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メルセデス・ベンツ

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50台以上の名車と振り返る!メルセデス・ベンツ95年の歴史

戦後のダイムラー・ベンツ

1945年に自動車の生産を再開

第二次世界大戦で敗戦国となったドイツは、戦後しばらくの間自動車の製造に制限がかけられました。ダイムラー・ベンツは1946年に新しいサイドバルブの4気筒エンジンを積んだ170Vの生産を再開し、その後もディーゼルエンジンを搭載した「170D」などの改良型を製造し続けました。

「220」と「300」で始まる戦後の新型車

メルセデスベンツ 300

ダイムラー・ベンツは1951年のフランクフルトモーターショーで、戦後初の新型車として中級車の「220」と高級車の「300」を発表しました。エンジンは新開発された直列6気筒SOHCで、排気量は220用の「M180」は2.2L、300用の「M186」は3.0Lでした。300用の車体は新設計された物でしたが、220用は170系の物を流用していました。

300は戦後初の大型高級車であり、セダンクーペ、カブリオレに加えて、リムジンタイプが生産されました。

近代的なデザインの始まり「180」

メルセデスベンツ 180

1953年には170系の実質的な後継となる「180」が発表されます。この180系にはそれまでのデザインとはまったく異なる現代的な3ボックスボディが与えられ、シャシーも新設計された物でした。

当初搭載されたエンジンは戦後の170系に搭載されていた物を流用した4気筒のサイドバルブでしたが、ディーゼルエンジンを搭載した「180D」も1954年に追加されています。

180系モデルは上級版の「190」とそのディーゼル版「190D」をラインナップに加えるなど、各部に改良を受けながら製造が続けられました。

「220」も近代化された3ボックスへ

メルセデスベンツ 220

古い170系の車体を流用していた220系は、1954年に新しい車体を与えられて近代的なデザインの第二世代へ進化します。新しい車体は180系の物をベースとしたもので、直列6気筒エンジンを搭載するためにフロントセクションが伸ばされ、ホイールベースが延長されていました。

1956年に、より高性能な「220S(Sはスーパーの意味)」が発表され、170系の車体を使い続けていたクーペとカブリオレにも新しい車体が与えられました。220Sの登場によって220は生産中止となりますが、全長とホイールベースを70mm短縮し、装備を簡素化した廉価版の「219」がラインナップされました。

1958年には燃料噴射装置を備えた「220SE」を発表、その性能の高さは大いに評価されました。

フィンテールを持つ新しい「220S/SE」

メルセデスベンツ 220SE

1959年に220S/SEはフルモデルチェンジを行ない、第三世代へ移行。

当時アメリカ車を中心にトレンドなっていた「フィンテール」を取り入れた、直線基調のデザインに変更されました。セダンに続いてクーペとカブリオレもモデルチェンジを受け、1961年には3.0Lエンジンを積んだアッパーグレードモデル「300SE」が追加されています。

この300SEの登場によって、1951年から改良を行ないつつ作り続けられてきた300シリーズは生産を終えることになりました。

大型高級ラインは一旦ラインナップから消えますが、1963年には大型「超」高級車である「グローサー・メルセデス」こと「600シリーズ」が発表されています。

コンパクトはW110系の「190」へ

メルセデスベンツ 190

1961年に180系の延長線上にあった190の第二世代が登場し、220系をベースにホイールベースを短縮したフィンテールを持つボディデザインを持つ「W110」系になりました。

前モデルから引き継ぐ1.9Lのガソリンエンジンとディーゼルエンジンを搭載したW110系は1965年のマイナーチェンジでガソリン、ディーゼル共に排気量を2.0Lへとアップ、「200/D」となり、2.3Lの直列6気筒エンジンを搭載した「230」もラインナップに加わりました。

モータースポーツへの復帰

メルセデスベンツ 300SL ガルウィング

戦後しばらくの間レースから離れていたダイムラー・ベンツですが、1952年にプロトタイプレーシングカー「300SL」(W194)で国際スポーツカーレースに参戦。メキシコで行なわれた「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」などで勝利しました。

それから2年経った1954年のニューヨークモーターショーで、ダイムラー・ベンツは新しいスポーツカーを発表します。

プロトタイプレーシングカーと同じ「300SL」と名付けられたこの車は540K以来の本格的なスポーツカーで、クーペとロードスターの2タイプのボディが用意され、廉価版となる「190SL」も同時にデビューしました。クーペボディは、上方に跳ね上がる「ガルウイング」タイプのドアを備えているのが特徴で、搭載されるエンジンは300系から流用されたSOHC直列6気筒3.0LのM188をチューニングしたもので173馬力を発生しました。

メルセデスベンツ 300SL(W198)

この市販向けモデルは「W198」と呼ばれ、プロトタイプレーシングカーとして開発されたW194を公道向けに仕立て直したものでした。公道仕様とは言え、レーシングカーをそのままの車体を持つ300SLは多くのドライバーを歓喜させましたが、事故も多く「ウィドウ・メーカー(未亡人製造機)」というあだ名でも呼ばれました。

クーペは1957年で生産が中止され、それ以降はロードスターのみが販売されました。1963年にデビューした2代目となる「W113」型の「230SL」は、よりツーリングカー的な仕上がりが強められていました。

W113は「250SL」、「280SL」と排気量を拡大していき、1971年まで製造。SLはその後もモデルチェンジを重ねてラグジュアリースポーツカーとして進化、現在は6代目となるモデルが生産されています。

【メルセデスベンツ 280SL(W113)】縦目ベンツは「走る貴婦人」

メルセデス・ベンツ SLK200

1996年に発表された「SLK」は、SLよりもコンパクトな2シーターオープンカーで、後の5代目SLにも搭載される折りたたみ式ハードトップ「バリオルーフ」が装備されていました。SLKは3代目の途中で「SLC」と名を変え、生産が続けられています。

悲劇の「SLR」と、レースからの撤退

ファン・マヌエル・ファンジオが操縦するW196R(1954年)

1954年「W196」でF1へも復帰し、ファン・マヌエル・ファンジオのドライブで2年連続勝利を収めます。

メルセデス・ベンツ 300SLR

さらに、1955年には「300SLR」でスポーツカーレースに身復帰しますが、ル・マン24時間レースで大事故に巻き込まれてしまいます。そして、その事故の責任を取るという形で、F1を含めた全てのレース活動を再び停止することになりました。

現行モデルへと繋がる車種の登場

ここからは、SクラスやEクラスをはじめとする、現在でも販売されている車種の祖となるモデルを取り上げていきます。

高級セダンの王様「Sクラス」

歴代Sクラス

6気筒シリーズの第四世代「W108」

メルセデス・ベンツ 250SE

220系の流れを汲む6気筒エンジンを搭載したミディアムサイズシリーズは、1964年に第四世代となるW108系へとフルモデルチェンジします。

W108系は2.5Lの直列6気筒SOHCを積む「250S/SE」と3.0Lの「300SE」と、ロングホイールベースの「250SEL」、「300SEL」をラインナップしました。

1967年には2.5Lエンジンをベースにした2.8Lにエンジンは一本化されますが、300SELに600用の6.3LのV型8気筒SOHCエンジンを搭載した「300SEL 6.3」が登場。このスーパーセダンは、当時まだ外部のチューナーであったAMGの手によって6.8L化され、1971年のスパ・フランコルシャン24時間レースでクラス優勝。現在の「メルセデスAMG」の礎となりました。

メルセデス・ベンツ 280SE

1969年に新しい3.5LのV型8気筒SOHCエンジンを搭載したセダンの「300SEL 3.5」と、クーペとカブリオレの「280SE 3.5」を発表、1971年には4.5Lエンジン搭載モデルも追加されました。

初めてSクラスを名乗った「W116」

メルセデス・ベンツ Sクラス 450SEL

1972年にフルモデルチェンジされてW116系が登場し、初めて「Sクラス」という名称が使われました。新しい車体はリアサスペンションがスイングアクスルタイプからセミトレーリングアームタイプへと進化、エンジンは2.8Lの直列6気筒DOHC、3.5Lと4.5LのV型8気筒SOHCの3タイプが用意されていました。

1975年には6.9LのV型8気筒SOHCエンジンを搭載した「450SEL 6.9」1977年には3.0Lの5気筒ディーゼルターボエンジンを搭載した「300SD」が追加されています。

1979年に2代目のW126へとモデルチェンジしたSクラスは、2.8Lの直列6気筒DOHCを積む「280SE/SEL」、3.8LのV型8気筒SOHCを積む「380SE/SEL」と5.0Lの「500SE/SEL」がラインナップされました。この2代目のSクラスは、樹脂製のバンパーを持つ洗練されたデザインを持ち、その性能や装備から大型高級車の代表とも言える存在になりました。

メルセデス・ベンツ Sクラス S500

現在は2020年に発表された7代目が販売されており、誰もが認める大型高級車の代名詞であり続けています。

メルセデス・ベンツの中核モデル「Eクラス」

歴代Eクラス

コンパクトと呼ばれた「W114」から、ミディアムクラスの「W123」へ

メルセデス・ベンツ 230(W114)

W110系は、1967年に新しいモノコックボディのW114系へとフルモデルチェンジを行ないます。このW114系は「コンパクト・メルセデス」として広く知られるようになり、幅広いラインナップのエンジンが用意されていました。また、このW114系は170S以来途絶えていた2ドアクーペがラインナップされました。

メルセデス・ベンツ 230E(W123)

1976年にはW123系へとモデルチェンジし、セダンの他にクーペ、ステーションワゴン、リムジンをラインナップ。W123にも2.0Lのガソリンから3.0Lターボディーゼルまで幅広いエンジンが用意され、1985年まで製造されたW123は、1982年によりコンパクトな「190」が誕生したことによって、「ミディアムクラス」と呼ばれるようになりました。

名車「W124」の誕生、そして「Eクラス」へ

メルセデス・ベンツ 200E(W124)

1985年にW123の後継モデルとなる、「W124」が登場します。

大きく近代化した当時のメルセデス・ベンツのデザインの流れを汲んだボディは、セダンの他にステーションワゴン、2ドアクーペとカブリオレ、そしてリムジンが用意されていました。リアサスペンションはマルチリンク化され、四輪駆動の4マチックもラインナップされています。

メルセデス・ベンツ 500E(W124)

また、SL用のV型8気筒エンジンを積みポルシェが開発を手がけた、500Eなども登場。当初「ミディアム・クラス」と呼ばれていたW124ですが、1993年のマイナーチェンジでそれまで数字の後に付けられていた「E」が数字の前に付けられるようになり「Eクラス」と呼称されるようになりました。

3代目のW211時代には派生モデルの4ドアクーペ「CLS」が誕生しました。現在はW124から数えて5代目となる「W213」が販売されています。

究極のオフローダー「Gクラス」

歴代Gクラス

1979年にダイムラー・ベンツは、軍用車両向けの「ゲレンデヴァーゲン」を発表します。この直線を基調とした無骨なデザインの四輪駆動車は、一般向けにも販売されることになります。

「ゲレンデヴァーゲン」から「Gクラス」へ

メルセデス・ベンツ Gクラス

1989年に登場した第二世代モデルは、より乗用車としての完成度を高めた作りとなり、2018年まで各部の改良を重ねながら生産されました。また、1994年のマイナーチェンジに合わせて、「Gクラス」という名称で呼ばれるようになりました。

現在販売されているのは2018年にフルモデルチェンジした第三世代で、初代から受け継ぐスタイルはそのままに、最新のテクノロジーが詰め込まれています。

スタイリッシュなスポーツサルーン「Cクラス」

歴代Cクラス

より小さなセダン「190E」の誕生

メルセデス・ベンツ 190(W124)

1982年、それまでコンパクトと呼ばれていたW123よりもひと回り小さなセダン「190」ことW201が発表されます。

マルチリンク式のサスペンションを備えた新しい車体は、メルセデス・ベンツ初のヨーロッパのDセグメントに分類されるサイズでした。デザイン的にもバンパーがそれまでのメッキされた金属製から樹脂製へと変更されるなどし、空力特性を意識したスムーズで近代的なものになっていました。

このW201は排気量が2.0Lで、車体のサイズが日本の5ナンバー枠に収まっていたため、日本でメルセデス・ベンツを普及させる起爆剤となりました。W201の登場によって、それまでコンパクトと呼ばれていたW123は「ミディアムクラス」と呼ばれるようになります。190は搭載するエンジンのバリエーションを増やし、各部の改良を重ねながら1993年まで製造が続けられました。

コンパクトセダンを極めた「Cクラス」の誕生

メルセデス・ベンツ Cクラス(W202)

1993年にW201は「W202」へとモデルチェンジし、「Cクラス」という新しいネーミングが与えられました。W201よりも全長が70mm、ホイールベースが20mm延長され、後席を中心に居住性を向上させています。

Cクラスは「コンパクト・メルセデス」の域からはみ出す完成度の高さを誇り、セダンの他にステーションワゴンがラインナップされました。全幅は1,700mmを超えたため日本では3ナンバーとなりましたが、自動車税が排気量で分けられるように変更されていたため日本でも人気が衰えることはありませんでした。

登場以来モデルチェンジを重ねながらDセグメントのベンチマークであり続けたCクラスは、2021年に5代目となるW206が発表されました。

FFモデルの歴史!コンパクトカーモデル

未知のカテゴリーに進出!「Aクラス」

メルセデス・ベンツ Aクラス(W168)

メルセデス・ベンツ初のコンパクトカーとなる「Aクラス」は、Bセグメントのトールワゴンスタイルで1997年に登場しました。

駆動方式もライバル車同様にFFを採用し、メルセデス・ベンツにとっては未知のカテゴリーに対して挑んだモデルでした。Aクラスが発表された翌年の1998年、ダイムラー・ベンツはアメリカの自動車会社クライスラーとの合併を発表し、「ダイムラー・クライスラー」となっています。

BクラスやCLAなどの派生モデルが登場

メルセデス・ベンツ Bクラス

2004年に発表された2代目はキープコンセプトのトールワゴンスタイルで、2005年には派生モデルとしてCセグメントの「Bクラス」も発売されました。2012年に登場した3代目からはVWゴルフなどと競合するCセグメントの5ドアハッチバックへと車格を上げ、4ドアクーペの「CLA」とそのワゴン版となる「CLAシューティングブレーク」もラインナップされました。

ブランド初のFFセダンがラインナップに追加

メルセデス・ベンツ Aクラス(2018年)

現在は2018年デビューの4代目モデルが販売されており、CLA、CLAシューティングブレークに加えて、メルセデス・ベンツ初のFFセダンとなる「Aクラス セダン」もラインナップしています。

ラインナップ拡大中のSUVモデル

メルセデス・ベンツ Mクラス

Gクラスとは別に、より乗用車的なSUVとして1997年に「Mクラス」が、2006年にはより上級モデルの「GLクラス」がデビューします。

メルセデス・ベンツ GLE

Mクラスは3代目までその名で販売されますが、3代目のマイナーチェンジ時に「GLE」へと名称を変更。GLも「GLS」に変更されました。

「GLクラス」によるSUVラインナップの充実

メルセデス・ベンツ EQC 4×4

世界的なSUVブームを受けて、新しい「GLシリーズ」はラインナップを拡大。現在は「GLA」、「GLB」、「GLC」とクーペスタイルの「GLCクーペ」、「GLEクーペ」、さらにEVの「EQA」と「EQC」が加わっています。

2度目となるレースへの復帰、そしてチャンピオンチームへ

1989年のル・マン24時間レースでチャンピオンに輝いたC9

1955年以降ワークスとしてのレース活動を行なっていなかったダイムラー・ベンツですが、1985年エンジンサプライヤーとしてスポーツカー世界選手権に復帰。

「ザウバー・メルセデス」として本格的なワークス活動を開始し、1989年に「C9」で世界チャンピオンを獲得。チーム名を「メルセデス・ベンツ」と改めた1990年に、2年連続の世界チャンピオンを獲得しますが、1991年に活動を停止します。

メルセデス・ベンツ CLK GTR

1997年にFIA GT選手権に「CLK GTR」で参戦してスポーツカーレースに再度復帰しますが、1999年に「CLR」がル・マン24時間レースでひっくり返るという事故を起こし、ワークス活動を停止。現在はプライベートチーム向けにGT3カテゴリーマシンを供給しています。

また、1988から2018年まではツーリングカーレースであるDTMにも参戦していました。

Mercedes-AMG F1 W12 E Performance
モナコGP2021に出場したメルセデスAMG F1 W12 Eパフォーマンス

1994年にはエンジンサプライヤーとしてF1にも復帰すると、2010年にエンジンを供給していたイギリスのF1チーム「ブラウンGP」を買収。念願とも言えるワークスチーム「メルセデスGP」での参戦を開始し、2014から2020年まで7連覇という素晴らしい成績を残し続けています。

ブランド名「メルセデス・ベンツ」が社名に

2007年にクライスラーとの合併を解消し、社名が「ダイムラー」になりました。そして、2021年に商用車部門を「ダイムラー・トラック」として独立させ、ダイムラーは「メルセデス・ベンツ」へと社名を変更しました。

2つの自動車会社の合併時に誕生した自動車のブランド名は、95年の時を経て会社の名前となったのです。

メルセデス・ベンツに関連するブランドの歴史はこちらから

ハイパフォーマンスブランド「メルセデスAMG」

世界有数の超高級ブランド「メルセデス・マイバッハ」

執筆者プロフィール
後藤 秀之
後藤 秀之
1970年代生まれ。バイクと自動車を中心にした趣味関係の書籍編集長を長年務めた後、フリーランスライターに。バイクと自動車以外にも、模型製作やレザークラフト 、ロードバイクや時計など男子の好む趣味一式を愛...

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