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【教習所では教えてくれない運転術】ハイドロプレーニング現象に勝つテクニックとは?
伝説のカービデオマガジン「ベストモータリング」が復刻!プロレーサーである中谷明彦さんに、日常でも使えるドラテクをじっくり解説してもらいました。今回のテーマはこの現象は「ハイドロプレーニング」。豪雨や台風などの荒天でスピードを出して運転していてハンドルやブレーキが効かなくなった場合、どうやって対処すればよいのでしょうか。
この記事の目次
死なないための運転術:ハイドロプレーニング編
ベストモータリングが死なないための運転術をご紹介!
Best MOTORing(ベストモータリング)にて「死なないための運転術」と題した企画がシリーズ化。
読者が実際に体験した危ないシチュエーションをヒアリングし、その対処法を紹介していきます。
ハイドロプレーニング現象について詳しくはこちら
ハイドロプレーニング現象とは?雨の高速道路で注意!速度など原因と対処方法
どんなシチュエーション?
今回は、雨の日の高速道路で追い越し車線を走行していたという方を電話取材しました。
場所は豪雨の日の常磐高速道路。
120~130km/hで前のトラックを追い越そうと車線変更をしようとしたら、ハンドルが効かなくなりスリップしてガードレールに激突。
幸い後続車への巻き込み事故もなくドライバーは無事でしたが、大変危険な事故ですね。
中谷キャスターがシチュエーションを再現
中谷キャスターにその時の状況を再現してもらいました。
ハンドルを切ると車が軽くスピン!!
これが公道だったらと思うとゾッとしますね…
水深は15~20mm、80km/hでの走行でハンドルが効かなくなり車がスピンしました。
中谷キャスターは超冷静に対処していますが、これが自分の身に起きたらと考えると…
絶対パニックになってしまいます!
ハイドロプレーニング現象とは?
ハイドロプレーニング現象とは濡れた路面をハイスピードで走行中に起きる現象で、水の圧力でタイヤが浮き上がってしまうことです。
前輪に水が当たった際にタイヤでうまく排水できないと、タイヤと地面の間に水の膜ができてしまいます。
ステアリング(ハンドル)操作やブレーキが効かなくなるため、車がスピンしてしまうこともある大変危険な状態です。
テクニックを知る前に自分の車について最低限の知識を持とう!
緊急事態に対処するためには「自分がどう操作したら車がどう動くか」を把握しておくことが大切です。
中谷キャスターと一緒に、自分の車はどうなのか考えてみましょう。
駆動方式
前と後ろ、どちらのタイヤが動いているのかはつまり、前後どちらでブレーキが効くかということです。
駆動方式はハイドロプレーニング現象発生時だけでなく、雪の日の走行時にも重要となりますので、きちんと把握しておきましょう。
重さ
車の重さが重いほど、ハイドロプレーニング現象発生時には有利に働きます。
ハンドルの効き具合には、前後の重量配分なども重要な要素です。
タイヤの排水能力
自分の車が今どんなタイプのタイヤを履いているのかや、タイヤの溝はどれくらい残っているかも大切です。
タイヤの溝は走行中に水をうまく排水する役目があり、タイヤがすり減ってしまい溝が浅くなると排水性能も悪くなってしまいます。
路面状況(水が流れる方向性など)
自分の車が今どんなタイプのタイヤを履いているのかや、タイヤの溝はどれくらい残っているかも大切です。
タイヤの溝は走行中に水をうまく排水する役目があり、タイヤがすり減ってしまい溝が浅くなると排水性能も悪くなってしまいます。
【実践】やってはいけない危険操作編
では、一般ドライバーがやってしまいがちな「やってはいけない操作」を中谷キャスターに実践してもらいましょう。
続きは動画をご覧ください!
※やってはいけない操作の実践は、4:10から始まります。動画がご覧いただけない方は動画下部のダイジェストをご覧ください。
無理なハンドル操作はNG!
ハイドロプレーニング現象が起きるとハンドルがいきなり軽くなり、どんなにハンドルを切っても車がその方向に曲がってくれません。
「あれ?」と思ってどんどんハンドルを切ってしまうと、水溜りを抜けた瞬間に切れ角の分だけ急に車が曲がってしまい、スピンしてしまいます。
びっくりしてブレーキを踏むのもNG!
水の上に乗っている間は、ブレーキを踏んでも地面を踏みしめられないため、車の速度が落ちません。
ハンドルと同様「あれ?」と思ってブレーキを踏み続けてしまうと、水溜りを抜けた瞬間にいきなりブレーキが効き、車はコントロールを失ってしまいます。
ハンドルも同時に切ってしまっていると、車のバランスが大きく狂い、思わぬ方向に曲がったりスピンしたりと、大変危険です。
ゆっくりしたハンドル操作&ブレーキを踏まないことが大切
ハンドルやブレーキが効かないと感じた場合は、無理に操作しないことが大切。
車線変更や加速などは行わず、水溜りを越えるまで待つのがベストな選択です。
【実践】その他気をつけたいことは?
摩耗タイヤ、空気圧の低いタイヤ
タイヤの溝が少なくなっている、空気圧が低下している場合、排水能力が低下してしまいます。
高速道路を走る前は、タイヤの状態を確認しておきましょう。
過剰水圧
過剰水圧とは、重たい車を追い越す際、その車がかき分けた水を一気に受けてしまうことを指します。
例えばトラックが前を走っている場合、トラックがかき分けた波が自分の車に当たり、より多くの水をタイヤで受けてしまうため、注意が必要です。
FF車(MT)はエンジンが停止しないように注意!
FF車は前輪部が重いため、他の駆動方式に比べてハイドロプレーニングが起こりにくいです。
しかし、高速走行時にハイドロプレーニング現象が起きたとき、ブレーキを踏むとタイヤがスピンしてエンジンストール(停止)してしまうことがあります。
FF車の場合はエンジンが停止しないように注意し、万が一止まってしまったらクラッチを断続的に切ってエンジンを回復させてからアクセルを踏みましょう。
【実践】ハイドロプレーニングが起きたらやるべきことは?
では、次に中谷キャスターにハイドロプレーニング中の動作を実践してもらいましょう。
続きは動画をご覧ください!
※やるべき操作の実践は、9:28から始まります。動画がご覧いただけない方は動画下部のダイジェストをご覧ください。
中谷キャスターが4速で110km/hの速度で水溜りに侵入!
…スピンしない…だと…
何が起きたのでしょうか。
中谷キャスターが何をしていたのか、見ていきましょう。
ステアリングはまっすぐ
アクセルを緩める
ブレーキは踏まない
ハイドロプレーニング現象が起きたら「なにもしないことをする」
中谷キャスターの名言が全てを物語っていますね。
じっと待っていれば、やがて水の抵抗で車速が落ちます。
無理に自分で車を操作しようとしないことが大切ということですね。
パニックになってしまったら、中谷キャスターのありがたい声を思い浮かべましょう。
サーキットで雨が降ったときのテクニックは?
公道でのハイドロプレーニングの対処法をご紹介しましたが、レーサーは普段どのように対処しているのでしょうか。
雨の日の富士スピードウェイのコーナー・300Rを想定してシミュレーションしてもらいました。
300Rはゆるやかな角度のハイスピードコーナー。
ヘアピンを抜けたマシンが加速しながら駆け抜けるため、普段であればスピード勝負になる場所です。
レーサー達は雨の日にはどんなテクニックで300Rを走っているのでしょうか。
晴れの日とは異なるライン取り
中谷キャスターがマーキングしてくれた2つのラインは、大きく異なっています。
タイムを競うためのラインは「レコードライン」と呼ばれる、黒色のライン。
しかし雨の日は水溜りを避けるために赤色のラインで走るそうです。
中谷キャスター曰く、
「グリップのある外側のタイヤを水溜りに乗せない」
「川(水が流れているところ)の上でブレーキングをしない」
ようなライン取りが大切とのこと。
一瞬で適切なラインを見極める技は、やはりプロそのものですね。
スピードではなくコントロールを優先させる
同じくレーサーの土屋圭市さんの走行動画からもわかるように、ぐんとスピードを落として走行していますね。
中谷キャスター曰く、
「制動にじっくり時間をかける」
「川の上ではステアリングを切らない、まっすぐ進む」
とのこと。
スピードが命のレーサーですらスピードをぐっと落として、ハイドロプレーニングによるスピン、クラッシュを避けています。
それほど、ハイドロプレーニング中の車はコントロールできず、危険な状態にあると言えるでしょう。
国産スポーツカー 耐ハイドロ性能チェック
最後に、国産スポーツカーの耐ハイドロ性能を比較してみましょう。
今回は駆動方式や車重の異なる4車種を用意し、80km/hでのスラローム走行に挑戦しました。
※【】内は駆動方式を示しています
三菱 GTO【4WD】
4WDのGTOは比較的重い車です。
重い車の方がハイドロ性能がいいため、60km/hまでスピードを落とせば制動できました。
マツダ RX-7【FR】
FRは他の駆動方式に比べて前後の重量バランス配分がよいレイアウトです。
軽量化にこだわったRX-7は、GTOより400kg軽いスポーツカー。
排水性はいまいちですが、車体が軽いのでタイヤが太くてもスラロームはそこそこ制御できました。
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トヨタ スープラ【FR】
こちらはRX-7に比べて重いスープラ。
重いため排水性能はRX-7よりもよいはずですが、タイヤが太いためスラロームは苦手のようです。
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ホンダ NSX-R【MR】
ミッドシップレイアウトは車の中心に重いパーツを配置しているため、フロントが軽くなっています。
そのため、NSXはハイドロプレーニング現象が起きやすい車種と言えるでしょう。
リアが重いためスラロームも苦手で、制動がかなり難しいようでした。
この弱点はメーカーも把握しており、NSXにはオプションで排水性能が高いアクアトレッドタイヤも発売されました。
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【結論】80km/hでは全車種がハイドロプレーニング状態に
公道でも80km/hは体感しやすい速度域です。
しかし、その速度でハイドロプレーニングが起きた場合、高性能なスポーツカーであっても制御できないことがわかりました。
おかしいな?と思ったら「やってはいけないことをしない」ことが大切
では、最後におさらいです!
ハイドロプレーニング現象が起き「いつもと違うな?」と感じても、
なにもしないことが大切!
車速を落とすことが最も安全な対処法ですので、水の抵抗で車速が落ちるのを待ちましょう。
無理なハンドル操作やブレーキは禁物です。
今回は「ハイドロプレーニングが起きてしまったら」という視点で解説していただきましたが、ハイドロプレーニングが起きないようスピードを出しすぎないことが大切です。
雨の日の高速道路はスピードを落とし、車間距離を十分取って走行しましょう。
雨の日も安全運転を心がけてくださいね。
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