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安全運転はドライバーの責任…自動車運転死傷行為処罰法と危険運転致死傷罪とは?

「事故を起こしたい」と思って起こす人はいないはず。それでも起きてしまうのが「交通事故」なのです。ハンドルを握った瞬間に課せられるドライバーの責任を関連する法律である「自動車運転死傷行為処罰法」とその罪状である「危険運転致死傷罪」を通じて再認識して行きましょう。

「自動車」は日常的に凶器になることを認識せよ!

警察庁が発表した2014年の交通事故死亡者数は4,113人で、過去最悪だった1970年の16,765人と比較すると75%、20年前の1995年の10,684人との比較でも61.5%ほど減少しているものの、1日に11.3人が命を落としているのが現状です。

事故数・負傷者数・死亡者数の減少の傾向についての警視庁レポート

事故直前の車両速度の低下につながる安全運転の徹底化や取り締まり・法令強化、警告装置の充実や、シートベルトの着用者率の向上のため、シートベルト着用、飲酒運転などに関する交通ルールの規制を強化し、運転者だけではなく歩行者にも法令遵守を促して、悪質・危険性が高い事故から身を守るということが交通事故による悲劇を減らすという成果に結び付いていると考えられています。

もちろん死亡事故減少の裏には、エアーバック、ABS、車体構造、シートベルトなど自動車技術の進歩や、事故数と負傷者数が比例していることから医学、生存技術の進歩も関係があります。

車は「凶器」となりうる!

自動車の安全対策や高度な医療技術の進化で、死亡事故に繋がるケースは減少していても、ドライバーのひとりひとりが「自分の運転する車で人を傷つけてしまうかもしれない」という心構えを持つことができなければ「安全な交通社会」を築き上げることはできません。

自動車は日常的に人を傷つけたり命を奪ってしまう可能性がある「凶器」となりうることをすべてのドライバーは認識しなければならないでしょう。

2015年10月「未熟運転致死罪」が初適用

2015年8月に兵庫県で発生した、無免許の16歳少年が起こしたひき逃げ死亡事故に対して、大阪地方検察庁は2015年10月7日に「未熟運転致死罪」を適用して起訴しました。

「未熟運転致死罪」は、平成25年11月に制定された「自動車運転死傷行為処罰法」の類型の一つで、この件で初適用となりました。

未熟運転致死傷罪とは?

【未熟運転致死傷罪】
・危険運転致死傷罪の一類型
・進行を制御する技能を有しない者が自動車を走行させることで人を死傷させる罪。
※「進行を制御する技能を有しない」=基本的な自動車操作の技能をもっていない

【該当するケース】
・無免許運転が多い、長年ペーパードライバーだった場合も該当する場合があります。
※経験や技能があっても無免許だったり免許停止中の場合は含まれません。

起訴した経緯は?

制定後、間もない法律ということもあって見解が定まっていないというのが実情ですが、上記のひき逃げ死亡事故について大阪地方検察庁は「未熟運転の故意を立証できる」として判断して起訴した経緯です。

「自動車運転死傷行為処罰法」とは?

「自動車運転死傷行為処罰法」は、平成13年の刑法改正で新たに制定された後、平成25年11月に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」として独立して自動車を運転する者への安全喚起と責任を課すものとして10類型が制定されました。

自動車には自動二輪車や原動機付自転車の含まれていて、刑罰は最高懲役20年と重罪になります。

酩酊運転致死傷罪・薬物運転致死傷罪

第2条第1項
アルコール(飲酒)又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

いわゆる「飲酒運転」に起因するものと「薬物を使用しての運転」に起因するものが対象で、「薬物」は薬効成分の指定が指定されていないので、法律上の規制薬物や危険ドラッグ以外にも市販薬や処方薬も対象となることがありえます。

準酩酊運転致死傷罪・準薬物運転致死傷罪

第3条第1項
アルコール(飲酒)又は薬物の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれ(危険性)を認識していながら自動車を運転し、その結果として第2条第1項に規定する状態(アルコール(飲酒)又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態)に陥った場合。

「酩酊運転」や「薬物運転」となる可能性を認識していながら、自動車を運転するのに必要な注意力・判断能力・操作能力が低下したことに起因するものが対象となります。道路交通法における「酒気帯び運転」はこの対象です。

病気運転致死傷罪

第3条第2項
予め政令に定める特定の疾患の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれ(危険性)を認識していながら自動車を運転し、その結果として特定の疾患の影響により正常な運転が困難な状態)に陥った場合。

特定の疾患は、運転免許証の交付欠格事由を根拠に取り決めがなされていて

・「運転前または運転中に発作の前兆症状が出ている」場合

・「症状は出ていないが治療や服薬を怠っていた」場合

などに起因するものが対象です。

特定の疾患とは?

特定の疾患には、運転時に必要な能力を欠く可能性がある「統合失調症」・「低血糖症」、意識や運動に障害が発生する可能性がある「てんかん」、再発性がある「失神障害」があります。

制御困難運転致死傷罪

第2条第2項
進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

法文上では具体的な速度や超過速度は明文化されていませんが、目安として50km/h以上の速度超過があった場合の他、安全といえない状況下でのドリフト走行やスピンターンが原因となった場合にはこの対象となります。

未熟運転致死傷罪

第2条第3項
進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

未熟運転とは「無免許」や「初心者」ということを指すのではなくて「運転技能を有しない者」が対象となりますが「無免許運転」を認めているものではなく「無免許」の場合は、これに重加算されることになります。ペーパードライバーやサンデードライバーもこの対象となる可能性があります。

妨害運転致死傷罪

第2条第4項
人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

故意による割り込み・幅寄せ・進路変更や煽り行為の他、20km/h程度の低速度でも相手方と接触すれば大きな事故を生ずる速度であればこの対象となります。

信号無視運転致死傷罪

第2条第5項
赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し(信号無視)、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

見落とし、誤認などの過失、信号の変わり際などに進んだ場合などは含まれないとされていますが、今後は解釈が変わる可能性はあります。

通行禁止道路運転致死傷

第2条第6項
自動車の通行が禁止されている政令に定める道路(片側一車線道路における対向車線などの道路の一部分を含む)を自動車によって通行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

一方通行道路の逆走や高速道路の逆走。自転車及び歩行者の専用道路への侵入といったことに起因する場合は対象となります。

誰の心にも潜む「未必の故意」とは?

ドライバーの誰しもが「事故を起こしたくない」と思っていることでしょう。しかし、心のどこかで「この程度なら大丈夫だろう」といった「悪魔のささやき」に惑わされて、無意識的に交通違反を犯してしまっては元も子もありません。

免許更新の安全講習などでよく耳にする言葉で「未必の故意」と呼ばれる法律用語があります。

「未必の故意」とは?

未必の故意とは、犯罪の実現は不確実ですが、自分の行為で犯罪が実現されるかもしれないと認識しながら、それを容認している場合のことです。

自動車を運転する以上、自分が「凶器となりうる道具」を扱っていることを認識して、「自動車運転死傷行為処罰法」の対象となるような行為をしてしまったら、その時点で他人を傷つけてしまったり命を奪ってしまたりすることを容認しているしていることを自覚しなければならないでしょう。

犯す気はなくとも起こってしまった「過失」と犯す可能性を秘めているにもかかわらず実行して発生してしまう「未必の故意」は紙一重ではあるものの、かかる責任は大きく異なります。

安全運転は全てのドライバーの責任

「事故を起こしたい」と思って起こす人はいないと思います。しかし、それでも起きてしまうのが「事故」というものなのです。

この記事を読んで他人事だとは思わずに、ハンドルを握った瞬間に課される「ドライバーの責任」を再認識して「安全運転」に努めましょう。

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