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水陸両用車は公道で走行可能か?販売元や中古車の価格情報についても

水陸両用車とは、その名の通り陸上を走行するだけでなく、水上航行も可能なクルマのことを指します。払い下げられたミリタリー向けの車だけでなく民間向けの市販車を含めて、公道走行可能な水陸両用車を販売元や中古車価格を含めて解説します。

水陸両用車とは?


水陸両用車とは、その名の通り陸上を走行するだけでなく、水上航行も可能なクルマのことを指します。
軍用車両が主ですが民間車両も存在します。
今回は軍の払い下げ車両を含めて一般ユーザーが購入可能なクルマをご紹介して行きましょう。

代表的な軍用水陸両用車

シュビムワーゲン

#schwimmwagen

Jeep Militar Peçasさん(@jeepmilitar)が投稿した写真 -


水陸両用車でもっとも成功したのは、第2次世界大戦でドイツ軍が運用したシュビムワーゲンことフォルクスワーゲン Typ166と、米軍が運用したフォードGPAの2台でしょう。

前者のシュビムワーゲンは、1942年にドイツ軍の要求に基づいてポルシェ設計事務所が開発した水陸両用車で、大戦中盤〜末期にかけてドイツ国防軍(ドイツ陸軍)と武装親衛隊(ナチス党の武装組織。第2次世界大戦の勃発時には陸・海・空軍に次ぐ第4の軍隊として軍事作戦に従事)の装甲部隊の偵察大隊や工兵隊で主に運用されました。

フォードGPA

後者のフォードGPAは、ウィリスMB/フォードGPW(いわゆるジープ)をベースにフォード社とマーモン社の共同開発で誕生しました。
フォードGPAはモノコック式舟形車体にフォードGPのエンジンと走行装置を組み合わせて製作された水陸両用車で、主に欧州戦線の陸軍に配備されましたが、水陸両用車としてはコンパクトなボディが災いして渡洋性がなく、陸上での走行性能も芳しくなかったために、補助的な任務に使用されるに留まりました。
そのため生産された12,700台のうち半分以上がソ連に供与されました。

戦後、残存した両車は民間に払い下げられ、現在では博物館に所蔵されたり、軍用車のコレクターが保存したりしています。

大西洋を横断したハーフ・セーフ号

1950年代、民間に払い下げられたフォードGPAのうちの1台は、冒険家のベン・カーリン夫妻の手で航洋性を増すための改造が施され、「ハーフ・セーフ号」と名付けられ、大西洋横断と陸路を利用した世界一周旅行に用いられました。

DUKW

シュビムワーゲンやフォードGPAよりも大型の水陸両用車にGMが開発したDUKW(ダック)があります。

1942年に登場したDUKWは、GM製6輪駆動の2.5t軍用トラックをベースにした水陸両用車として開発され、主に米海兵隊によって運用され、43年7月のシチリア島上陸作戦を皮切りに、欧州戦線と太平洋戦線の上陸作戦で使用されました。

DUKWを改造した水上バス

DUKW水上バス

出典:https://ja.wikipedia.org/

戦後、民間へ払い下げられたDUKWは消防隊や沿岸警備隊に配備されて災害救助に活躍したほか、水陸両用バスに改造されて現在でも世界各地で運行されています。
水上バスの一般名詞として「ダック」の名称が使用されていますが、これが軍用車両のDUKWが由来になっていることはあまり知られていません。

代表的な民間水陸両用車

アンフィカー770型

#amphicar #carshow #convertibles

R. Michael Leekさん(@mleek6353)が投稿した写真 -


軍用水陸両用車に比べて、民間向けの水陸両用車は需要が少なく、構造が複雑で製造コストが高く、販売価格が高価になることから、大量生産されたクルマはあまりありません。
そんな民間向けの水陸両用車の中で数少ない量産車が、1961年に登場したアンフィカー770型です。

アンフィカーは西ドイツの自動車設計家のハンス・トリッペルが設計し、BMWグループのIWK(Industoriewerke Karlsruhe )社が製造しました。

アンフィカーのボディはモノコック構造の2ドアコンバーチブルで、駆動方式はRR、搭載されるパワーユニットはトライアンフ・ヘラルド製1,147cc直列4気筒となります。
トランスミッションは陸上走行用がVWタイプ1(ビートル)用、水上航行用トランスミッションはヘルメス製の2MTで前進と後退を1つのギアでまかなうものを採用しました。
VW水上航行時は車体後部のプラスチック製プロペラスクリューで推進します。

アンフィカーは自動車とボートをクロスオーバーさせた大変ユニークな存在でしたが、エンジンの防水性に欠陥があり、水上航行中にエンストすることがしばしばありました。
おまけにボディのサビ対策が不充分で、腐食に弱いという大きな欠点がありました。
しかも、走行性能はお世辞にも良いとは言えず、水上航行性能も何とか移動できる程度というていたらくで、ありていに言ってしまえば欠陥車でした。
そのため商業的には失敗に終わり、後継車もないまま1968年に生産を終了しています。
7年間の生産台数は3,878台に留まりました。

RMAアンフィレンジャー


アンフィカーほどの台数は生産されませんでしたが、1990年代にはドイツのRMA社がアンフィレンジャーという水陸両用車を生産しています。

アンフィレンジャーの車体はモノコック構造を採用。
一体型ロールバーや浮力室を持つ特殊な構造のアルミニウム製のボディで軽量化が図られています。
駆動方式はフロントエンジンの4WDとなり、エンジンは最高出力140psを発揮する2,933cc水冷V型6気筒を搭載。
組み合わされるトランスミッションは5MTとなります。

アンフィレンジャーは消防や警察の水難救助や電力会社などの緊急車両として開発されただけあって、性能的には優秀でしたが、その分販売価格は高く(94年の日本での販売価格は2600万円)、一般市場ではほとんど売れなかったようです。

このほかにも1991年の第29回東京モーターショーに出展されたいすゞ・ナギサやギブス・アクアダをはじめ、これまでに数多くの民間向け水陸両用車が試作、ないし少量生産されましたが、それらが大量生産されることはありませんでした。

ギブス・アクアダ

水陸両用車は公道走行できるのか?

↓AAV7のような装甲車両はサイズや車両重量などの問題からナンバーの取得は難しい。

AAV7

道路運送車両法で規定された保安基準に基づいている車両であり限り、ナンバーをつけて公道を走行することが可能です。
現実的には米海兵隊が運用するAAV7のような装甲車両を除き、SUVやトラック、バスタイプの水陸両用車は問題なく登録できるはずです。
実際に上記で紹介した車両は国内でもナンバーをつけて公道を走っています。

ただし、国交省が発行している車両用のナンバープレートはクルマとして道路を通行するためのものです。
湖や河川、海などの水上を航行するためには船として船舶番号の交付を受けなければなりません。
また、普通自動車免許では船の操縦は認められていないため、小型船舶免許を取得しなければな水陸両用車での水上航行は許可されません。

水陸両用車の販売・中古車

現在、日本国内で新車として販売されている水陸両用車はありません。
また、一般的な車種ではないために中古車市場で流通することも稀です。

軍用水陸両用車の場合は、軍用車両専門店に相談して国内で売り物が出て来るのを待つか、海外で買いつけてきてもらうのが入手のための近道です。

民間向けの水陸両用車の場合は、「エンスーの杜」などのクラシックカーや稀少車の個人間売買サイトをマメにチェックするして探すしかないようです。
アンフィカーは過去に「エンスーの杜」で売りに出されたことがあります。

あとは海外の軍事コレクター向きの専門店やクラシックカーのオークションなどを当たるのもひとつの方法です。

水陸両用車の価格


水陸両用車は国内ではほとんど流通がないので、海外の中古車価格を参考までにご紹介します。

現在、海外の専門店やオークションでの水陸両用車の取引価格は、シュビムワーゲンが2,000〜3,000万円以上、フォードGPAが1,000〜2,000万円、DUKWが700〜1,500万円ほどです(邦貨換算)。
これらを日本国内に輸入し、ナンバーを取得するためには、車両の購入金額とは別に輸送費や通関費用、税金、整備代などでプラス100〜300万円ほど掛かります。

アンフィカーは軍用の水陸両用車よりも少し安く、レストアベースで300〜400万円ほど、レストア済みの車両でも700〜1000万円ほどで購入できます。
ただし、構造的に問題の多いクルマですので、水陸両用車として水上航行をするのなら、整備代はそれなりに掛かると思います。

水陸両用車のバスに乗ろう!

#southisland #jökulsárlóniceberglagoon #amphibiousvehicle #iceberglagoontour

redwalterさん(@saggionvasco)が投稿した写真 -


水陸両用車についてのまとめ記事はいかがでしたでしょうか?

もう少し手軽に水陸両用車を楽しみたいという人には、各地で観光用に走らせている水陸両用バスへの乗車がおすすめです。

日本国内ではいすゞ製8tトラックをベースに水陸両用車メーカーであるCAMI社が改造した水陸両用バスが東京・大阪などで運行しています。

スカイバス東京が運行している「東京スプラッシュツアー[スカイダック]」を一例として紹介すると、道教スカイツリー駅前営業所から出発し、下町を回って旧中川を渡り、一周して戻ってくる100分のツアーを開催しています。
料金は大人2,900円、こども1,400円と手頃です。

水陸両用車に乗ってみたい方におすすめのツアーです。

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この記事の執筆者

山崎 龍この執筆者の詳細プロフィール

1973年1月東京生まれ。自動車専門誌の編集を経てフリーライターに。自動車専門誌を中心に、航空、ミリタリー、映像作品、オタクカルチャー、政治などの 様々なジャンルに寄稿する雑文ライター。 著書に『最強!連合艦隊オールスターズ』『萌えだらけのクルマ選び』(共にイカロス出版)、『「...

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