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【世界一醜い車】ポンティアックの失敗作?アズテックは何が裏目に出てしまったのか【推し車】

アズテックが徹底的に酷評されたのは、なぜだろう?

flickr.com Author:zombieite CC BY-SA 2.0

ラーメンと自動車デザインの好みは、ケンカの元であります…とはいえ、「史上最強レベルで醜いクルマ」とこき下ろされたらしいポンティアック アズテックというSUV、そんなにカッコ悪いクルマかな?と思うのは筆者ばかりではないようで、最近はわりと高評価。

問題は2000年という発売年、さらにファイヤーバードやトランザム、GTO、フィエロといったスポーツカーブランドのポンティアックから発売してしまったことだったように思え、これがシトロエンあたりのクルマだったら手放しで褒められていたかもしれません。

今回は「ブレイキング・バッド」で主人公のウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)が乗っていた事から、クルマ好きよりもアメリカのTVドラマ好きが案外知っていそうな、ポンティアック アズテックのお話です。

今は亡きアメリカンスポーツカーの名門、ポンティアック

古き良きポンティアックの名車、1964年型初代GTO

日本では「壮大なバブル自爆ネタ」として今に語り継がれるマツダの5チャンネル体制では、あえてマツダ以外の他ブランドで拡販すべく、アンフィニ、ユーノス、オートザム、それにフォードと別ブランドで作り分けましたが、これはアメリカだとよくある方式です。

GMでも戦前の日本に持ち込んだので馴染み深く、その後も現在までコルベットやカマロで著名な「シボレー」が代表格ですが、他にもさまざまなブランドを作っては壊し、中にはカナダ向けブランド「アスナ」のように3年ほどで終わった短命ブランドも。

しかし「ポンティアック」はシボレー同様、戦前から続くGM系列では由緒あるブランドで、クルマ好きでなくとも印象深いクルマだと、アメリカのTVドラマ「ナイトライダー」で人工知能を積んだスーパーマシン、ナイト2000のベースとかったトランザムは有名。

しかしアメ車のスポーツカーブランドはほとんどがそうだったように、1970年代の排ガス規制とオイルショックで慣れない小型化、低燃費エコ思想の間でデザインは迷走、日本車を急ごしらえで真似しきれていない珍車が続出したのは、ポンティアックも同様でした。

結果的には日本車に敗北、経営危機に陥ったGM本体を再建する過程で2010年に廃止されてしまいますが、その末期近くに販売されたのが、SUVのアズテックです。

期待の新型クロスオーバーSUV、アズテック!だったが…

flickr.com Author:Jason Lawrence CC BY-SA 2.0

アズテックの開発背景には、1990年代に入って初代のトヨタ RAV4やホンダ CR-Vといった乗用車ベースSUV、レクサスRX(当時の日本では初代トヨタ ハリアー)のようなラグジュアリー系SUVの台頭がありました。

世界中で同種の新型車が次々に開発されつつあり、GMでもミニバンプラットフォームをベースにSUVを開発し、「ポンティアック」ブランドでアズテック、「ビュイック」ブランドでランデヴーという2種の姉妹車をデザイン違いで開発します。

ランデヴーがどちらかといえばレクサスRXよりのラグジュアリー系だったのに対し、アズテックは「X世代(ジェネレーションX)」と呼ばれる新時代の若者像──今だと「Z世代」でしょうか──を対象にした、ポンティアックらしいスポーツイメージが特徴。

日本車でいえば観音開きドアが特徴的なホンダ エレメントのように、先例にとらわれない若者の自由な発想を助けるクルマ、というポジションだったようで、ボディサイズは現在のレクサスNX以上RX未満と、アメリカンSUVとしては小型の部類です。

SUVでありながら実用性よりスポーティなデザイン重視、広いガラスエリアで後方視界を広くとったテールゲートを思い切って寝かせたファストバックスタイルなど、最新の60プリウスを思わせるものがあります。

さらに、リアシートを脱着可能な広いラゲッジルーム直結のテントを設けられるアウトドア仕様のオプションや、上下2分割テールゲートの下面を倒したところへ引き出して使える収納ボックスなど、アイデア満載グルマではありました。

使い勝手はいいのに!貼られてしまった「醜い車」のレッテル

flickr.com Author:Erica Fischer CC BY-SA 2.0

しかし、2000年にアズテックが発売されるやいなや、自動車関連か否かに関わらず各メディアは大ブーイング!

「史上最悪」「醜いクルマ」「こんなのポンティアックじゃない」とひどい叩かれようで、確かにバランスという面では多少難があったかもしれませんが、そこまで寄ってたかってイジメなくても…というくらい、容赦がありません。

これだけひどいネガティブキャンペーンを貼られればユーザーも寄り付かず、採算ラインは3万台だったらしいのですが、ピークとなった2002年でも2万8,000台足らずと目標へは届かず、名誉回復の機会もないまま2005年に生産を終えてしまいました。

唯一の慰めは、コンサルティング企業のJDパワーが行った顧客満足度が2001年に行った調査で、小型SUV部門の1位に輝いたことですが、いくら購入したユーザーの満足度が高くとも、新規ユーザーが増えなければ、失敗作とされても仕方がありません。

原因はどうも伝統ある「ポンティアック」ブランドにあったようで、当時の評価を総合すると、「歴史と伝統あるブランドでこんなクルマを売るとはケシカラン!」と、識者の怒りを買っていたように思えます。

中央の太い柱で2つにバッサリと分ける大型フロントグリルなど、いかにもポンティアックらしいアイコンすら酷評されていますが、同時期のポンティアック ヴァイブ(日本ではトヨタ ヴォルツとして販売)のような顔にすれば満足だったのでしょうか?

ヘッドライト上のウインカーも「二階建て」などと酷評されましたが、後の日産 ジュークなどの先を行く先進的デザインを許さないほど、「ポンティアック」ブランドは保守派の牙城だったようです。

ならば古き良き名車をを作れば買ってくれるわけでもなく、GMがポンティアックを廃止したのも、そのブランド自体というより、古い価値観にばかりしがみつくユーザー層を見限った、ということなのでしょう。

アズテックは、そういう「将来の発展を阻害する要因」をあぶり出したという意味で存在意義のあったクルマですが、先進的なデザインや使い勝手の良さを考えると、それだけで済ませるには実にもったいない、「生まれるのが早すぎた名車」でした。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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