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ランクルと同期の「パトロール」とはどんな車?歴代車種も紹介

ランクルと同期の、「日本では知られざる名車」

2代目サファリを海外でリメイク?!現行パトロールのオフロード特化仕様「スーパーサファリ」

ランドクルーザーと同期なのに、どこでこんな差がついたのやら…と不思議に思うのが、一時はサファリの国内名称で販売していた日産のクロカン車、パトロールです。

海外、特に中等のお金持ち向け砂漠の高級SUVとして今でも人気だそうですが、そういうトコで売りさばくため巨大化したボディは日本じゃ不向き…かといえば、ランクル300とそう変わるわけでもありません。

おそらく、結局はランドクルーザー系しか生き残れなかったほど国内需要が少ない中、日産がこのジャンルの日本向け販売に力を入れなかったから、という事だとは思います。

エルグランドやキャラバン同様の苦戦を強いられるくらいなら、国内販売は逆輸入業者に任せ、正規販売は海外のみにしておいた方が正解なのでしょう。

戦時型トラックを思わせる無骨で実用性一辺倒の初代

ジープのフロントグリルを変えてみました!という体だった初代パトロール

初代パトロールが誕生した事情は三菱 ジープやトヨタ ランドクルーザーと全く同じ、1950年6月に勃発した朝鮮戦争の煽りで希薄になった日本本土を防衛するため、後に陸上自衛隊となる警察予備隊が発足、そのための防衛装備として国産車両が求められた事にあります。

三菱、トヨタ、日産から提出された試作車両を比較評価したとはいえ、米軍も使っていて有事の際には都合がよいジープの優位性は明らかな出来レースで、トヨタと日産は当然のように落選、トヨタはトヨタジープBJ型(※)として警察や他の官公庁に販路を求めました。

(※後に「ランドクルーザー」へ改名)

日産の4W60型もトヨタ同様の販路を求めて「パトロール」と命名、警察などで使われますが、トヨタジープよりもジープソックリのデザインに、フロントグリルはオリジナリティを求めた結果か、戦時急造型トラックのように無骨な形状となりました。

これが「鉄仮面」と呼ばれて初代パトロールの特徴となりますが、後にメッキパーツを追加するなど民生向けに細々とした変更をするも、最後まで軍用車両上がりの無骨さを抱えたまま1960年まで販売したあたりは、トヨタより保守的だったようです。

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ジープ顔にイギリス製クロカン風ボディの2代目

まさに和製ディフェンダー!な2代目パトロール

しかし、1950年代も末になると建設業などより幅広く民生用途に販路を広げるべく、当時としてはカッコイイデザインへとモデルチェンジが決まって1960年に2代目パトロールを発売。

丸目2灯ヘッドライトやフロントグリル周りに何となくジープへの未練を感じさせますが、それ以外は直線的なフェンダーの角に丸みを帯び、同じく丸みを帯びたボンネットが一弾高くなったあたりはイギリスのランドローバー ディフェンダー風です。

実際、この頃から輸出されたらしいパトロールはまず英連邦構成国で右ハンドル圏のオーストラリアへ輸出、続いて北米にも輸出されますが、面白いのは「ダットサン」ブランドの販売店の店頭に並んでも「ニッサン」ブランドのままだったこと。

おそらく現地では「ニッサンってなんだ?」(※)と思ったことでしょうが、特に北米では1980年代にニッサンブランドを世界展開するまで、ニッサンブランドで本格的に販売したのは2代目パトロールが唯一だったようです。

(※当時の日産ブランドは日本国内向けのトラックやバス、高級車向けで、大半はダットサンブランドだった)

海外での人気はランドクルーザー同様に上々だったようですが、日本国内での民生用途は今ひとつだったのか、「ファイヤーパトロール」と呼ばれる消防用途などがよく知られており、後述するサファリでも2代目まで消防仕様がラインナップされています。

ちなみに筆者の住む宮城県仙台市でも水道局の業務用車両として長らくこの2代目パトロールが使われており、おそらくは予備車両の扱いか動いているのは見かけず、2011年3月の東日本大震災からしばらくして落ち着いた頃、いつの間には姿を消していました。

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日本では「西部警察」劇中車のイメージが強い3代目

後にミストラルやe-NV200を日本へ輸出する、スペインのモトール・イベリカで現地生産を始めた3代目パトロール

1960年から長らくモデルチェンジもせず販売され続けた…という意味で40ランクルと同じ流れをたどった2代目パトロールでしたが、1970年代後半には静かなブームが始まっていた初期のRVブームに乗っかり、1980年にモデルチェンジした3代目は「サファリ」へ改名。

ただ、この頃の初期RVブームへ合わせてデビューしたり、マイナーチェンジなどで装いを新たにしたクロカン車の多くは「ラダーフレームとリジッドサスにトラック用エンジンを載せ、外観こそ飾ったものの内装は軽視されて快適性はイマイチ」というのがほとんど。

その中でマトモだったのが三菱の初代パジェロで、改良やバリエーション拡大で1990年代RVブームでのクロカン大ヒットへ向け下地を作るのですが、3代目パトロール改め初代「サファリ」も、RVとしてはイマイチだったクチです。

引き続き「ファイヤーサファリ」ともいえる消防仕様は人気だったものの一般向けとして見かけるのは稀でしたが、知名度だけは抜群となったのは伝説の石原軍団刑事ドラマ、「西部警察」の劇中車として多用されたからでしょう。

西部署の特別機動車両として指揮・通信用途といった裏方任務から、放水銃で悪党を蹴散らす大活躍ぶりだったものの、マシンX(C210スカイラインGTターボ)やRS軍団(R30スカイラインRS)より特撮っぽかったためか、販売には結びつかなかったのかもしれません。

2代目に引き続き日本国内での人気低迷とは裏腹に海外では人気を保ち、スペインでの現地生産開始など、着実に販路を広げていきました。

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カッコよかったが流行に乗れなかった4代目

パリダカの市販車無改造クラスで疾走する4代目サファリ

3代目の輸出用生産や現地生産が継続される一方、より高級用途を目指して1987年に4代目が登場、今度ばかりはRV的なクロカンルックで現在のSUV的なカッコよさがあり、オーバーフェンダーで拡幅したワイドトレッド版など安定感が抜群の印象です。

後に過剰装飾だ、衝突時歩行者保護の観点からはむしろ危険だと非難される巨大で無骨なバンパーガードも1990年頃までは流行の最先端をいくファッションで、数はそう多くなかったとはいえ、街を走っていると目立つので記憶に残るクルマでした。

サスペンションもリーフリジッドからコイルサスを採用、豪華内装と合わせて快適性は飛躍的に向上し、トヨタのランクル60にも十分対抗可能でしたが、1989年に発売されたランクル80が「クロカン版クラウン(あるいはセルシオ)」と言われた豪華内装で逆転。

さらに1990年代に入ってしばらくすると、無骨さよりも都会でも絵になるスタイルがクロカンに求められるようになり、そうなるとカクカク、ゴテゴテしたサファリはダイハツのラガーやロッキー同様、時代遅れの存在として不人気になってしまいました。

クロカンとしての性能は十分以上でしたし、マニアからすると存在感抜群、ランクルなど目じゃない!と鼻息荒く、筆者の友人も憧れのサファリをついに買った!と電話してくるくらい熱烈なファンをつかんではいたものの、多数派にはなれなかったようです。

海外版「パトロール」はパリ〜ダカールラリーの市販車無改造クラスへ出場して、テラノともどもクラス優勝して人気を集めるなど、海外では引き続き好評だったものの、日本市場では日陰の存在で終わりました。

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日本ではもう積極的に売らな描くなった5代目

ちゃんと売れば日本でもランドクルーザー100へ対抗できたのか…5代目パトロール

1997年に日本では3代目サファリ、海外では引き続き5代目パトロールとしてモデルチェンジ。

この頃から完全に高級ヘビーデューティーSUVとしてランクル100の対抗馬となり、中東やオーストラリアの砂漠では頼りになるタフネスぶりから人気車種の座を不動にするも、それはあくまで海外市場での話です。

日本ではファイヤーパトロール以来の消防仕様がラインナップされなくなった代わりに、先代の無骨さも消えてキャンパー仕様などもラインナップ、売り方次第ではランクルのシェアを切り崩すチャンスだったかもしれません。

しかしその頃、日本市場での日産とその販売店は、販売不振に経営悪化で火の車、高級車は大ヒットしたエルグランドで手一杯だったのかサファリの販売には熱心ではなく、モデルチェンジしていた事すら知らなかったユーザーも多かったのでは?

販売は少数にとどまり、街で見かける事も稀で、その割にルノー傘下入り後のリバイバルプランで車種リストラの対象にもならず細々と販売していましたが、ついに2007年に日本での販売を終了、海外専売車となってしまいました。

なぜか海外で「サファリ」リメイク登場、ニスモもある6代目

6代目パトロールNISMOは、記事冒頭の写真で紹介したスーパサファリと異なる都会派仕様で、他にオールラウンダーな標準仕様もあり

いくら日本で売れなくとも、海外には中東の砂漠でヘビーなSUVをガンガン走らせたいお金持ちや、居住性とタフネスぶりを兼ね備えたオフローダーがいくらでも欲しい国連など、パトロールを求めるユーザーはたくさんいます。

そんなわけで5代目の生産・販売を継続しつつ2010年に6代目パトロールが登場、4輪ダブルウィッシュボーン独立懸架や最新のオートマや各種電子制御を備えたハイテクなヘビーデューティーSUVとなりました。

オフロードのみならずオンロード(舗装路)での走行性能も重視、「砂漠から都会のオフィスまで走れるオールラウンダー」として人気となっており、都会派モデルとしてパトロールNISMOもラインナップ(※)。

(※日本でも富士スピードウェイでSUPER GT用FRO─ファースト・レスキュー・オペレーション─車両として使用)

面白いのは2022年に追加された「スーパーサファリ」で、日本では結局人気車になれなかった2代目サファリのルックスを6代目で再現したリメイク版、当時のファンなら涙を流して懐かしがりそうな仕様ですが、これが海外専売ですから悲しいものです。

こうした日本のオフローダーファンには涙モノのモデルが登場するたびに「日本での販売再開待望論」はあるものの、キャラバンがハイエースに、エルグランドがアルファードに敗北しているところへ現行パトロールを持ち込んでも、厳しいのは目に見えています。

既にランクル300のオーダーを入れて数年ごしの納車を待ち望んでいるユーザーが、退去してそれを放り出し、パトロールを注文するというのも考えにくいので、このまま日本は放っておいて、「世界のパトロール」でいいのかもしれません。

どうしても欲しい場合は、姉妹車のアルマーダやインフィニティQX80同様、逆輸入車を取り扱っているショップへ相談してみましょう。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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