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ロータリーエンジンの復活の可能性は?基本構造とマツダの歴史や最新技術から紐解く

復活の噂が浮上しているロータリーエンジンについて、過去からこれからの動向までを解説します。ロータリーエンジンの特徴や構造、歴代のロータリーエンジン搭載車を紹介。

復活が期待されるロータリーエンジンとは?

マツダ RX-8に搭載されたロータリーエンジン

マツダ 次世代RENESIS ロータリーエンジン

RX−8に搭載されたRENESIS ロータリーエンジン

1957年、世界ではじめてヴァンケル・ロータリーエンジンを形にしたのはドイツのNSU社。その動作原理は、楕円状の外周に囲まれた三角ローターが、回転しながら吸気・圧縮・燃焼・排気をおこない、動力を発生させるもの。優れた性能を発揮するものの、耐久性の低さから自動車への搭載は難しい夢のエンジンと呼ばれていました。

そのライセンスを取得した多くの自動車メーカーのうち、世界で唯一マツダだけが実用化に成功。1967年に登場したマツダ コスモスポーツを皮切りに、次々とロータリーエンジン車を販売するものの、排出ガス規制の強化や2度のオイルショックにより、ロータリーエンジンを取り巻く環境は非常に厳しいものとなります。

しかし、マツダはロータリーエンジンに改良を重ね、2003年に登場したRX-8の生産終了までの36年間にわたり、実用化は不可能とされた夢のロータリーエンジンを生産し続けました。

軽量コンパクト

ロータリーエンジンは、レシプロエンジンのようにバルブやカムシャフトなどの複雑な機構を持たないため非常にコンパクト。さらに、出力に対して軽量であるため、ハンドリングとパワーのバランスが求められるスポーツカーにとって理想的なエンジンです。

排気量に対して高出力

4ストロークレシプロエンジンのクランクシャフトが2回転するのに必要な爆発は1回。それに対しロータリーエンジンは、1回転するあいだに3回爆発する構造であるため、1回転あたりの軸トルクがレシプロエンジンより強大です。

もっとも多く販売された2ローター仕様のエンジンでは、排気量がわずか0.8〜1.3Lながら2.0〜2.5Lエンジンと同等の出力を発揮しました。

モーターのような吹き上がり

ロータリーエンジンは、レシプロエンジンのような往復運動ではなく、回転するローターとハウジング間の容積変化で燃焼工程をおこないます。そのため、回転上昇をさまたげる抵抗が少なく、振動が少ないことからモーターのようになめらかな吹き上がりが特徴です。

燃費が悪い

ロータリーエンジンは、爆発で発生した熱エネルギーが発散しやすく、燃焼温度も低いためレシプロエンジンに比べて熱効率が低くなります。また構造上、完全燃焼させることが難しいため、未燃焼ガスは排気ガスとして捨てられてしまいがち。

重いローターの回転がある程度上昇するまでは非常に効率が悪く、エンジン回転数の低い街乗りではとくに燃費が悪化します。

耐久性が低い

ロータリーエンジンの耐久性の要となる、燃焼室の気密を確保するシール類のコンディション維持は非常にシビア。不十分なオイル管理や、カーボンの噛み込みひとつでキズがつき、そこから圧縮ガスが漏れることでエンジン性能はどんどん低下していきます。

オイルを消費するので排ガスが汚い

ロータリーエンジンは、シールの潤滑のために吹きつけるエンジンオイルの燃焼により、油分を含んだ白煙が排気ガスに混入しやすくなります。また、燃焼温度が低いため、排出される窒素酸化物は少ないものの、完全燃焼できずに燃え残った可燃成分の炭化水素が排気ガスに含まれます。

これらの要因により、年々厳しくなる排出ガス規制に適合できず、ロータリーエンジンは2012年に生産を終了。研究こそ続けられているものの、環境性能などのさまざまな要因から復活は難しいのが現状です。

ロータリーエンジンの歴史を搭載車種で振り返る

マツダ コスモスポーツ

マツダ コスモスポーツ(1967〜1972年)

10万kmの走行テストを耐えぬいた、世界初の実用ロータリーエンジン搭載車です。

マツダ 2代目 ファミリア ロータリークーペ

マツダ 2代目 ファミリア ロータリークーペ(1968〜1978年)

マツダのファミリーセダンであるファミリアにも高出力ロータリーエンジンが搭載されました。

マツダ 初代 ルーチェ ロータリークーペ

マツダ 初代ルーチェ ロータリークーペ(1969〜1972年)

当時のフラッグシップセダンであるマツダ ルーチェに1.3Lのロータリーエンジンを搭載し、2ドアクーペに仕立てたモデルです。

マツダ カペラ ロータリークーペ

マツダ カペラ ロータリークーペ(1970〜1974年)

ファミリアの上位車種カペラに、1.2Lロータリーエンジンを搭載し、圧倒的な加速力を誇りました。

マツダ サバンナ クーペGT(RX-3)

マツダ サバンナ クーペGT(1971〜1973年)

ロータリーエンジンのパワーを受け止めるべく強化された足回りが特徴。レースで無敵といわれたスカイライン(通称ハコスカ)GT-Rの50連勝を阻んだ名車です。

マツダ 2代目 ルーチェ

マツダ 2代目 ルーチェ(1972〜1978年)

2代目ルーチェに搭載されたロータリーエンジンから、排出ガス対策がほどこされたAP(アンチ・ポリューション)仕様が追加されました。

マツダ 初代 プロシード ロータリーピックアップ

マツダ 初代 プロシード 日本仕様(1974〜1977年)

マツダ プロシードは1965年に登場したピックアップトラック。ロータリーエンジンを搭載したプロシード ロータリーピックアップが輸出用として3年あまりのあいだ生産されました。

マツダ パークウェイロータリー26

マツダ パークウェイ26(1974〜1977年)

世界初のロータリーエンジンを搭載する26人乗りのマイクロバスは、低振動で乗り心地は快適。燃費の悪さを補うため、140Lの大容量燃料タンクを搭載していました。

マツダ ロードペーサー

マツダ ロードペーサー(1975〜1979年)

オーストラリアのホールデン社と提携して誕生したビッグセダン。V8エンジンクラスの巨体を動かすために、低速トルクよりにリファインされた13B型ロータリーエンジンを搭載しました。

マツダ 初代 コスモ

マツダ 初代 コスモ(1975〜1981年)

約15万台の生産台数のうち約7割がロータリーエンジン搭載車でした。

マツダ 3代目 ルーチェ

マツダ 3代目 ルーチェ(1977〜1988年)

高級サルーンとなった3代目ルーチェ。ロータリーエンジン搭載の輸出仕様は、マツダ RX-4と呼ばれていました。

マツダ 初代 サバンナ RX-7 SA22C

マツダ 初代 サバンナ RX-7(1978〜1985年)

サバンナ クーペGTの後継機で、燃費性能の改善した1.2Lロータリーエンジンを搭載。後にターボを追加したモデルは最高出力160PSを発揮しました。

マツダ 3代目 コスモ

マツダ 3代目 コスモ(1981〜1990年)

ボディタイプは、セダンと、2ドアと4ドアのハードトップ仕様が用意されました。モデル途中で160PSを発揮したロータリーターボエンジンが追加されます。

マツダ 4代目 ルーチェ

マツダ 4代目 ルーチェ(1981〜1986年)

外観は異なるものの、3代目コスモとは共通のプラットフォームを採用する兄弟車。エンジンも同じくロータリーエンジンを搭載したグレードが用意されました。

マツダ 2代目 サバンナ RX-7 FC3S

マツダ 2代目 サバンナ RX-7(1985〜1991年)

理想的なスポーツカーを目標にモデルチェンジを果たしたRX-7。エンジンは新たに開発された13B型ロータリーターボを搭載しています。

マツダ 5代目 ルーチェ

マツダ 5代目ルーチェ (1986年-1995年)

バブル景気のまっただなかに登場したハイソカー。この頃からレシプロエンジンが主流となり、ロータリーエンジンはメイングレードから外れた存在になりつつありました。

ユーノス コスモ(1990〜1996年)

ユーノス コスモ(1990〜1996年)

最初で最後となる3ローター・ツインターボエンジン搭載車。最高出力280PSを軽々発揮するも、全開加速時の実燃費は1km/Lほどでした。

アンフィニ 2代目 RX-7 FD3S

アンフィニ 2代目 RX-7(1991〜2002年)

チューンを進めた13Bシーケンシャルツインターボは、最終的に280PSを発揮。美しい外観と、卓越した運動性能を秘めたマツダのピュアスポーツカーです。

マツダ RX-8

マツダ RX-8(2003〜2012年)

環境性と堪能性を高めた、新設計の自然吸気ロータリーエンジン「RENESIS(レネシス)」を搭載するも、RX-8の生産終了とともにロータリーエンジンの生産も凍結されました。

次世代の内燃機関として開発された水素ロータリーエンジン

水素ロータリーを搭載した、RX-8 ハイドロジェンRE

水素は、燃焼してもわずかな酸化窒素物と水しか発生しないため環境に優しい燃料です。吸気室と燃焼室が分かれているロータリーエンジンは、水素燃料を使用しても異常燃焼が起きづらく安定した稼働が可能なため、大きな手を加えずとも水素エンジンへの転用が可能です。

さらに、酸化窒素量も従来の三元触媒で対応できる量に抑えられるため、水素とガソリンを併用できるロータリーエンジンも開発されていました。

しかし、水素ロータリーエンジンを普及させるには、水素生成コストとインフラ整備、難しい水素の取り扱いをどのようにするかが大きな壁となります。現在マツダは水素ロータリーエンジンの開発を凍結しています。

最新技術「RE レンジエクステンダー」とは

デミオEV 2012年

重いローターが常に回転しているロータリーエンジンは、一定回転数での稼働を得意とするため、スポーツユニットよりもむしろ発電機としての用途が最適。低振動・低騒音・コンパクトである点も発電機としての理にかなう特徴です。

それらの特性を活かし、ロータリーエンジンを発電機として搭載し、電気自動車の航続距離をのばすRE(レンジエクステンダー)が開発されています。

ロータリーエンジンによるレンジエクステンド機構は、デミオEVに搭載され現在開発中。床下へ横置きできるように設計された330cc・1ローターの新型発電用ロータリーエンジンと9Lのガソリンタンクを搭載し、200kmだったデミオEVの航続距離を400kmまでのばすことに成功しています。

ロータリーエンジンは船舶や発電機などにも搭載

低振動で高出力ながら軽量コンパクトなロータリーエンジンは世界中のメーカーがこぞって開発を進め、車のほかバイクや航空機、船舶などの原動機としても少数ながら用いられてきました。

なかでも発電機としての利用価値には高い注目が集まり、中国電力はマツダから発電用ロータリーエンジンの供給をうけ、2003年ころからLPガスによるロータリー発電機のテストがおこなわれています。

また、2017年にマツダと資本提携をしたトヨタは、次世代型モビリティサービスEV「e-パレット」の航続距離をのばすためにマツダのロータリーエンジンを発電機として搭載することを予定しています。

ロータリーエンジン復活の可能性は?

ロータリーエンジンは燃費や排気ガスといった環境性能の面での問題点が多く残されたままとなっており、市販モデルに採用される可能性は低いと考えるのが妥当でしょう。

ロータリーエンジンを採用した市販車復活の可能性をMOBY編集部がマツダ広報担当に尋ねたところ明確な回答はなく、ロータリーエンジンの研究開発についての質問も同様の回答でした。

マツダとしてもロータリーエンジンの市販化復活を望んでいる様子が感じられ、市販化に向けての研究開発の取り組みが続けられているのではないかと思われます。

ロータリーエンジン復活の可能性はゼロではない、という状況ですが、取り急ぎ市販車両に搭載されなくても、マツダがモータースポーツに再参入しレース車両への搭載に期待したいところです。

ロータリーエンジンの今後については下記リンク記事でも解説しています。