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ミラーサイクルエンジンとは?仕組みやメリットと採用されている車をご紹介!

マツダがSKYACTIV-Gエンジンとして、本腰を入れて開発を進めているミラーサイクルエンジンの解説です。ミラーサイクルエンジンの仕組みと構造、メリットなどを説明します。また遅閉じミラーサイクルと早閉じミラーサイクルの違いと、それぞれが採用される車をご紹介します。

ミラーサイクルエンジンとは?

オットーサイクルとミラーサイクル(アトキンソンサイクル)の比較動画

ミラーサイクルエンジンとは、通常よりも吸気バルブタイミングを早く、もしくは遅く閉じることで、少ない混合気から、より効率よく膨張圧力を取り出し、エネルギー効率の向上を実現した技術です。
要となるのは、圧縮比よりも膨張比を大きく取るということです。

通常、レシプロエンジンは圧縮比が高いほど効率が良いのですが、高すぎる圧縮比はノッキングやデトネーションといった異常燃焼を起こし、エンジンを壊す恐れがあります。
そのためエネルギー効率を高めるために、圧縮比は一定値に抑えたまま、膨張比をより多く取りたいのですが、多くのエンジンは圧縮比=膨張比のオットーサイクルという理論で動いています。

それを覆したのがアトキンソンサイクルというエンジンです。
複雑なクランクシャフトを使うことで、機械的に 圧縮比<膨張比 を実現したエンジンですが、重く複雑なクランクシャフトを用いるため、鈍いレスポンスと耐久性等の問題で自動車には不向きでした。

アトキンソンサイクルの動作を、吸気バルブの開閉タイミングを変更することで再現したミラーサイクルは、高効率の自動車用・疑似アトキンソンサイクルエンジンといえるでしょう。

ミラーサイクルエンジンには2種類ある

マツダの量産初のミラーサイクルエンジン構造動画

まずは基本のオットーサイクルをおさらい

多くの車が搭載する一般的なオットーサイクルエンジンは、
1 吸気(吸気バルブを開けてピストン下降)
2 圧縮(吸・排気バルブを閉じてピストン上昇)
3 膨張(吸・排気バルブを閉じてピストン下降)
4 排気(排気バルブを開けてピストン上昇)
この4つのプロセスを繰り返すことでエンジンを駆動しているため、4サイクル(4ストローク)エンジンと呼ばれます。

ミラーサイクルエンジンは、バルブの開閉タイミングで「遅閉じミラーサイクル」と「早閉じミラーサイクル」に分けられます。

マツダ・トヨタ・ホンダが採用する遅閉じミラーサイクル

遅閉じミラーサイクルの場合、オットーサイクルでは吸気バルブを閉じて圧縮するはずの行程を、吸気バルブを開けたままピストンを上昇させ、圧縮し始めます。
するとシリンダー内の空気は開いた吸気バルブから外へ逃げていきます。そのとき、仮にピストンストロークの半分の位置で吸気バルブを閉じるとすると、シリンダー容積に対して半分の空気だけが圧縮されることになります。
つまり、総排気量が2000ccのエンジンを使って1000ccの燃焼しかできないので、単純計算で半分のパワーしか出せないことになります。

しかし、相対的に膨張比が2倍になっているので、燃焼圧力が膨張しきるまでエネルギーを取り出すことができます。
その結果、同じ排気量のオットーサイクルエンジンよりもパワーは劣りますが、一回あたりの燃焼から、より多くのエネルギーを取り出せる効率の良いエンジンとなるのです。

マツダ デミオ SKYACTIV 1.3(4代目)

マツダ デミオ

トヨタ プリウス(4代目)

トヨタ プリウス A ツーリングセレクション 2015年

ホンダ フィット ハイブリッド(3代目)

2013年式 ホンダ フィットハイブリット

海外では早閉じミラーサイクルが主流?

早閉じミラーサイクルとは、吸気行程の途中で吸気バルブを閉じてしまうことで、シリンダー内に入る空気量を制限したミラーサイクルです。

結果的には遅閉じミラーサイクルと同じですが、遅閉じでは1度シリンダ内に入った空気を再度吸い込むため、シリンダ内で加熱された空気はノッキング制御、点火時期制御の点で不利です。
その点、早閉じミラーサイクルでは、遅閉じのようにシリンダー内の空気を外に逃がす必要がないためパワーが出しやすいといえるでしょう。

その反面、絶対的な吸気量と吸気時間が短く、慣性吸気がほぼ使えないため、高回転域のトルクは薄れてしまいます。
そのため過給機(ターボやスーパーチャージャー)との組み合わせることで、その効果をより発揮できる方式といえます。

VWグループの“VW ゴルフ1.5TSI evo”と“AUDI A4 2.0 TFSI”が早閉じミラーサイクルターボを採用しています。

VW ゴルフ1.5TSI evo

アウディ A4 2.0 TFSI

アウディ A4 2.0 TFSI 2016年式

ミラーサイクルのメリットとデメリット

V6エンジン ピストン

©shutterstock.com / Ksander

ミラーサイクルはエンジンのシリンダ容積よりも少ない混合気量で燃焼させるので、排気量の割に出力が低く、特に低速トルクの細さが問題です。
また、実質的な圧縮比が低くなるので、加速にパンチがなくなるのもデメリットです。

しかし、オットーサイクルでは捨ててしまう膨張圧力を最後まで効率良く使うので、パワーがない分、燃費が良くなるのです。
大きなパワーを必要としない巡航時にその効果を最大限に発揮します。

劣るパワーは過給機、可変バルブタイミング機構を使うことで補うことができます。
マツダのS-VTやホンダのVTECなどの可変バルブタイミング機構を用いることで、巡航などの低負荷時にはミラーサイクルを使い、パワーが必要な加速時は、バルブタイミングをオットーサイクル寄りに可変させることで、状況に応じた最適な特性を得ることができます。

過給機との組み合わせでは、圧縮空気を送り込むことで圧縮比をコントロールし、理想的な圧縮比を保ちつつ、膨張比を大きく取る事が可能になるのです。
マツダ ユーノス800ではスーパーチャージャーを搭載していました。
日産 ノート DIG-SのHR12DDRエンジンも、同じ様なコンセプトで設計されています。

日産ノート DIG-S

日産 ノート X DIG-S Vセレクション+SafetyⅡ 2016年

マツダ ユーノス800からSKYACTIV-Gへ

マツダ ユーノス800

1993年に登場したユーノス800に搭載された2.3リッターV6エンジンであるKJ-ZEMは量産車初のミラーサイクルエンジンです。
当時はまだ可変バルブタイミング機構がなかったので、パワーを補うため、スーパーチャージャーが搭載されていました。

量産車でよく見られるルーツブロワー式ではなく、IHIと共同開発したリショルム式スーパーチャージャーを使用。
しっかりと圧縮された空気を送り込むことで、ミラーサイクルで低くなってしまう圧縮比を全域でコントロールし3.0Lエンジン並の出力を備えながら、2.0Lエンジン並の燃費性能を実現していました。

しかし時代の不遇もあり、2000年のマイナーチェンジでミラーサイクルエンジンはカタログ落ちしてしまいます。

それから20年あまりの時を経て、マツダはSKYACTIV-Gエンジンでミラーサイクルを復活させました。
SKYACTIV-Gとはマツダが持てる技術を注ぎこんだ1.3から2.5リッター4気筒エンジンの総称です。

特長は、徹底した燃焼状態の改善によって実現した高圧縮比化です。
可変バルブタイミング機構を駆使し、過給機を使わずとも、高圧縮ミラーサイクルで、パワーと燃費性能を両立したマツダ自慢のエンジンです。

マツダ デミオ SKYACTIV ロゴ

ミラーサイクル VS ダウンサイジングターボ

マツダ SKYACTIV-Gエンジン

マツダ SKYACTIV-G

年々深刻化する環境問題に対応するため、自動車のエンジン開発は転機を迎えています。
既存のエンジンのまま、小型化したエンジンのパワーを補うダウンサイジングターボで排出ガスを抑える方法と、燃焼効率そのものを見直すミラーサイクルエンジン。

そして、両方の良いとこ取りの過給機+ミラーサイクル。
かつてマツダがユーノス800で実現したスーパーチャージャー+ミラーサイクルを、VWグループがミラーサイクルターボで再現しています。
これより先、ミラーサイクルエンジンが主流となるのか、そして他のメーカーはどう動くか。

今後の各メーカーの熾烈なエンジン開発競争から目が離せません。

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