。

全長4,675mm、全幅1,820mmという大きめのボディサイズも令和時代のセダンでは主流になっていくであろう。日本の道路事情で普段使いに困らない最大の大きさはこのぐらい。これが大きいのならハッチバックのコンパクトカーという充実した選択肢がある。昭和のセダンはいわゆる大衆車からプレミアムまで幅のあるボディタイプであったが、今の時代はプレミアムなクルマのボディタイプになってきている。

内装はセダンらしくオーソドックスで使いやすく

ホンダ インサイト

運転席ドアを開けるた視線で撮影

ホンダ インサイト

試乗車のグレード、EX・BLACK STYLEはスエードの本皮シートを装備。

ホンダ インサイト

運転席に座ったときの視線で撮影。

ホンダ インサイト 運転席の視線で助手席側のインパネを見る

運転席からの視線で助手席側のインパネを見る。EX・BLACK STYLE はインパネ、ドアの内張りにもスエード本皮が。

ホンダ インサイト ボタン式シフトとスマホ置き場

シフトノブはないボタン式。誤操作しにくいだろう。ボタンの左側はスマホを置くスペース。5.5インチの大画面スマホにも対応する大きさ。まさに令和のスマホの大きさに対応か。

ホンダ インサイト センターコンソール

アームレストとドリンクホルダー。実用性重視。

ホンダ インサイト ドア

前後のドアがしっかりと広く開くというのはセダンの基本。

ホンダ インサイト 後席ドアから乗り込む視線で撮影

後席ドアから乗り込む視線で撮影

ホンダ インサイト 後席シート

座面の広さはセダンの重要ポイント。インサイトはきちんとしている。

ホンダ インサイト 後席シート

身長180cmの筆者が座っても頭上スペースに問題なし。

ホンダ インサイト 後席シート

後席に人が乗るときは前席を気持ち前にする心遣いは昔と変わらないが座面が広いので窮屈さは感じない。

ホンダ インサイト 後部座席

後席から見るフロントシートのデザインは実は重要だったり。奇をてらわずオーソドックスに仕上げたインサイトは正解。

ホンダ インサイト 後席からフロントインパネを見る

オーソドックスなデザインのインパネ。後席から見たとき、オーソドックスなデザインは快適性に好印象を与える。

ホンダ インサイト トランクを開けて撮影

トランクを開けたまま前から撮影。ファストバックなのでトランクの蓋部分は小さめに。

ホンダ インサイト ラゲッジスペース

ご覧のとおりたっぷり荷持が入る。

内装、室内空間を一言で言えば「オーソドックス」。セダンの王道を行っている。特に不満はない広さと使い勝手。セダンはオーソドックスがベストなのだ、と再認識させられた。

「SPORT HYBRID i-MMD」の走りは?

ホンダ・インサイトは「SPORT HYBRID i-MMD」という名のハイブリッドシステムを採用。どういう仕組かはホンダ公式サイトの画像がわかりやすかったので拝借させていただく。

シリーズ・パラレル方式のハイブリッドはトヨタ プリウスに代表される国産ハイブリッド車の代表的な方式。エンジンとモーターの両方の力を合わせた駆動力で車を走らせる構造。

シリーズ式は、日産ノート、セレナに採用される「e-POWER」がその代表となり、エンジンは駆動力に一切使われず専ら走行用モーターの発電のみに使用される方式。

ホンダ インサイトに採用される「SPORT HYBRID i-MMD」は、そのどちらでもない方式。駆動力はエンジンとモーターのどちらか最も効率の良い一方しか使用されない方式。仕組みもシンプルでパワフルでスムーズ、低燃費な走りを両立。

インサイトは、走行モードがECONとSPORTとNORMALとEVの4種類あり、シフトボタンの近くのスイッチで切り替える。実際に走ってみた印象は、エコモードではアクセルの踏み込み量に対しての加速が鈍く重たい印象、逆にいえばエコノミーな走り。スポーツモードでは、文字通りスポーティーな走りの印象。この性格は真反対に近い。普段はエコ重視でおとなしく走り、たまの山道ドライブで爽快に走りたいといった使い方が令和のセダンのあるべき姿とするなら、この2つのモードの真逆のセッティングは正解だ。EVモードはモーターだけで走るので、深夜の住宅時の走行など周囲に気配りをしたいときに有効。ただ、PHEVではないので航続距離は短く数キロも走らなかった。

箱根ターンパイクを走ったところ、何ら不満はない。十分に走る。それもそのはず、インサイトに搭載されるモーターは131馬力、267N・m、1.5Lのコンパクトな排気量のエンジンは109馬力、134N・m。単純足し算した数値が総合スペックとはならないi-MMDハイブリッドシステムだが、6気筒2.0L自然吸気エンジンぐらいのパワフルさを体感できた。

ホンダ インサイト ペダル周り

アクセルペダルには工夫が。

アクセルペダルは、とあるところまで踏み込むとクリックポイントがあり、少しカクっとなるところがある。これは、通常走行とダイナミックに走りたいときの境界で、クリックポイントを超えて踏むとインサイトは力強く加速するようにセッティングされている。これは、ちょっと心高鳴る仕掛けでは?

実燃費は令和基準を満たす。

クルマの燃費を示す新しい基準、WLTCモード燃費が表示されるようになってから、この数値が実際の燃費に近づいているモデルが多くなった。(言い方が逆かも)ホンダ インサイトも同じく、WLTCモード燃費とほぼ同じ実燃費となった。その誤差はマイナス10%からプラス5%。信号の少ない郊外部では30km/Lを超えた。

WLTCモード燃費 25.6km/L
 市街地モード 22.8km/L
 郊外モード 27.1km/L
 高速道路モード 26.2km/L

全国的にみたら特殊な環境となる都心の信号と渋滞の多い国内では最も燃費の悪くなる環境においてでも20km/Lを切らなかったは特筆すべき。

ホンダ インサイトの総評

ホンダ インサイト

富士山の麓を走る。

令和時代のセダンを、スポーティーセダンとラグジュアリーセダンに大別し(ガチなスポーツセダンは除外)、日本で走る最適なスポーティーセダンを1台挙げよ、という設問があれば、それにホンダ インサイトを推したい。走りより豪華さが欲しいのなら、ラグジュアリー・セダンを選ぶべき。

その理由としては、セダンはまずもってエコであることが必要であるから。走りの面、燃費の面、そして価格の3つの側面が高い次元でバランスが取れるのは、今のところハイブリッドエンジンしかない。その中でも、いざとなったら速く走りたいスポーティーセダンは、しっかりとしたスペックと足回りが欲しい。この点、インサイトは合格点。

そして最後に、令和が始まった今このときに、セダンという原点回帰の選択肢があることを、読者のみなさまへ力説したい。タイヤが大きく車高の高いSUVが必要ではなく、普段遣いに困らず走りも経済的に愉しみたいのなら、原点回帰してぜひにセダンを一考していただきたい。

試乗車のスペック表と新車車両価格

車名 / グレード ホンダ インサイト / EX・BLACK STYLE
全長 4,675mm
全幅 1,820mm
全高 1,410mm
ホイールベース 2,700mm
車両重量 1,565kg
乗車定員 5名
エンジン種類 直列4気筒1.5L + モーター
エンジン最高出力 80kW [109PS] / 6,000rpm
エンジン最大トルク 134N・m [13.7kg·m] / 5,000rpm 
モーター最高出力 96kW [131PS] / 4,000-8,000rpm
モーター最大トルク 267N・m [27.2kg·m] / 0-3,000rpm 
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
駆動方式 FF
トランスミッション CVT
JC08モード燃費 31.4km/L
WLTCモード燃費 25.6km/L
サスペンション(フロント) マクファーソン式ストラット
サスペンション(リア) マルチリンク式
タイヤサイズ 215/50R17 91V

新車車両価格

グレード 価格
LX 3,261,600円
EX 3,499,200円
EX・BLACK STYLE 3,628,800円

※価格はメーカー希望小売価格、税込。

試乗車のグレードは、EX・BLACK STYLE。ボディカラーは、ルーセブラック・メタリック(37,800円/税込は上記価格に含まれず)。

車両提供:ホンダ

撮影・レポート:宇野 智(MOBY)

この記事の執筆者

宇野 智(MOBY)この執筆者の詳細プロフィール

車はおもしろい!を届ける自動車情報メディア「MOBY」編集長。自ら取材、試乗、撮影、執筆した記事をUPしています。...

関連キーワード
キーワードから記事を探す


関連する車種/メーカー
車種/メーカーから記事を探す