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水素ロータリーエンジン最新情報|マツダの水素自動車に搭載?

「ロータリーエンジン」と「水素燃料」の相性は最高! 水素インフラが整備されれば「燃料電池車」と「水素ロータリー車」が活躍する舞台が拡がります。 マツダの水素ロータリーエンジンRENESISについて解説するとともに、ロータリーエンジンの特性も再確認して見ましょう。

マツダの水素ロータリーは水素社会の到来で躍進する

出典:https://www.meisho-ecoclub.jp/

世界初のセダン型燃料電池車(Fuel Cell Electric Vehicle)として、トヨタ・ミライが2014年12月15日に市場投入されました。

燃料電池は、水の電気分解の逆をたどることで、水素を燃料として発電するディバイスで、その電力を使って電動モーターで走行するものです。
つまり自家発電をしながら走る電気自動車です。

マツダの水素ロータリー開発

実はマツダは、以前から積み重ねてきた電気自動車技術をベースとして、燃料電池車の基礎研究を行ない、2001年にはプレマシーFC-EV(Fuel Cell Electric Vehicle)よって、燃料電池車の公道試験を実現しています。
この燃料電池車は、メタノールを燃料とし、「改質」によって水素を発生させながら走行する方式を採用していました。

トヨタ・ミライの場合は、水素ステーションで燃料である水素を充填して使用するタイプで、水素供給インフラの整備は不可欠です。

早くから水素社会の到来に備えていたマツダのもうひとつの方向性が、水素を直接、内燃機関で燃焼させ、文字通り水素を「燃料」として用いようというものです。
この分野の研究を進めるなかで、ロータリーエンジンと水素の相性が非常に良いことが判ってきました。

マツダの水素ロータリーエンジンは地球温暖化防止の切り札

出典:http://zecj.jp/

気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)パリ議定書が発効します。
日本は批准が遅れたため、オブザーバーからのスタートとなります。
地球温暖化防止に関しては、自動車が環境に与える影響は無視出来ません。

現在、「自動車」には内燃機関を動力源にしたもの、モーターを動力源にした電気自動車、燃料電池車等が存在します。

内燃機関は、主にガソリンや軽油、メタノール、LPG、LNGを燃料にします。
中には天婦羅油の廃油を燃料にしたものもあります。
内燃機関で、水素を燃料にするとH+O2→H2Oで、水しか排出しませんが、それ以外の燃料では温暖化の原因物質を排出します。

そこで世界的には内燃機関から電気モーターを動力源とする電気自動車へのシフトも検討されているのです。

マツダの水素ロータリーが完全無公害なクルマの鍵

出典:http://www.motor1.com/

マツダの水素燃料エンジン車開発

マツダの水素燃料車両開発への着手は、相当早くからなされていました。
そして1991年の東京モーターショーに、マツダ初の水素ロータリーエンジン車HR-Xが出展されました。
HR-Xはハイブリッド技術と水素ロータリーエンジンを組み合わせたコンセプトカーです。
そして1993年の東京モーターショーではHR-X2が出展されました。

HR-Xから動力性能を改善し、リサイクルしやすい車両構造を取り込んだコンセプトカーです。
1995年には「水素REカペラカーゴ」が、日本初の公道走行試験を実施、2台で約4万kmを走行しています。

BMWも水素燃料エンジン車を開発

1997年の第3回気候変動枠組条約国際会議(地球温暖化防止京都会議COP3)会場で、BMWが、レシプロの水素エンジン車の展示をしていました。
BMWはドイツ国内で、限定エリアで実証実験をしているとの説明をしていました。

その際にBMWが配布していた英文パンフレットには、「太陽光発電で得た電気で水を電気分解して得た水素こそが、宇宙で一番クリーンなエネルギーだ」とありました。

日本の電源構成と電気自動車

電気自動車は、温暖化と全く無関係かというと、そうではありません。
通常の電気自動車は、モーターで走るから温暖化とは無縁に思えますが、「車載蓄電池に充電した電気」でモーターを回して走っているのです。

出典:http://www.es-inc.jp/

しかし、「蓄電池に充電する電気を発電する段階」では火力発電の比率が高く、総合的に計算すると、発電段階での原因物質を考慮しなくてはならず、決して「無公害」とはいえないのです。

水素燃料電池車は、水を電気分解して水素と酸素を取り出すのとは逆の作用で、水素と酸素を結合させて水と電気を取り出します。
燃料電池は発電設備で、その電気を使ってクルマを走らせるのが水素燃料電池車です。

結局、「水素燃料電池車」と「水素燃料エンジン車」以外は、すべて地球環境に悪影響を与えることになります。

マツダの水素ロータリーエンジンRENESIS

マツダ・RX-8ハイドロジェンREの開発

マツダはRENESIS水素ロータリーエンジンの開発を進めています。
ロータリーエンジンは水素使用に伴うエンジンや車両の変更がわずかなため、低コストで水素エネルギー車の実現が可能です。
2003年には「RX-8ハイドロジェンREプロトタイプ」を開発しました。

このクルマは、水素インフラが普及していない現状に対応するために、水素とガソリンを搭載したデュアルフューエルシステムによってガソリンでも走行できるため、長距離移動や水素燃料の供給施設がない地域へも不安なく運行できます。
2004年には日本での公道走行試験を実施しました。

搭載されたRENESIS水素ロータリーエンジンは、電子制御ガスインジェクター方式直噴を採用しています。
これは普通のガソリンを燃料にするロータリーの吸気ポートからは空気を吸入し、水素はローターハウジングの頂上に設けた電子制御ガスインジェクターで水素を吸気室内に直接噴射する方式です。

ロータリーエンジンの特性が水素燃料とベストマッチング

水素内燃機関の実用化では、水素がエンジン内の高温部分に触れることで発生する水素の早期着火(バックファイア)の回避が課題になります。
レシプロエンジンでは吸気、圧縮、膨張(燃焼)、排気をシリンダー内の同じ場所で行うため、燃焼時の熱で点火プラグや排気バルブが高温となり、吸気行程でのバックファイアが起きやすくなります。

水素を噴射するインジェクターはシール部にラバーを用いるため、レシプロエンジンでは高温になるシリンダーヘッドに取り付けることが困難です。
しかしロータリーエンジンは、吸気室と膨張(燃焼)室が分かれているのでインジェクターのレイアウト自由度が高く、直噴に適しています。

水素タンクの圧力は現在の国内での標準的な圧力である35Mpaを選択し、水素充填口は、燃料電池車に広く使われるものと同タイプのレセプタクルを採用し、ベース車のガソリン給油口と左右対称の位置に設けています。
「RX-8ハイドロジェン」の燃費は、10・15モードで水素使用時100km、ガソリン使用時549kmです。


マツダ・プレマシーハイドロジェンREハイブリッドの開発

出典:http://audiofan.net/

続いて開発されたのが「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」です。
この車はハイブリッドシステムの採用と、高圧水素タンク容量を110ℓから150ℓに増量することによって10・15モードでの水素使用時の燃費を200kmと倍増させました。

一般的にはハイブリッド車には、「パラレル」、「シリーズ」、「シリーズ・パラレル」の3つの方式があります。
「パラレル」方式はエンジンの機械的な動力と、高電圧バッテリーで駆動するモーターで走行します。
「シリーズ」方式はエンジン出力の全ては一旦ジェネレータで電力に変換され、その電力でモーターを駆動させます。

両方式の特性を合わせ持ったのが「シリーズ・パラレル」方式で、エンジン出力の一部は機械的な動力として駆動輪に伝達され、残りは一旦電力に変換された後、モーターで再度機械的な動力に変換されます。

プレマシーハイドロジェンREハイブリッドは、「シリーズ」方式を採用しています。
これはエネルギー変換効率を重視したものです。
この方式の場合、一般的にはエンジンを最も効率の良い回転数で定常運転するものです。

しかし、プレマシーハイドロジェンREハイブリッドは、あえて定常運転にせず、アクセル操作によってエンジン音と回転数が上下し、同時に駆動力も増減するため、自然な感覚で運転を愉しむことを実現しています。
このハイブリッドシステム採用によって、水素運転時の駆動軸出力は、エンジン単独の状態と比べて約40%増大しています。

ロータリーエンジンの歴史

出典:http://www.goo-net.com/pit//assets/

ここでロータリーエンジンについておさらいして見ましょう。
一般的にロータリーエンジンは、マツダが開発に成功した「三角おにぎり状のローターが、蚕の繭のような8の字型のローターハウジングの中を回る」(二節三葉と呼びます)エンジンを指します。

ロータリーエンジンの特徴は、構造が簡単で構成部品が少なく、従来のエンジンと比較して同馬力なら小型軽量なことです。
バルブ機構が無いので、高回転に向き、コマの様に高回転になるほど安定しますが、低回転になると安定度が低下します。
スポーツカー向きのエンジンといわれる理由がこれです。

通常のFRレイアウトでも、エンジンがコンパクトで、フロントミッドシップと称される様に、エンジンをホィールベースの内側に搭載可能となり、運動性能の面で有利になります。

ロータリーエンジンに関する誤解

出典:http://www.mazda.co.jp/

ロータリーエンジンは、現在のマツダ株式会社が、旧社名の東洋工業時代に、47士と称される47名の開発陣で着手し、苦難の末に開発に成功しました。
そのストーリーはNHK「プロジェクトX 第028回 挑戦者たち ロータリー 47士の闘い ~夢のエンジン 廃墟からの誕生~」に詳しく語られています。

ネット上では、「設計図さえ有ればエンジンを造ることが出来る」みたいな話を見かけますが、有り得ない話です。
基本特許はNSUバンケルで、この革新的なエンジンに、世界中の著名なメーカーが争って特許許諾を得て、「ロータリーファミリー」として開発に取り組みました。
アウトボードマリーンは船舶用エンジンに、ロールスロイスは戦車用エンジンにと、内燃機関を利用する企業は、巨費を投じて開発に取り組みましたが、完全な実用化に成功したのはマツダだけでした。

設計図があっても積み重ねたノウハウは真似しようが無いのは、現代の先進テクノロジーをフルに活用しても、日本刀の「正宗」、「村正」に並ぶ名刀が再現出来ないことを思い浮かべれば納得ゆくと思います。
構造が簡単なことと、簡単に造れることは違うのです。

ロータリー展開時の誤算

マツダしか実用化することが出来なかったと云っても過言でないロータリーエンジンは、いろいろ不運にも見舞われました。
ひとつはオイルショックの発生です。

当時世界一厳しいとされたマスキー法が成立するにあたり、当時のビッグ3と称された、GM、フォード、クライスラーはもとより、ヨーロッパの名だたる自動車メーカーの全てが「対応不能」を表明する中、ホンダのCVCCとマツダのREAPSだけが対応可能でした。

マツダのREAPSは、ロータリーエンジンにサーマルリアクタ(熱反応器)と呼ばれる「湯たんぽ」みたいな器具を設けて、排気ガスを浄化するシステムです。
排気ガス中の3大有害物質、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)のうち、CO+O2→CO2に、HC+O2→H2O+CO2と、COとHCを燃やす(酸化させる:+O2)ことによって、無害な水と炭酸ガスに排気ガスを浄化するものでした。

高熱の排気ガスをリアクター内部で2次空気によって燃焼させるため、燃費的には不利でした。
「排気ガス規制をクリアする事が大命題」で、多少の燃費悪化は許容されたはずが、オイルショックの発生で環境が激変したのは不運でした。

また、車種展開の失敗もありました。
ロータリー車の普及を急ぐあまり、マイクロバスからピックアップトラックにまでロータリーエンジンを搭載したことは戦略ミスでしょう。
ロータリーエンジンは、高回転高出力のスポーツカーやスポーティな車種にこそ向いており、低速トルクが要求される車種には不向きでした。

ロータリーは燃費が良い

ロータリーは燃費が良いと云うと、一様に「そんなはずは無い!」との声が聞こえて来ると思います。
おそらく、マスキー法に対応する方策として採用した「REAPS」と云う排気ガス処理システムの印象が強烈だったのでは無いでしょうか。

1991年に、マツダが日本車で唯一、ルマン24時間レースで総合優勝をしたことはご存じですね。
プロジェクトX 第029回 「ルマンを制覇せよ」 ~ロータリーエンジン 奇跡の逆転劇~で詳しく描かれています。

ルマンで優勝するということは、レーシングカーとして、燃費性能を含む総合性能が非常に優れていたことの証です。
エンジン性能やサスペンション性能、ブレーキ性能等々、すべてが相まっての「総合性能」ですが、燃費性能の良さは、これらのすべてに関係します。
燃費が良くて、燃料タンク容量が小さく出来るということは、車両重量に影響します。

車両重量が軽ければ、ブレーキの負担も軽減され、サスペンションに対する負荷も有利に働きます。
また、燃費が良ければ給油回数が少なくなり、ピットストップ時間の面でも有利になります。

サバンナRX-3がスカイラインGT-Rの連勝記録を49勝でストップさせたレースカテゴリーでは、サバンナのレース用ロータリーエンジンに、それ以上燃料を食わせようとしても喰わない限度の「最悪燃費」は、ライバルの燃費より良かったのです。

唯、市販車で燃料噴射が普及する以前の、当時のキャブレター仕様のロータリー車は、「2ステージ4バレル」のでっかいキャブレターを装備していたので、アイドリング流量は2000ccクラスのレシプロエンジンよりも大きく、市街地走行や渋滞時の燃費が悪く、これが一般的に「ロータリーは燃費が悪い」とされる評価に繋がっています。

マツダの水素ロータリー車普及への期待

ロータリーエンジン車はRX-8が2012年6月22日に生産終了してから、現在は市販されていません。
ですが、2015年10月に開催された第44回東京モーターショーにRX-VISIONが出展されました。

ロータリーエンジンの天井知らずの吹き上がり、技術革新による総合性能を向上させた新型ロータリーを搭載したクルマで、市場再参入には大きな期待があります。
ロータリー車を何台も乗り継いだ個人的な立場からも、大いに期待させられるクルマです。

トヨタ・ミライに代表される水素燃料電池車の普及には、水素供給のインフラ整備が不可欠です。
インフラ整備が進み、水素スタンドが手近に利用できる様になれば、直接水素を燃料とする水素ロータリー車の出番が現実的になるでしょう。

RX-VISIONが具体化した段階でも、当面はガソリン燃料のロータリーエンジンでしょうが、水素インフラが整備されれば、既に確立されている水素ロータリーへの展開も楽しみです。
大いに期待したいと思います。

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