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ボクサーエンジンとは?スバルとポルシェがこだわる水平対向エンジンを徹底解説!

乗用車用水平対向エンジン・ボクサーエンジンと歴史

スバル BRZのGT300参戦車両に搭載されたEJ20エンジン

水平対向エンジンとは、左右に向かい合ったピストンが水平方向に打ち合うように往復するエンジンのことです。その様子を、ボクシングのボクサーが互いにパンチを打ち合う姿に見立てて、「ボクサー(BOXER)エンジン」と呼ばれています。

日本国内では、スバルがその生産の中心になっており、BRZWRXフォレスターレヴォーグなどに搭載されます。BRZと姉妹車の86は、スバルとトヨタの共同制作で、部品のメーカーロゴが[SUBARU]と[TOYOTA]で入り交じっていて、オイル交換しているときや、スタッドレスタイヤに交換しているときなど、どちらのクルマを作業していたか分からなくなることもしばしばあります。

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古くは、他にも個性的なクルマが多く、ダイハツ BEEや、トヨタS800、姉妹車のパブリカも水平対向エンジンで、海外では、ポルシェ911などもそうですが、フォルクスワーゲンのタイプ1(通称:ビートル)は、ポルシェも深く関わりがあり、このクルマは後のポルシェ356(映画トップ・ガンでは、教官の女性が乗っていた)の基となるポルシェ・タイプ64のベースとなります。
そして、アルファロメオ好きでないとご存じない方も多いと思いますが、145も水平対向エンジンで、ランチアにも採用例があります。

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ところで、今もなお水平対向エンジンを、クルマ向けに量産し続けるスバルとポルシェでは、どちらが歴史的に先なのでしょうか。少し歴史を復習したいと思います。

自動車向け水平対向エンジンは、時代を大きくさかのぼります。
クルマ好きといわれるアドルフ・ヒトラーが、アウトバーンの建設や、自動車税などの撤廃を主導しました。

富裕層だけでなく労働者層もクルマが持てるよう、1934年頃国民のためのクルマ:国民車構想計画(フォルクスワーゲン)を立ち上げました。

そして、そのクルマの設計をRDA(ドイツ帝国自動車産業連盟)から、現在のポルシェAG(AGは日本でいうところの株式会社)の前身であるポルシェ設計事務のフェルディナンド・ポルシェ博士に依頼したという話は、クルマ好き、歴史好きの知るところでしょう。

1934年頃、現在の日本で水平対向エンジンを製造するスバル(富士重工)は、まだ中島飛行機株式会社に名前を変更して約3年目、その前年に「寿」という星形9気筒の日本初、国産エンジンの試作を完成させているにとどまります。

このことから、クルマ向け水平対向エンジンを先に量産しているのは、フォルクスワーゲンといえます。それは、ポルシェ博士が先行して作り始めたという認識で間違いないでしょう。

結局ポルシェ博士が設計した当時のフォルクスワーゲンは、ポルシェのクルマといっても大きな間違いではなく、実質ポルシェが先に乗車用水平対向エンジンを作り始めたといっても良いでしょう。

水平対向エンジン(ボクサーエンジン)と、他エンジンの違い

3種類のエンジン

まず、直列エンジンは一本のクランクシャフトに対してシリンダーが一直線に並んだもので、自動車、オートバイ、船舶、飛行機など幅広く利用されています。

自動車では、RB26は直列6気筒、B18Cは直列4気筒といったものから、フィットヤリスの小型車、トラックやバスも採用しています。軽自動車業界では、直列4気筒か、3気筒かでマウントの取り合いになることもしばしばあるほどポピュラーなエンジンです。

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現在は、採用例が一部のメーカーや車種に限られる水平対向エンジンと比較すると、構成する部品やロジックは他のレシプロエンジンと一緒ですが、部品のレイアウトが全く異なり、その見た目もさることながら、クルマ全体のパッケージングに寄与する基本特性も異なります。

次に、V型エンジンは文字通り、Vの字型にシリンダーを配置したエンジンです。

クランクシャフトを挟んだバンク角がさまざまあります。有名なのは、ハーレーダビットソンの72°、一般的によく利用される60°や90°、フォルクスワーゲンや、傘下のベントレーなどにはV型をV字に組んだVV形状のW型と呼ばれる派生エンジンもあり、最後に180°のものもあり、見た目には水平対向エンジンと似ている場合もありますが、それは180°V型エンジンと呼ばれ、水平対向エンジン(ボクサーエンジン)とは区別されます。

区別される理由は、クランクシャフトを正面にし、向かい合う左右バンクで対象にピストンが動く水平対向エンジンと、ピストンが別々の動きをする180°V型エンジンの特性が異なるものだからと考えられます。

180°V型エンジンの採用例は、1991年のフェラーリ512TRの12気筒エンジンや、その前身のテスタロッサがこれにあたります。このティーポ113Gというエンジンは、非常にまれなエンジンといえるでしょう。

この動画を見ていただければ、どういった動きか理解していただけると思います。
V型エンジンはクランクシャフトのクランクピンが共通の位置になっており、向かい合う左バンクのシリンダーと、右バンクのシリンダーが同時に爆発・圧縮することはありません。それと異なり、独立したクランクシャフトピンを用いる水平対向エンジンは、左右対称に動作するように作られています。

つまり、見た目が酷似している、水平対向エンジンと、180°V型エンジンが、クランクシャフトピンの位置による爆発・圧縮する順番が大きく異なり区別されるのです。

スバルが水平対向エンジン「ボクサーエンジン」を採用したきっかけ

第二次世界大戦後、戦後の復興から経済成長を日本は遂げていきます。そのころスバルが作っていた市販の乗り物は、1946年に1号車が完成した、スクーターのラビットシリーズや、1958年の軽四輪のスバル360(通称:テントウムシ)でした。

1966年スバル初めてとなる乗用車「スバル1000」は、FR車などの後輪駆動が主流の当時(スバル360はRR)という時代に作られます。スバル1000はそんな時代背景の中、画期的なFF車としてデビューします。

画期的といわれた理由は、当時のFF車が、走行安定性に優れ、優れた操縦性があるという認識がされていたこと、デメリットもありFFにすると、横転しやすく、ハンドルも重くなるなどのこともあり、横置きエンジンというのは、ミッションとエンジンが並んでエンジンベイに収まるため、左右のバランスが悪く横転しやすいという当時の問題があったこととスバルはしています。

そこでスバル1000は、「走りの良さ」と「積極安全性」をコンセプトに作られます。

コンセプトの実現のため、スバルは飛行機の星型エンジンの技術をもっていたことに着目し、縦置き水平対向エンジンで左右のバランスをとり、さらに低重心化できる水平対向エンジンは、FF車のデメリットを相殺できるものだったとしています。

これに搭載されるEA52型エンジンとそのレイアウトは、脈々と引き継がれレオーネやインプレッサフォレスターレヴォーグなど、度重なる排気ガス規制や、時代のニーズの変化に対応し、改良されEJ型、そしてFB型へと進化していきます。

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©Jan/stock.adobe.com
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水平対向エンジン(ボクサーエンジン)のメリット

メリットとデメリットは表裏一体であるといわれます。

例えば、小型で運転しやすい車体というのはメリットですが、大きな荷物を車載することは困難といった具合です。

これから紹介する水平対向エンジンのメリットやデメリットは、レシプロエンジンという意味では一般的な構造をしていますが、直列エンジンやV型エンジンに比べ、レシプロエンジンの中では特徴的なエンジンといえます。

1.水平対向エンジンは振動が少ない

左右のピストンが水平方向に往復することで互いの力を打ち消しあい、振動が少なくて済みます。
通常のエンジンはクランクシャフトの回転運動による振動を軽減するため、バランスウエイトと呼ばれる重りがつけられるか、バランサーシャフトが組み込まれています。

基本的な構造は、フルカウンタークランクシャフトでは、1つのシリンダー部分に対し1つずつカウンターウエイトが設けられます。セミカウンタークランクシャフトでは、複数のシリンダーをカウンターウエイトや、バランサーシャフトでバランスさ、振動を防止しています。

他と比較して振動が少ないという、水平対向エンジンのクランクシャフトが完全バランスといわれるのは、フルカウンタークランクシャフトに取り付けるバランスウエイトが、反対側のピストンでバランスウエイトの代用がされることで、バランスをとるだけの重りでなく、エンジンとして機能させることができるためだと考えられます。

フルカウンタークランクといってもなかなかイメージしにくいと思いますが、例えば汽車の動輪には、ピストンの運動を伝える駆動用のリンク(クランクピン)がつながっています。

車輪の中心から離れた位置にそれは取り付けられますが、このままでは車輪の片側が重たくなってしまいます。それによる振動を防ぐため、車輪に取り付けられたリンクの反対には、重り(カウンターウエイト)が取り付けられバランスをとっています。

水平対向エンジンのクランクシャフトは、左右180°方向にピストンが同時に動く構造から、フルカウンタークランクシャフトと同じような理想的な重量バランスを余分なく実現します。

そのため、水平対向エンジンはバランスウエイトがなくても(あるいは最小限で)低振動を実現できているといえます。

2.水平対向エンジンは低重心

重心の異なる3種類のエンジン

重心が高くなりがちな他のエンジンに対して、横に平らな水平対向エンジンは重心が低くなります。
なぜ、重さの中心である重心が低くなるかというと、エンジンが積み木のように部品が重なってできあがっているからです。

一般的な直列エンジンや、狭角のV型エンジンは、マンションのように上へ上へと部品が積み重なります。

したがって、部屋が積み重なるマンションのように重心は上へ、上へと移動します。

対して、水平対向エンジンは横へ広がる平屋のようであり、平屋であれば上下方向の変化はほとんど発生しません。
したがって、水平対向エンジンは低重心といわれています。

低重心のメリットのひとつで、旋回時のロールが軽減され、切り返しやステアリングの反応が良くなります。とはいえ、ステアリングの反応はスタビライザーや、サスペンションアームのジオメトリーによるロールセンター、ショックアブソーバーの状態や減衰速度、バネレート、車両重量、速度など影響するものが多くある中のひとつです。

ですが、その特性やセッティングに大きく寄与する重心は、個性を強調できる強力なアイテムとなります。

例えば、水平対向エンジンのEJ20と、直列エンジンの4G63は、よく比較されます。

それを搭載した、インプレッサSTIシリーズは、コーナー進入時の自由度がやや高く、AYCなどの電子制御が介入し、旋回中の姿勢を制御するランサーエボリューションシリーズに比べ融通が利き、ステアリングを切ったときのノーズがイン側に向き始めるときにはその重心の差や、水平対向エンジンに乗っているのだという感覚を体験することができるでしょう。

3.水平対向エンジンは高剛性が高い

スバル BRZのGT300参戦車両に搭載されたEJ20エンジン

水平対向エンジンや、V型エンジンはクランクシャフトを左右のシリンダーブロックが均一に挟み込む構造のため、ケース剛性が高くなります。

また、直列エンジンに対してクランクシャフトが短くて済むため、曲げ荷重に強く、軽量化につながっています。

例えば、真上からエンジンを見たときに、円を縦に4つ並べる直列4気筒エンジンは、円のサイズが1であれば、最低4を超える長さが必要になります(円同士の隙間も必要なため)。

それとは異なり、V型4気筒や、水平対向4気筒は、右バンクに2気筒、左バンクに2気筒と振り分けるため、直列エンジンと異なり横に広がりますが、前後の長さは半分近くになります。

そのため、エンジンの内部部品で最も重たいクランクシャフトの重さが、直列エンジンと比較して軽くすることができます。

そして、長さが短いと剛性に優れるというのは、数式的にも成り立っている話で、簡易強度計算の数式においても、軸の中心から支点までの距離が、かかる荷重と積算されます。

したがって、かかる荷重が同じ1であれば、長さが短くなると計算結果はそのまま小さい数字となることで証明されます。

水平対向エンジンのデメリットとまとめ

これまで述べてきたように水平対向エンジンには独自のメリットがあります。

しかし、カムシャフトが直列エンジンの倍必要でありコストがかかる上、横に広がるエンジンの構造上、エンジン周りのスペースに制限があるエンジンベイでは、余裕がなくなるといったこともあります。

例えば、狭い土地に大きな平屋を建てようとしても、広さに限りがあり平屋が入りません。

したがって、水平対向エンジンや、V型エンジンは、直列エンジンと比較して前後方向には短くできますが、左右に広がってしまい、ピストンのストロークを長くとることが難しくなります。

そのため、水平対向エンジンは低回転のトルクが薄く、性能を発揮するのはある程度エンジンが回転している状態といわれます。

飛行機では、回転を一定に保つことが重要で、発進停止をする機会はほとんどありません。したがって、乗用車向きのエンジンかといわれれば疑問ですが、AT全盛の現代日本で、その微々たる差を指摘する一般のドライバーも少ないでしょう。

前述のメリットとデメリットは表裏一体の通り、ストロークが短いデメリットがメリットになる部分もあります。高速道路などでの一定速度巡行は、他に比べ得意な特性もあるので、メリット・デメリットとしては、使い方により相殺される部分でもあります。

また、一般の方は、車屋さんやディーラーなどにクルマを預けてメンテナンスされていると思います。水平対向エンジンの整備では、エンジン回りの部品交換が比較的割高になる傾向があります。

それは、水平対向エンジンの部品のレイアウトが、上から順番に部品を外さないと下の部品にアクセスできないといったことが比較的多いエンジンだからでもあり、作業工賃が高くなる傾向がしばしば見受けられます。

かつては、さまざまなメーカーで量産された水平対向エンジンですが、他メーカーがボクサーエンジンを採用しない理由、もしくは採用しなくなった理由は、そのままデメリットの部分が採算に合わないとか、いまさら別形式のエンジンに手を出す理由がないというのが一番だと考えられます。

スバルポルシェが水平対向を作り続ける理由は、ファンやルーツを大切にする心意気なのかもしれません。

執筆者プロフィール
MOBY編集部
MOBY編集部
新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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