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虫谷先生の靭帯損傷がきっかけで誕生した新型MAZDA3の極上シートとは?【開発秘話】

2019年2月に開催された「マツダ雪上取材会」では、次期型アクセラとされる新型MAZDA3の開発車両を用いて、進化した性能を披露。コンテンツのひとつはクルマの基礎となるシャシーとシートがどのように進化したのか、マツダ SKYACTIV-Vehicle Architecture を具体的に実体験させてくれました。

マツダ SKYACTIV-Vehicle Architecture とは?

Vehicle Architecture の直訳は「乗り物の構造」、SKYACTIV-Vehicle Architecture(スカイアクティブ ビークル アーキテクチャ)=新世代車両構造技術には、「人馬一体」のマツダのクルマ作りの理念が存分に活かされています。新型MAZDA3(次期型アクセラ)では「人間の持つ身体の能力を最大限活かせるクルマとの一体化」を、SKYACTIV-Vehicle Architecture で目指したとのことです。

この「人間の持つ身体の能力」とはクルマにおいてどのようなことを示すのか、我々メディアに体を張った体験でもって教えてくれました。

虫谷医院「バランス科」で受診

マツダ雪上取材会(2019) 新型Mazda3(次期型アクセラ)

虫谷医師、「白衣を着てくればよかった」と仰る

マツダ雪上取材会のコンテンツのひとつ「人間の能力を最大限に活かす(バランス保持能力)」は、マツダの新世代車両構造技術「SKYACTIV-Vehicle Architecture」の試乗体感でした。このコンテンツでは、マツダの車両開発本部 草案性能開発部(シャシーダイナミクス)の虫谷 泰典氏が医師に扮し、”体を張った”試乗体験を提供してくれました。

虫谷先生は、マツダが提唱するドライバーとクルマがひとつになる「人馬一体」のクルマをより進化させるため、人間の持つ身体の能力を最大限活かせるクルマとの一体化を目指したとのことです。クルマの開発に"人間の身体能力"がどう関わるのか、非常に興味深いテーマです。

新型MAZDA3のSKYACTIV-Vehicle Architecture は次の3つの柱で考えて開発されました。

1. 「人間中心の発想」の進化

虫谷先生は、人間の歩行とバランス保持能力に着目。今までのクルマには、人の持つ身体能力を活かすということが実現できていなかったと語っていました。マツダは「人間中心の発想」の進化について次のようにまとめています。

・日ごろ無意識に行っている「歩行」を研究、クルマの理想のあり方を考えた。普通に歩くとき「右足を前に出そう」「腕を交互に触ろう」などと意識的に考えない。
・歩行時の障害物、路面などの周囲の状況が変化しても、普通に安定して歩くことができる。人間は非常に優れた能力を持っている。
・クルマを運転しているとき、乗車しているとき、歩行中と同じように人間が持つバランス保持能力を発揮できる状態をつくること。これがクルマの理想の状態である。

2. 「人間の能力を最大発揮できるVehicle Architecture」の考え方

Vehicle Architecture(クルマの構造)において虫谷先生が着目したのは「骨盤を立てる」ことでした。人間が歩くとき、骨盤は立った状態になります。今までのクルマのシートでは骨盤を立てるのではなく、ランバーサポートなどで腰を押し付けて支える構造が主体でした。新型MAZDA3のシートは、骨盤を立てて座ることができる構造になっています。

歩くとき、人間は足の動きを骨盤に伝えています。クルマに乗ったときは、タイヤ、サスペンションのいわゆる「足回り」の動きを骨盤に伝えています。新型MAZDA3のシートも、歩行時と同じように路面の力をなめらかに骨盤に伝え、連続的に骨盤を動かし、上体はバランスを保持する、という考え方で開発されています。

専門用語で人間の腰から下の歩行機能は「ロコモーターユニット」、骨盤から上のバランスを取る部分を「パッセンジャーユニット」と呼ぶ。車の足回りは「ロコモーターユニット」、シートが「パッセンジャーユニット」になぞらえる。

3. 個々のシステムよりも「クルマ全体のコーディネート」を重視

車が段差を乗り越えるときに伝わる衝撃はサスペンションによって緩和され、車の揺れを制御しています。この衝撃が乗っている人に伝わるまでの時間にも、虫谷先生は着目しました。

車が段差を乗り越えるとき、前輪と後輪の動きにズレがあると乗っている人は不快になります。マツダはこの点について、次のように述べています。

「人間中心の哲学に基づき、人が座るシートから、ボディ、シャシー、タイヤまでを、時間軸で見て有機的な連携を持って開発した。例えば、力の大きい小さいではなく、力が路面から人間まで、滑らかにつながっているかどうかを重視。」

説明が難しいので体を張ってすごさを体感

虫谷先生が用意したのは、ご覧の健康器具。座面がゆらゆら不安定に動き骨盤のエクササイズができるものです。

普通に座るだけでも、最初は意識してバランスを取る必要があります。

動きが画像では伝わりにくいので、ショップジャパン公式YouTubeも参考に。

普通に座って体を傾けると、とあるところで座面からおしりがずり落ちてしまいます。当たり前です。

虫谷先生は、この骨盤運動マシーンを人間の上半身のバランス保持能力を確かめる最適な機器に認定。現行型のアクセラと新型MAZDA3の助手席を取っ払って、これを取り付けたのでした。

剣淵試験場はクローズドコースですから、この状態でシートベルトなしで走っても問題ありません。(公道を走ると違法です!)

マツダ雪上取材会(2019) 新型Mazda3(次期型アクセラ)

現行型アクセラ(左ハンドルのサウジアラビア仕様の開発車)と新型MAZDA3(左ハンドルの欧州仕様の開発車)

前方の青い車が現行型アクセラ、後方のカモフラージュ柄の車が新型MAZDA3。いずれも海外仕様の開発車です。

ここを時速3~5kmの超低速で、半径50m程度の短い距離をぐるりと走ります。ボディに骨盤運動マシーン”ながらウォーク”を直付けしているため、この速度でも路面のゴツゴツが骨盤に直に伝わり、ハンドルを切ると体が横に傾き、腰に力が入ります。

現行型アクセラに乗った後、新型MAZDA3に乗車。走行距離1mでその違いをはっきりと体感できました。

腰が疲れたのは現行型アクセラ。新型アクセラの揺れ方はとても少ないものでした。虫谷先生によれば、車の揺らし方が自然に、最適化されたものとなっているとのことです。

虫谷先生、靭帯損傷が開発のきっかけとなる。

虫谷先生は、趣味のサッカーの最中、靭帯を損傷、数ヶ月の入院生活を送ったのこと。歩けなくなった虫谷先生は「人はどうやって歩くのだろう?」と歩行そのものの科学を入院中に勉強、担当医にあれこれ質問しまくったら教授が使う専門書を「これを読め」とプレゼントされたほどだったようです。

その経緯があって誕生したのが、こちら「脊柱のS字カーブが維持できるシート」です。

人間の脊柱は、横からみるとなだらかなS字を描いており、これが上半身のバランスを保つ仕組みの要になっています。このS字を保つには、骨盤を立てる必要があります。

また、骨盤を立てる姿勢を保持するためには、シャシーがしっかりとしていなければなりません。例えるなら、トランポリンの上に正座をするのと、厚い木の板の上で正座をするのと、どちらが姿勢を保ちやすいか。新型MAZDA3は後者。さらに、サスペンションの動きが路面の凹凸に対して素直に、スムースに動くように刷新されています。これにより、乗車している人の体の動きに無駄がなくなり、快適で疲れないクルマになりました。

新型MAZDA3のシートは大腿部の座面高さ調整をしっかりと

新型MAZDA3のシートは「骨盤を立てる」ことによって上半身のバランスを保持し、乗り心地と快適性の良さに貢献しています。この骨盤を立てる状態にするために、座面部の高さを調整し、大腿部とシートの間に隙間ができないようにする必要があります。

きちんとしたシートポジションにしないと、運転の粗さに繋がり、同乗者の快適性を損ねてしまいます。この点については別のコンテンツで計測器を用いて体験できました。こちらは次の記事をご覧ください。

上半身の自由度の高いシートながらスポーツシート並みのサポート力

新型MAZDA3のシートは、体の側面を挟みこむようなスポーツシートではありません。全体的にフラットなデザインです。しかし、骨盤を立てる構造が実に上半身の安定感を生み出し、高速でカーブに入っても体がシートからずれませんでした。クローズドコースであることをいいことに、激しい挙動変化を与える運転をしても、スポーツシートのようなサポート力がありました。

座ったまま上着を脱ぐことも楽でした。これは、上半身の自由度が高いことを証明しています。

天は二物を与え……虫谷先生はシートに二物を与えてしまったようです。

新型MAZDA3が発売され、街を走る姿を見かけたら、私は虫谷先生を思い出すでしょう。

撮影、取材、文:宇野 智(MOBY)

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