- 運転免許の取得(129)
玉掛けに必要な資格とは?技能講習や試験から具体的な合図などについても
玉掛けは、クレーン運転士の資格と並んでクレーンを使用するときに必要な資格ですが、知らない人も珍しくない、ちょっと地味な資格です。建設物流の現場ではなくてはならない玉掛けの資格や玉掛け作業者がクレーン運転士への指示に用いる合図などを紹介します。
玉掛けとは?
「玉掛け」という言葉は一度は耳にしたことがあるはずです。建設や物流、もしくは大きな工場などで働く人にとってはごく普通に馴染みのある言葉ですが、もしかすると聞いたことがないという方のほうが多いかもしれません。
玉掛けとは、クレーンで吊り上げる荷をかけ外しする作業のことです。クレーンを使用するときには必ず玉掛けの資格を保有する人が立ち会って、荷のかけ外し作業を行わなければなりません。
クレーンを使用する時に必要な人材
クレーンを運転するための資格と並んで、クレーンを使用する場所には、玉掛けの資格を持った人が必ずいなければいけないのです。
しかし、クレーン運転士に資格が必要なことは知っていても玉掛けという資格は、存在すら知らない人も多いようです。玉掛けは実務経験がなくても取得することができ、クレーン運転の免許と比較すると、未経験でも取得しやすい資格と言われています。
玉掛けの資格について
建設や物流、製造業などのクレーンを使用する職場で働く人は、玉掛けの資格を持っていれば、何かの時に役立つことがあるかもしれません。また、そうした業界への就職、転職やキャリアアップにもきっと役立つでしょう。
玉掛けの資格に関する情報、玉掛けの仕事を少しでもイメージできるよう、玉掛け作業者がクレーン運転士に指示を出すときに用いる合図などを紹介します。
クレーン作業の安全を守る玉掛作業者
玉掛作業者とは
玉掛作業者は、労働安全衛生法第61条、第76条にて規定されている「玉掛け技能講習」及び「玉掛け特別教育」を修了した技能者です。
荷重1t以上の揚荷装置およびクレーン、移動式クレーン、デリックの玉掛業務を行う技能者を認定する国家資格です。この資格を取っていないと玉掛け作業はすることはできません。
クレーン運転士だけではダメ?玉掛け資格が必要な理由
クレーンを運転しながら玉掛け作業を行う場合、クレーン運転免許(または技能講習か特別教育修了)とは、別に玉掛けの資格が必要です。
そして労働安全衛生法によって、吊り上げる荷の重さと関係なく、1t以上の能力のクレーンを使用する場合には「玉掛け技能講習」の修了者が必要と定められています。
クレーン等の能力が1t未満の場合は、玉掛け特別教育(労働安全衛生法第59条第3号、労働安全衛生規則第36条第19号)で可とされていますが、日本では該当するクレーンがあまり使用されていないのが現状です。
荷を上げ下ろしする場には玉掛作業者が必要
タワークレーン等のように運転席と玉掛け作業をする場所が離れている場合、その都度、移動して両方の作業を行うことが難しいため、クレーン運転士の資格とは別に玉掛け作業の資格が設けられています。
鉄筋工、鳶などの職種はクレーンの運転はせず、玉掛け作業のみを行う場合が多いです。
玉掛は、荷を吊り上げるための準備から荷を降ろす場所での玉はずし作業まで、すべて有資格者が必要です。荷を外す場所が異なる場合は有資格者が移動するか、別の有資格者が必要になります。
有資格者の下では資格が無くても補助的な業務を行なうことができますが、補助作業者だけで玉掛け作業をすることはできないので、一定期間、補助業務を経験すると技能講習の講習が短縮されるなどの優遇措置があります。
ヘルメット用ステッカー 資格者用
玉掛作業員を判別しやすくするためのステッカーです。
玉掛けに必要な資格その1【特別教育】
特別教育は企業などの各事業所や各都道府県の登録教習機関で実施されています。特別教育を修了すると、吊上荷重1t未満のクレーン・デリック・移動式クレーン・揚貨装置の玉掛け作業ができるようになります。
ただし、吊上荷重1t未満のクレーンのクレーンなどが少ないため、残念ながら需要はあまり多くないようです。クレーン取扱い業務特別教育規程(昭和47年労働省告示第118号)で規定された、9時間以上の講習と実技になります。
費用 | 11,330円~18,000円 | ※事業所による |
学科 | クレーン等に関する知識 | 1時間 |
クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 | 2時間 | |
クレーン等の玉掛の方法 | 2時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実技 | クレーン等の玉掛 | 3時間 |
クレーン等の運転のための合図 | 1時間 |
玉掛けに必要な資格その2【玉掛け技能講習】
技能講習は都道府県の登録教習機関において実施される、玉掛け技能講習規程に基づく、学科2日、実技1日の合計19時間以上の講習です。ちなみに合宿型の講習もあるようです。
修了済みの特別教育の実務経験などによって、受講を免除される科目があります。学科、実技ともに修了試験があります。学科は1時間のマークシート式で、落とすことが目的の試験ではないので、それほど難解な問題ではないようです。
技能講習を修了すると、吊上荷重1t以上を含めた全てのクレーン・デリック・移動式クレーン・揚貨装置の玉掛け作業ができるようになります。
費用 | 22,000円~26,000円 | ※事業所による |
学科 | クレーン等に関する知識 | 1時間 |
クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 | 3時間 | |
クレーン等の玉掛の方法 | 7時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実技 | クレーン等の玉掛 | 6時間 |
クレーン等の運転のための合図 | 1時間 |
玉掛けの作業手順と合図
玉掛け作業の手順と玉掛作業者がクレーンを運転する際に使用する合図を紹介します。
玉掛け作業の手順
玉掛作業者が荷物を吊り上げる際の手順です。この時に定められた合図を用いて、クレーンを誘導します。
1.荷物にふさわしい吊具を選ぶ。
2.荷物の重量、重心を勘案し、吊具を掛ける位置を決める。
3.ワイヤーなどの用具の損傷を確認する。
4.手信号や笛を使ってクレーンを誘導する。
5.荷物が地面を離れた段階でクレーンを止め、フックの状態や傾きなどを確認する。
6.周囲に人が居ないことを確認する。
7.荷物を目的地へ誘導する。
玉掛け合図その1【手(旗)と笛による合図法】
玉掛作業の合図法をまとめた表示板です。試験対策にお部屋に貼っておくのもいいかもしれません。
クレーン運転士との距離が近い場合は、手(旗)と笛による合図でクレーンを誘導します。この合図は玉掛け特別教育や技能講習とクレーン運転士免許で共通して習得するものです。そのため玉掛作業者、クレーン運転士の双方が熟知していることが前提になっています。
意味 | 手(旗) | 笛 |
呼び出し | 片手を高くあげる | 長く一声 |
位置の指示 | 指で方向を示す | |
巻き上げ | 片手を上に上げ輪をかく | 短く二声、間を置いて |
巻き下げ | 手のひらを下にして下へ | 短く三声、間を置いて |
ブーム上げ | 親指を立てて上へ | |
ブーム下げ | 親指を立てて下へ | |
水平移動 | 手のひらを移動方向へ | |
微動 | 小指で巻上げ・巻下げ | 操作指示前に短かく一声 |
ブームを伸ばす | 拳を頭に乗せた後、親指を立てて握りこぶしを斜め上へ | |
ブームを縮める | 拳を頭に乗せた後、親指を下に向けて握りこぶしを斜め下へ | |
停止 | 手の平を高く上げる | 中長一声強く |
急停止 | 両手を広げ高く上げて振る | 短く連続して |
作業完了・終了 | 挙手又は頭上に交差 | 短く連続して |
玉掛け合図その2【無線による合図法】
タワークレーンなどのクレーン運転士との距離が遠く、手や笛の合図が届かない場合は無線を通して合図を送ります。この際、合図者からみた左右ではなく、運転士から見た左右で合図を出します。
フックを巻き上げる | 「ゴーヘッド!」「巻いて!」「巻き上げて!」 |
フックを巻き下げる | 「スラー!」「下げて!」「降ろして!」「巻き下げて!」 |
ブームを起こす | 「親ゴー!」「起こして!」「ブーム上げて(起こして)!」 |
ブームを伏せる | 「親スラー!」「寝かせて!」「伏せて!」「ブーム下げて(倒して)!」 |
ブームを伸ばす | 「伸ばして!」「ブーム出して!」 |
ブームを縮める | 「縮めて!」「引っ込めて!」「ブーム縮めて!」 |
旋回する | 「右(左)旋回!」「右(左)へ回して!」 |
玉掛けは未経験からでも取得できる資格!
玉掛作業とは、吊り上げた荷物が落下して大けがや死亡事故につながりかねない重要な作業ですので、玉掛作業者は国家資格に指定されています。
現場での需要は高く、年収も年々増加傾向です。将来のために何か資格を取りたいと思っている方や、手に職をつけておきたいと思われる方は、取得しておいてメリットが多い国家資格ですので、ぜひ取得を検討してみてください!
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