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日産L型エンジンを搭載する代表作のひとつ、初代フェアレディZ 240Z
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「日産の名機」日産L型エンジンとは?仕組みや搭載車を紹介!

無限の可能性を秘め、未だ「底なし」の名機L型

日産L型エンジンを搭載する代表作のひとつ、初代フェアレディZ 240Z
日産L型エンジンを搭載する代表作のひとつ、初代フェアレディZ 240Z(海外名ダットサン240Z・L24搭載)

2035年までに急いでBEVやHVの新車を揃え、純エンジン車はなくなる世の中になると思いきや、事実上の言い出しっぺであるEUが自動車大国・ドイツからの要請を受け、「合成燃料を使う」という条件つきながら、一転して「エンジンもOK!」になったこの頃。

ついこの間までの「消えゆく純エンジン車へ今のうちに乗って別れを告げよう!」的な雰囲気から急には世の中も変われず、戸惑いが広がっているものの、まだまだ内燃機関には可能性が残されているのも確かです。

今回は古の「無限の可能性を秘めたエンジン」でありながら、未だに最新チューン技術が開発されている名機、「日産L型」についての話をしましょう。

市販車用エンジンとしては「偉大なる平凡」

L型エンジンの記念すべき初搭載車、2代目日産 セドリック スペシャル6(L20搭載)
L型エンジンの記念すべき初搭載車、2代目日産 セドリック スペシャル6(L20搭載)

日産L型とはどんなエンジンだったのか?

まずはザックリと概要ですが、1960年代半ばに登場した日産L型とは、直6(直列6気筒)および直4(直列4気筒)が存在し、いずれも終始一貫して吸気と排気が同じ方向から出入りする「ターンフロー」形式だったSOHC2バルブエンジン。

直4は1970年代に排ガス規制対策を施し、クロスフロー(吸気と排気が別方向から出入りする)・ツインプラグ急速燃焼特徴とする派生エンジンZ型を後継にして消えたものの、直6は電子制御インジェクション化やターボ化など発展を経て1980年代まで使われました。

直6は1965年10月にモデルチェンジした2代目セドリック(130系)の最上級グレード「セドリックスペシャル6」で2リッターL20、直4は1967年8月にはモデルチェンジした3代目ブルーバード(510系)で1.3リッターL13、1.6リッターL16がデビューしています。

小排気量から大排気量、ディーゼルまでバリエーション豊富!

直4と直6はごく初期と末期を除けば気筒数や排気量、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンと違っても基本は全て共通で、部品の使い回しもきいたので生産や整備には非常に都合がよく、余裕があって頑丈な設計により、排気量拡大や出力向上にもよく耐えました。

そのため直4は1.3/1.4/1.6/1.8/2.0リッターガソリン/2.0リッターディーゼル、直6は2.0/2.4/2.6/2.8リッターガソリン/2.8リッターディーゼル版が作られ、ミドルクラスセダンから大型セダンやスポーツカーまで、1970年代まで多くの日産製乗用車がL型を積んでいます。

この優れた拡張性が後年までL型に「名機」の称号を与えた由来なのですが、実際に称えられるのは後述するチューニングエンジンやレーシングエンジンでの話。

どノーマルでは良く言えば平凡、率直に言えば鈍くさい類

どノーマルの市販車用エンジンとしては、一部のSUツインキャブ搭載車などスポーツグレード用を除き、むしろ「確かに頑丈だけど、鈍くさくてトラックみたいなエンジン」という評価が大半です。

末期に大幅な改良を受けたR30スカイライン用のL20E/L20ETに限れば、「軽やかに吹け上がる直6エンジンらしい名機」と呼ばれるくらい成長したものの、それを最後に直6ディーゼルのLD28を除き、直6のRB、V6のVGといった新型エンジンへ更新されてしまいます。

つまり市販車用エンジンとしてのL型とは、ほとんどの期間にわたって名機どころか、日産にとって生産や整備で非常に都合がよく頑丈なだけのエンジン、よく言えば「偉大なる平凡」であり、名機と呼ばれるようなエンジンとは対極の存在でした。

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名機と呼ばれた理由は、「純正部品が宝の山!」

1965年、2代目日産 セドリック(130系)の「スペシャル6」へ初搭載されたL、20エンジンSUツインキャブ仕様
1965年、2代目日産 セドリック(130系)の「スペシャル6」へ初搭載されたL、20エンジンSUツインキャブ仕様

プリンスG7やトヨタM型へ対抗し、急きょ開発された直6のL型

ただし平凡な実用エンジンという顔は、L型の一面に過ぎません。

L型はもともと直4のL14、L16(ブルーバード用ですね)を先行開発していたものの、1963年にプリンスが2リッター直6SOHCの「G7」をグロリア スーパー6に搭載、「トヨタもクラウンへ積む直6SOHCの新型エンジン(後のM型)を開発中」という情報が入ります。

日産も2リッター直6OHVの「J20」を開発していたものの、ライバルへの対抗上、直6SOHCエンジンが必要になり、直4のL型は一旦棚上げしてシリンダーブロックやシリンダーヘッドの設計を転用、2気筒追加した直6SOHCエンジンを急きょ開発しました(※)。

(※その際、メルセデス・ベンツ──直6のM180系か、それを直4化したM121、いずれにせよ吸排気の向きが同じターンフローのSOHCエンジン──を参考にした説もあり、事実なら同じくメルセデス・ベンツを参考にしたプリンスG7とは「異母兄弟」のような関係です。)

モジュラー設計で部品互換性を持つ直6と直4のL型

最初期の2リッター直6SOHCエンジン「L20」は、1965年に2代目セドリックの最上級グレード「スペシャル6」でデビュー(「カスタム6」など他の直6グレードへはOHVの「J20」を搭載)、1966年に合併したプリンス系のグロリアやスカイラインにも搭載します。

この初期型「L20」は急いで開発したこともあって未完成な部分もあり、1967年にブルーバード用でデビューした直4版L13やL16と部品共用化を進め、リファインした「L20A」が決定版となって、以後長らく使われました。

その後、排気量違いやディーゼル仕様が作られますが基本設計は同じで、たとえば1.3~1.6リッター直4のL13/L14/L16と、2.4~2.6リッター直6のL24/L26はボア(シリンダー内径)が同じ83.0mmで、L16とL24に至ってはストローク(ピストン行程)も同じ73.7mm。

こうした「サイズの合う他のエンジンのピストンや、排気量違いの純正部品を組み合わせて排気量アップなどチューニングを行う手法」は他社のエンジンでも定番ですが、バリエーションが豊富な日産L型では、組み合わせに使える純正部品が豊富でした。

チューナーに育てられ、チューナーを育てたエンジン

しかも多くの日産車へ使われた実用エンジンのため、純正部品の入手も非常に容易だったうえに、設計思想のひとつに「分からなかったら2倍にしておけ!」があった時代のエンジンで安全マージンも高く、あらゆるチューニングを受け止める懐の深さもあります。

おかげで「チューニングがはかどるエンジン」としてL型は大人気となり、単なる排気量アップからターボ化まで、「L型をイジってないヤツじゃ話にならない」と言われるほど、多くのチューナーを育てました。

余談ですが、L28にLD28用クランクやL14用コンロッド、ホンダのFT500用ピストンを組むチューンの人気が出た結果、「なぜか単気筒エンジンのピストン6台分が注文殺到、FT500の生産数すら超える」という事態に、ホンダが困惑したという逸話が残っています。

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メーカー純正チューンドから社外DOHCヘッドまでアリ!

ストリートのチューナーが育てたと言われるL型ですが、もちろん日産でもモータースポーツでL型をフル活用すべく、さまざまなチューンが施されました。

もちろんそれはL型が第一線で活躍した時代の話ですが、その後も社外のチューナーによって、魅力的なチューニングメニューが開発されており、以下にその一部を紹介しましょう。

LRヘッド

1973年のサファリラリーで総合優勝したダットサン240Z(LR24エンジン搭載)
1973年のサファリラリーで総合優勝したダットサン240Z(LR24エンジン搭載)

L16を積む510ブルーバードSSSで1970年に総合優勝、L24を積むダットサン240Z(S30フェアレディZ)でも1971年に総合優勝するなど、サファリラリー連覇に大きく貢献したL型ですが、コースの高速化でモアパワーが求められると苦戦します。

そこで1973年に240Zへ搭載したのが通称「サファリヘッド」とも呼ばれるLRヘッドのLR24で、L24の2,393ccに対し2,497ccへと拡大、さらに吸排気ポートや冷却性能の効率化を図ったもので、見事にその年のサファリラリー総合優勝を果たしました。

直6だけでなく直4用のLRヘッドも存在し、1979年にはLR20Bを搭載したPA10バイオレットがサファリラリーで優勝するなど活躍、少数ながら一般ユーザーの手にも渡り、Lメカチューンでは憧れのひとつです。

LYヘッド

1973年の国内レースでLY24を積んで戦ったダットサン240ZRの同型車へ、LY28を積んだテストマシン
1973年の国内レースでLY24を積んで戦ったダットサン240ZRの同型車へ、LY28を積んだテストマシン

当初、第1世代スカイラインGT-Rと同じS20エンジンを積む「Z432」でレースを戦ったフェアレディZですが、なんと旧プリンス製エンジンとのマッチングがうまくいかず、振動問題で戦闘力に深刻な疑問が出る状態に。

ならばとL24を積む240Zで参戦してみると非常に扱いやすく安定して速く、GT-Rより上のクラスとはいえ富士スピードウェイの2分切りをいち早く達成(※)。

(※それならスカイラインGT-RにL24積んだらもっと速いんじゃ?と試したらそんなことはなくて、旧プリンス車らしくS20を改良した方が速かった、というオチまでつきます)

これに勢いを得た日産は、GT-R引退後もZにマツダロータリー軍団への対抗馬をまかせるべくLYヘッドを開発、L24に組んだLY24を積んだZで1973年のレースシーズンへ挑み、L28の排気量を2,870ccまで上げてクロスフロー化、最高出力300馬力を叩き出すLY28も作りました。

しかしオイルショックでその年をもって日産はレースへのワークス参戦から撤退、LY28を積むZでサバンナを蹴散らす夢は潰えたのです。

なお、このLYヘッドも少数ながら販売しており、現在も使用している一般ユーザーがいます。

LZヘッド

1978年のWRCオーストラリア・サザンクロスラリーで総合優勝した日産PA10バイオレット(参加名ダットサン スタンザ・LZ20B搭載)
1978年のWRCオーストラリア・サザンクロスラリーで総合優勝した日産PA10バイオレット(参加名ダットサン スタンザ・LZ20B搭載)

WRC(世界ラリー選手権)を戦うPA10バイオレットやS110シルビアがベースの240RS初期、さらにターボを組み合わせ、シルエットフォーミュラやグループCレースでの活躍を支えた音が、L型の直4にDOHC4バルブヘッドを組み合わせた「LZヘッド」。

WRCだと日本では一般にスポーツイメージ皆無のバイオレットだったので、LZ20Bを積んで活躍したといっても地味でスルー気味ですし、240RSの初期に積んでいたLZ24Bもマイナーですが、シルエットフォーミュラでの活躍は知っている人も多いと思います。

R30スカイラインRSターボのシルエットフォーミュラがマフラーエンドから猛烈な炎を上げている勇ましい写真が有名どころですが、アレはFJ20ETじゃなくLZ20Bターボでやってたんです。

OS技研TC16/TC24

OS技研TC24のベースエンジン、L28(画像は430セドリック用のL28E)

残念ながら日産は直6用のLZヘッドは作りませんでしたが、DOHC4バルブ仕様のLメカチューンが欲しい!

そこでOS技研が1980年に、直4のTC16-MAII(L18改1,918cc)と直6のTC24-B1(L28改2,870cc)、2種類のDOHC4バルブヘッドを開発しました。

LRやLY同様に高価だったので、当時はほとんど購入する人もおらず、TC24-B1など数基しか売れなかったそうですが、後に同社内の倉庫で発掘されたTC24をレストアしてイベントなどで走らせたところ人気となり、2012年に復刻&改良版TC24-B1Zを発表。

1980年版は325馬力でしたが、2012年版は9,000回転までブン回して420馬力、許容回転数10,000回転という「ホントにLメカ?」というスペックに達する化け物エンジンであり、1980年版よりも売れたようです。

RBヘッドなど

画像はR31スカイライン用のRB20DETだが、こんな感じのヘッド周りをそっくりL型へ移植するハイブリッドチューンもある

他にもOS技研のように独自のDOHCヘッドを作ってしまうチューナーや、亀有エンジンワークス(昔の人なら「カーショップ亀有」の方が馴染みがあるかも?)など、廃盤部品を独自に、それもただの復刻ではなく強化品など販売しているショップも数多くあります。

中には「別物と言っても生産設備を活用できるようL型との共通点も多いからイケるだろう」ということか?あるいは最新チューニングキットの流用を容易にするためか、RBエンジンのヘッドを使ってDOHC化したL型も。

ここまで来ると普通にRBでいいんじゃ?と言いたくなりますが、何十年もの歴史を重ねたL型のノウハウに、RBをハイブリッドすることで新たなL型チューンの道が開けるようで、まだまだL型チューンの沼は底なしなようです。

L型へ普通に乗っていたのは今だと50代前半以上の世代?

A型のA12を積んだイメージが強い2代目サニーだが、上級モデルのサニーエクセレントにはL14を積んでいた(画像はセダン1400DX)
A型のA12を積んだイメージが強い2代目サニーだが、上級モデルのサニーエクセレントにはL14を積んでいた(画像はセダン1400DX)

40代以前だと、旧車としてしか知らない人が多いかも

こんな感じで日産L型が名機というのは知っている筆者ですが、「普通にどノーマルで現役のL型を運転した事があるか」という、肝心の経験はありません。

何しろ免許取得が1993年、当時は「クルマなんて10年経てばいい加減くたびれるし、1年車検が面倒だからスクラップ行きだ!」、父親からのお下がりだった最初の愛車、1982年式マークIIグランデセダンすら「なんじゃその古い車は!」と、ネタになる時代でした。

L型末期のR30スカイラインもバン以外は1985年までしか作ってませんから、R31ならともかくR30はほとんど見かけず、L型のクルマなんて運転する機会はありません。

サニーエクセレントはもっとも安くL型を味わえた1台

かろうじて接点があるL型は幼少時代、オフクロが免許取って最初の愛車だった1972年式サニーエクセレントセダンが4気筒版1.4リッターのL14を積んでいたくらい。

そのサニーが案外走るのを面白がった父親が、時々家族でバーベキューに出かけた鬼怒川の河川敷でダートトライアルじみた走りをしたり、帰りの高速道路でガンガン回したりと、自分のクルマでないのをいい事に遊んでたのは覚えてます。

今年49歳の筆者でもそのレベルですから、現役ドノーマルのL型エンジン搭載車を普通に乗っいたのって、筆者のようにたまたま親のクルマをお下がりで愛車にしていた、あるいは免許取る前からよほどの旧車好き以外だと、50代前半以上の世代ではないでしょうか?

湾岸ミッドナイトもいいけどチューニングパパも面白かった

日産 フェアレディZ ダットサン240Zのレース
あくまでイメージですが、「チューニングパパ」では昔の「メカチューンとターボチューンの決着」をつけるべく、こんな感じでLメカチューンZ vs LターボチューンZの熱いバトルがありました

定番は北見チューンの「悪魔のZ」が出る湾岸ミッドナイトですが

昔のチューンドLを題材にした漫画作品だと、一番の有名どころは「悪魔のZ」と呼ばれる主人公車、S30フェアレディZにL28改3.1リッターツインターボを積んでいた「湾岸ミッドナイト」でしょう。

実在するチューンドZをモチーフとした物語で日夜繰り広げられる公道バトルに興奮し、個性的なチューナーたちによるチューニング哲学が心に染みた読者も多いと思いますが、マイナー漫画でもL型をモチーフにした物語が面白い作品があります。

25年前の「チューニングパパ」でもL型は「今さら」なエンジンだった

クルマ漫画の盛り上がりから、珍しい「自動車漫画専門誌」として1997年に交通タイムス社から創刊されるも、わずか2年ほどの短命で終わった「オートコミックGT」誌で連載された「チューニングパパ」(宮本千代美)が、その隠れた名作。

この作品に登場する「パパ」が娘や周囲のクルマに関わる話ですが、もともとはチューニングカーを駆って公道でブイブイ言わせていたので過去の因縁に絡むエピソードもあり、中でも秀逸なのが、かつてのライバルに再戦を挑まれた「チューンドZ」対決です。

パパはメカチューンZ、ライバルはターボチューンZ(いずれも初代S30)という旧車好きには泣かせる対決で、パパはもちろんLメカ、ショップ経営者のライバルは部下から「今さらL型?RB積めば速いのに」という声を無視し、あえてL型にターボを組んできます。

この部下の声でもわかる通り、今から25年以上前ですら「日産L型なんてもうやり尽くされた古いエンジン」というのが一般的な評価でしたが、メカチューンもターボチューンも2020年代にまだ最新チューンが登場しているL型は、まさに「魔性のエンジン」ですね。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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